第36話 なぁ、もれの料理は旨いか?

 昆虫族達の背後を追いかけるようにドラゴンと人間の狭間のような姿になったガニーとゲニーが飛翔する。


「で、そこの人間は食わせてくれるのかい」


「それは、絶対に、許せない」


「それは同意ですね、雑魚はぼくがやるので、あの女王蟻のような奴、グスタファーさんがやってみてはどうですか? 力を沢山隠してるんでしょう?」


「へへ」


 ペロンクはコボルトからオオカミ人間のような姿に変貌していくと。

 体の大きさは一般の人間より少しだけ高いくらいになった。


 雄たけびを上げて、昆虫族に突っ込んでいく。


 グスタファーはかつての親友の躯を持ち上げる。

 辺りを見回し友達達を見ます。


「団長、皆、なぁ、もれの料理は旨いか? なぁ皆、もれの料理は旨かったかぁ? なぁ、答えなんていつも決まってたよなぁ?」


【ああ、めちゃくちゃうめええええええええええ】



「迷いなんてない終わりなんてない始まりだってもう終わってたんだでも、今始める。この異世界から来た異種族がどうだっていい、この怒りを鎮めるまで、もれはもれなのさ」


 ごとんと地面が振動した。

 ごとんと空が振動した。

 ごとんと山が振動した。


【スキル:一心同体:《発動条件》信念:《効果》空、地、山の力を無限に吸収しレベルに反映:《デメリット》暴飲暴食が1時間続く】


【種族スキル:小食:《効果》オニギリ1個で1年持つ】


「もれのこの力はきっと神様がくれたもの、なぜなら種族スキルのおかげで、デメリットが軽減されるから、そんなに苦しくないんだー」


「何を1人でごちゃごちゃと、このネメアーリ様が食べてあげよう」


 大地の震動、空の震動、山の震動。

 まるで地震が起きているように強くなていく。

 少しずつ少しずつ振動が大きくなり。

 気付けば、シーンと静まり返る。


 グスタファーはゆっくりと仁王立ちし。

 昆虫の羽を高速で震わしてこちらに飛んでくるネメアーリの頭を一瞬でつかみ地面に叩きつぶす。


 ぐしゃりという音はせず。少しの隙間からネメアーリは逃げる事に成功していた。



「あ、ありえないわ」


 ネメアーリは真っ青になって叫んだ。


「その巨体でそのスピードはありえない、あなたレベルは、ふふふ、はっはっはっはっは、レベル00ねなんで0が2個あるかしらねいけど、次こそは」


「違うよ、もれのレベルは1兆だよ」


「1兆? なんだその言葉は」


「あれ、知らないの、1億より遥かに上だけど」


「な、んだと」


「君がレベル8000ならその数えきれない倍数だよ」


「はったりだ、現にレベル0じゃないか」


「なんでかな、よくわからないけど、レベル1兆になった事はないけど、正確にはレベル00でしょ?」


「それなら遥かなる高見へ」


 昆虫族のネメアーリは自らの右足と左脚をその場で食らった。

 翼が瞬きを発して、発達する。

 光が収まる頃にはまるで剣のような4枚羽になっていた。


「ふふふ」


 高速を遥かに通り越し、超速を遥かに通り越し、神速をも遥かに通り越す。

 秒速の世界ではなくコンマよりも次元が違う世界。

 一瞬にして終わるはずだった。


「かはぁ」


 一瞬にしてグスタファーの拳がハエ叩きの容量で叩き潰した。

 地面にぐちゃぐちゃになったネメアーリの顔には信じられない物でも見ているようだ。


「し、しんじ、われ、われらは選ばれたのだ人間を滅ぼしたのだ。こんなざこ、ざこにざこざこぐちゃ」


 無情にもグスタファーの巨大な足が昆虫族のネメアーリの全身を踏みつぶしていた。


 倒してほっとすると、体中から飢えが発動し暴飲暴食になるのだが。

 種族スキルが発動しているから、おやつが食べたい程度で収まる。


 辺りを見回すとあちこちから煙が上がり、爆発した音だった。

 昆虫族は1人残らず倒されてしまったようだ。


 嬉しい事なのはトロールの住民の死体も人間の傭兵団の死体も1人残らず食べられていないという事だ。


「さぁてと、昆虫族がそこらへんで悪さしてねーかおしおきだな」

「姉ちゃん目が輝いてるねー」


「それは誉め言葉じゃねーぞ」

「姉ちゃんは人をなぶってこそだね」


「ガニーとゲニーは近隣のトロール村を確保してください。ボーン卿とブレイク達がヴァンパイア達をなんとかするはずです。あとは魔法族ですね、あちらはルウガサーさんとリナテイクさんです。さてぼくたちも生存者を助けますよ、動けますかグスタファーさん」


「ああ、それにしても君達は強いね」


「あなたには勝てませんよ、レベル10000になってその力を使えば1兆は越えるんですからね」


「レベルが10000になれるのかい?」


「ある裏技を使えばです」


「そうかーそうだ。皆料理を振舞ってあげよう」


「お、それは嬉しいねー」

「姉ちゃんそれどころじゃないよ」

「いえ、ここは食べましょう」


 その日グスタファーには信頼のおける友達が出来た。



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