第38話 武帝7人の知識
あらゆる戦闘技術。
剣、斧、槍、鈍器、杖、弓、ダガー。
かつて7人の武帝がいた。
彼等は英雄とされた。
剣の武帝ツイフォン、斧の武帝ギルカス、槍の武帝:リンカン、鈍器の武帝ギャウ、杖の武帝ジェイロバ、弓の武帝ティティス、ダガーの武帝ジョウ。
彼等はレインボーと死闘の末殺害された。
そしてレインボーは彼等の死を感じて彼等の情報をシミュレーションしてその技術を手に入れた。
現在のレインボーの姿は7つの武器が鎖で繋がった状態。
人の姿ではなく武器としての姿。
目の前からはゴースト族のヴィボーレが赤黒く染まった禍々しい大剣を振り落とそうとしている。
ヴィボーレが最初に狙ったのは剣の姿をしているレインボー。
7つの武器全てがレインボーの本体である為。剣を破壊しても何も変わらない。
意識が、感覚が呼び起こされる。
頭の中で幾度となくイメージしシミュレーションした姿が映し出され。
あたかもそこに剣の武帝ツイフォンがいるように剣が踊り出す。
斜めにすらりと斬撃をほとばしらせる。
風が通り過ぎる前に空気に亀裂が走り、ヴィボーレの頬を両断する。
血がうっすらと流れる。
剣の武帝ツイフォンは空間そのものを斬る。
という事は空間に属するゴーストとて空間事斬られる。
「こんの、なんで、ゴースト族なのに頬が切れるだよ」
「ワタクシはお前を斬ったのではない、空間を斬ったのだがツイフォンの口癖ですね」
「はぁ? 何恰好つけてんだよおおお」
ヴィボーレが叫び声を上げると。空を見上げた。
「星の門よ」
空に無数の門が出現し開かれる。
「ゴースト族の眷属バルバッサ、ヴィボーレがそなたを所望する」
「ふむ、召喚系の魔法ですか、なら」
空から異形の姿をした無数のモンスターが飛来する。
その体躯は1軒の家に等しい。
口にはずらりと牙がちりばめられ、頭からは沢山の目が輝いている。
まさにゴースト族の眷属に相応しい。
その数7体。
どうやらこちらの武器の数に合わせてくれたようだ。
「ヴィボーレ、感謝しよう」
「1体であんた1体死ぬんだよ」
ヴィボーレの右手が消滅していた。
きっと召喚する時に代償として捧げたのだろう。
「だが、あいにくだったな、斧の武帝とギルカスと槍の武帝リンカン、鈍器の武帝ギャウで十分。彼等と死闘した時、あらゆる世界を見た気がする」
斧を握りしめ鈍器を握りしめる。
斧の武帝ギルカスは巨大な斧を振り回していた。
人差し指と中指だけで振り回す姿はレインボーにとって驚愕の姿。
鈍器の武帝ギャウは小さな鈍器を振り回すのが得意であった。
ただし、身のこなしだけはぴか一で、閃光のように消える鈍器だった。
槍の武帝リンカンは変幻自在に槍を扱った。槍そのものが見えない程だ。
その3人ですらレインボーは倒している。
空より巨大な化け物がレインボー目掛けて飛来する。
レインボーは巨大になった斧を振り回す。
2体の化け物の頭がぐしゃりと潰され消滅する。
その横から1体の化け物が突進してくるが。
閃光のように飛来した小さな鈍器により頭蓋骨をぐしゃりと潰される。
1体がフェイントをかけて突進してくる。
槍だけが飛来し変幻自在に動き、化物の体は穴だらけになる。
残りの3体は何を思ったのか、人間がいる街に向かおうとした。
咄嗟の判断で弓の武帝ティティスの記憶を呼び起こす。
ティティスの弓は乱射だった。
100発打てば1発当たればいい感じの。
その1発が当たれば確実に死ぬ。
ラッキータイムとよく読んでいた。
レインボーの体そのものが弓であり矢は存在しない。
だが矢は空気の中にある魔力から糸として紡ぎ出され、瞬く間に矢へと変貌する。
連打で発射される矢は次から次へと3体の化け物に命中する。
正確には33333本放った。
ティティスは重なる数字が好きで、よく7777なんて好きだった記憶がある。
全ての化け物を駆逐し終わると。
後ろからけらけらと笑う声が聞こえる。
「まぁ、そうなるわな、こうなるしかないならこうなるしかないな、頭だけ残ってればいいしね、ゴースト族のいい所は体の一部があればいくらでも復元できるって事さね」
「そうだったな」
ゴースト族の恐ろしいスキル。
【種族スキル:生贄代行:《効果》自分の体を生贄にする事で、相手も生贄にする。《条件》ゴースト精神世界で支配すると相手を生贄にし新しいゴーストを作り出す。それを体とする】
「だったか」
「分かってるじゃないのさ」
突如として空間そのものがねじ曲がる。
「まったく、魔法族は精神生命体と言うのにこんな事になるとはな」
その世界は暗闇に包まれ、闇色のオーラを纏っていた。
沢山の彷徨える人々が歩き続ける。
ゴースト族の精神世界とはあの世と同意語。
この世界で彷徨い、いつしかゴースト族になるのだろう。
ヴィボーレもある種そういう物なのかもしれない。
目の前には巨大なヴィボーレがいる。
このゴーストの世界に入った時、ヴィボーレの勝率は99%と言って良いだろう。
だが、あいにくだがこちらには杖の武帝ジェイロバの記憶がある。
レインボーに襲い来るのは物理攻撃ではなく精神攻撃。
ありとあらゆる記憶で悲しかった事や苦しかった事が突きつけられる。
しかし武帝ジェイロバの記憶がそれを妨げる。
「知とは血なり、生命の血肉に宿るのが知恵ならお前のそれは知ならざる新しい知なり」
そう言った武帝ジェイロバの意味不明な発言。
ようはそういう事だ。
「君が一般的な精神攻撃ならワタクシのは一般的ではないかもしれないね」
顔があったらにんまりと笑っていたに違いない。
だが顔はない7本の武器がそれだ。
「ヴィボーレ、ジェイロバの知識を甘く見ない方が良い。ワタクシはジェイロバの記憶をシミュレーション出来るのだから」
杖、ただの杖。どこにでもある杖。老人が使う杖でもあり魔法を解き放つ杖でもある。
そこから解き放たれるべきは知恵そのもの。
魔法でも攻撃でも保護でもない。
それは知識という本流。
「これがジェイロバの戦い方だ」
ゴースト族のヴィボーレの顔がみるみるうちに濁る。
彼女の全身目掛けて意味不明な言葉の羅列が流れる。
ヴィボーレの顔がみるみるうちに真っ青になっていく。
彼女の全身を言葉の羅列が覆いつくす。
いつしか言葉の羅列に埋もれ。
ゴースト族の種族スキルは解除された。
元の世界に戻ったレインボーとヴィボーレは向かい打つが即座に終わった。
「最後の武帝はダガーの武帝ジョウでね、どんな状況でもチャンスとあれば手加減はしないんだよ、そしてダガーは命そのものを斬るんだよ」
ゴースト族のヴィボーレ、社交界で赤いドレスを着用して踊る毎日。
ある日伯爵に裏切られ殺される。恵まれた生活から地獄の終わり。
声をかけてくれたのは無数のゴースト族。
そういった魂が失われた首から情報として流れる。
レインボーは魔法族として石から始まった。
そういった情報を知覚し、研究しシミュレーションする事が出来る。
だから、レインボーはヴィボーレの記憶をシミュレーションしていた。
「どうやら終わりましたわね」
「レインボーさん、どれが?」
「ああ、これは失礼、極上の知識程美味しい晩飯はないのですよ、さて、ルウガサーとリナテイクだったね、君の団長がワタクシを必用だとか」
「はい、あなたから強い気持ちが伝わったそうです」
「そうですか、ルウガサーそれは皆持っているものですよ」
「は、はい」
「まずは人間達の街を保護しましょう」
その時大勢の人間達が街からやってきた。
魔法族はなぜか追い立てられていた。
「いいから出て行け化け物ども」
「どうせ、お前達のせいだろうが」
「何が昔の人達はお前らを尊敬しただ」
「武器や防具や道具が動いている時点でおかしいんだよ」
「お前等なんかでていけー」
レインボーは彼等人間の浅ましい考えを呪ったりはしない。
人間から始まった。
だがもしかしたら人間から終わるのかもしれない。
「そうですか、ご安心を、ワタクシタチはこれから旅に出ます」
人間達はにんまりと笑い。
「これからは自分の命は自分で守ってくださいね」
その時ようやく人間達は真っ青になり。
「さぁ、いきましょうか」
「だから人間は」
ルウガサーとリナテイクが罵り。
他の魔法族が連なり。
この世界は終わりに向かっているのかもしれないなとレインボーはふと独り言ちた。
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