第30話 勇者イルカス復活

 エルフレイク城建造開始から1週間後が経過


「いやーこれはすごい出来上がりですねー」


「うむ、骨がいい感じになっとるのードラゴンの骨をイメージしてみたんじゃが」


「お前等エルフ王に殺されるぞ」


 オメガのイメージで建造されたエルフレイクマークツー城はあちこちが宝石でちりばめられ、お洒落になっている。


 ボーン卿のイメージで建造されたエルフレイクマークツー城は骨の形で城門が作られている。


「おお、出来上がったか―」


 ジェイルド王は腕組みしながら近づいて来て、少しずつ真っ青になっていく。


「こ、こ、これは? なんじゃ」


「宝石」

「骨」


「ああああああああああああああああああ」


「ほら狂った」


 ブレイクが突っ込み。


「かっこいいじゃないかああああ」


 ブレイクは小さい体ながらにその場に倒れた。


「いいではないか、これがエルフレイクマークツー城だな、なんか名前が長い気がするが。城門が無数にあり塔なんて雲の上まである。しかも変形すると!? 大砲だって撃てるし、倉庫には大量の火薬、ってまた爆発させる気かああああ」


 ジェイルド王はぜいえいと息を荒げる。

 一応彼も白髪のまざったご高齢という訳だ。


「う、うむ、これ兵器だろ」


「だな」

「うむ」


「はっはっは、まぁありがたく受け取っておこう。では息子と娘を頼むぞ、自由の墓場に戻るのじゃろう?」


「そうするよ」


「助かった。君達の事は吟遊詩人に物語を歌わせよう」


 1週間、ガニーとゲニーとルウガサーとペロンクとリナテイクは遊んでいた訳ではなく、それぞれ新しい武器と防具の使い方を勉強していた。


 世界樹の枯れ木やエルフ特産など、あらゆるものを使用してエルフレイク城建造をしながらレベル9999の武具を製造したのだが、オメガにとってある意味楽しいひと時であった。

 777体のゴーレム達は先程イベントリに収納したし。


 エルフ王国にはもう用が無い訳だが。


「ジェイルド王よ何かあればこのボタンを押して欲しい」


「これは?」


 そこには四角い箱のようなボタンがあった。


「それはこちらに緊急だという合図を送るものだが使う事はないだろうが、もしもの時だ」


「うむ、色々とありがとうな」


 遠くではナナシア女王がラルフ王子とリャナイ姫とのしばらくの別れを悲しんでいた。


「頼むぞ、特に娘を、彼女には楽しく生きてほしい」


「もちろんだ」


「何か自由の墓場がおかしい」


 魔王ルウガサーが何かを感じ取ったようで耳元で囁いた。


「では戻る。全員手を繋げ」


 ラルフ王子とリャナイ姫も輪っかに加わると。 

 多くのエルフ族が歓声をあげて、こちらを見送ってくれた。

 体が浮遊した瞬間。全員がテレポートした。


 ダンジョン1階層ダンジョンボスの間にテレポートした一同。

 全員がほっとすると。


「こんばんは、もう夜なんだけど待ちくたびれたよドワーフ族のオメガ君、勇者イルカスを返してもらおうよ」


 全員が一瞬で殺気立ち、武器を構えた。

 オメガの前にはかつて真実の斧で覗き見た皇帝陛下がいた。

 彼は幼い顔をしながら、ぽっちゃりとした体形であった。呼吸するとやせ型になったり、変幻自在のようだ。

 衣服は貴族らしいというか高そうな物。


「これなーんだ」


 皇帝陛下の右手の平にはオーブが握られており。

 そこに映し出される光景は無数のドワーフ村が人間の手によって略奪され、無慈悲に殺害されている姿だった。


「きさまあああああ」


「今止めれば何名か生き残る。勇者イルカス返すかい?」


「わかった返す」


 歯を食いしばり。ミシミシと歯茎が震えた。

 世界終わりの盾扉から仮想世界で永遠鬼ごっこしていた全裸の勇者イルカスが巻き戻ってくる。


 彼の目は遠くを見ていた。


「はぁはぁはぁ」


「やぁ、おかえり、おいらの救世主」


「こ、ここは」


「まず服ね」


 皇帝陛下が指をパッチンすると自動的に服が覆いかぶさって全裸じゃなくなる。


「皇帝陛下、一度死のうと思う、スキルガチャがしたい」


「ああ、もちろんだよ、今殺してあげる」


 皇帝陛下は勇者イルカスの心臓に短剣を突き刺した。

 勇者イルカスは口から吐血して動かなくなった。

 地面にばたりと倒れる。


「じゃ、用は済んだよ、今ね、異世界から異種族が無数に攻め込んできてるんだ。人間は滅びの危機だよ、この世界の異種族もあちらの異種族と結託した。オメガ君、君達はどうするんだい?」


「ああ、そうか、そんなのは決まっている」


「へぇー」


「俺達を害する敵を滅ぼす。それは人間もその新しい異種族もだ。人間にだっていい奴はいるかもしれないだろ?」


「そうかい、ならおいらは戻るよ」


「ああ、皇帝陛下、もうちょっとやり方を考えればなんとか」


「やり方を考えなくても人間は滅びの道を辿る。なら悲劇を生もうと可能性がある方に手を出すさ、君だってその可能性の1つだ」


「そうか」


「じゃあねー次は容赦しないよ、さすがに大人数相手に勝てる見込みないからさ」


「皇帝陛下、できればもっと話がしたいが」


「時間がないよ」


 そう言って皇帝陛下は背中から剣を抜きざま空間を両断した。

 次に剣を盾に変形させると、異空間に入り、まるで滑り落ちるように消滅した。

 

「てか、勇者イルカスの死体くらいもってけよ」


 円卓の広場には勇者イルカスが服を着て死んでいたのだから。


「なぁ、今死体研究していいか」


 ブレイクがにやにやと笑い。


「お前がいたなそういえば」


 頭を押さえるオメガであった。


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