第24話 英雄ブレイク:レベル1億
リナテイク、ガニー、ゲニー、ペロンクはエルフレイク城の側面から侵入する事に成功していた。
もちろんガニーとゲニーの最高な爆弾による投擲で城壁は跡形もなく吹き飛んだ。
「いや、ここエルフ族の城だから」
思わずリナテイクが突っ込むのだが。
「気にすんなって、女同士の中だろ?」
「だろだろー」
「てめーは女じゃないだろうがゲニー」
「間違っちった」
リナテイクは頭に手を当ててどうしましょうかという表情を作るのだが、少し楽しくなってきてもいた。
確かに変人だらけの傭兵団かもしれない。まぁリナテイク自身も変人なのかもしれないと最近感じている。
「ゲニーさぁん、あっちから兵士の大群がいますですー」
「ペロンクよ、よくやった。この爆弾投擲で」
「やめい」
思わずリナテイクが止めに入る。
「ここは正確な射撃よ」
ジョブチェンジ。
それがリナテイクのスキルの1つ。
ホーリーアーチャーにジョブチェンジしたリナテイクは回復の矢を解き放つ。
無数の矢は人間の頭に命中して回復ではなく死亡を導く。
「リナテイクの回復の矢はなんで人間には回復しないさね」
ガニーが腕組みをして訪ねてくると。
「ああ、簡単です。回復したい人には回復するんですが、回復しない人には普通の矢になるんです。でもホーリーアーチャーは弓矢に特化してるので、魔法のような複数の矢を放つ事が出来るんです」
「なるほどなー便利機能ってやつか、あたし等の爆弾にも色々と便利機能つけるか」
「姉ちゃん無理はしちゃーいかんからねー」
「もちろんさね、人間は片付いたし、お、ここはエルフレイク城の庭ってところさね」
「ねえちゃんとはリザードマンの庭でよく外で遊んだねー」
「ここは大勢の死者が眠ってるんですよ」
「何があったんですか?」
ペロンクが無数のトランプを浮遊させながら訪ねてくる。
「そうですね、遥か昔、大勢のエルフ族と人間族が戦争をして、2つの種族だけで1億人以上の人々が死にました。彼等をここの庭に埋めたのです」
「いや入らないだろ」
ガニーがそれは無理だと言うが。
「この庭の下は巨大な洞窟になっています。ダンジョンがあるそうです。そこが死者の墓場ですよ」
リナテイクが悲しそうに呟く中。
ぱちぱちと手を叩く音が響く。
本城の方角の階段からゆったりと1人の男性が下りてくる。
ぶかぶかのローブを身にまとい、目の周りには大きなクマが出来ている。
猫背でありながら、オーク材の杖を突いている。
「ほう、エルフにも過去の事に詳しい者がおるとはな、ヒショウの阿保に教えてやりたいわい」
「あなたは? まさか」
リナテイクの表情が強張っていく。
「その惨劇の1億人を殺し、生き残った大罪人が英雄ブレイクだ、かはかは、蘇っても病弱は変わらんか」
突如として幸運の女神チャクターがリナテイク達の前に現れる。
「英雄ブレイク、幼少より死体いじりが好きでネクロマンサーとなる。死体を解剖し、死体を魔法で操る。1人殺し、1人操りと増やしていく。その軍勢1億を超える。エルフ族と人間族の戦争を皆殺しで終わらせる。家族も実験に使う。死ぬ最後まで人間の為に戦う狂った人と呼ばれる。倒せるか皆」
チャクターの情報にリナテイクはふるふると頷く。
ガニーとゲニーの表情はこわばる。ペロンクはあちこちを観察している。
「エルフのお嬢さん、何かの魔法でこちらの情報を掴んだようですが、それはどうしようもない過去になりますよ、さて、皆さん、舞踏会の時間ですよ」
英雄ブレイクがぱんぱんと手を叩く。
大地を突き破って手が出てくる。
それも1体やそこらではない。
数えきれない程のゾンビが出てくる。
死体は腐っており、臭いがきつい。
それでもまだ肉がついている事自体が謎だ。
【スキル:ネクロマンサー:《効果》死体を操る】
【スキル:ネクロサイセイ:《効果》死体を回復させる】
【スキル:ネクロレベル:《発動条件》死体に肉がついている。《効果》1体の死体につきレベル1を吸収】
「いつかね、自分を鑑定した事があるんだよ、レベル1億ぐらいになってるはずなんだがね、周りが鑑定すると0なんだよ、相手を侮らせてぼこぼこにする楽しみは最高でね、あら、君達もレベル0じゃないか、という事は僕を倒せるかもしれないねぇ、ま、ゾンビたちが相手なんだがね」
英雄ブレイクの手を叩く音が大きくなる。
リナテイクは英雄ブレイクのスキルを鑑定しているし、レベルが0と表記されている事も知っている。
だけど、彼は自己申告している。レベル1億だと。
後ここにいるゾンビは当時死んだ1億人だとして、ネクロレベルの条件発動と効果からレベル1億が相応しいだろう。
さらにネクロマンサーの力は死体を操り、ネクロサイセイは回復させる。
うまい具合に重なりあっているスキルに恐ろしさを感じざる負えない。
「姉ちゃん、ゾンビはレベル100だぜ」
「それなら余裕さね」
「問題はあの人です」
「ペロンク君はトランプを使って、ブレイクをなんとかして」
「はい、リナテイクさん」
「あたし等は、爆弾で吹き飛ばすよ、ここでドラゴニック化はまずいからね」
「だろうね、姉ちゃん」
リナテイクは頭を回転させ続ける。
幼少期から考える事だけは得意だった。
ゾンビの弱点は何なのか。
聖属性の攻撃だと効くはずだ。
「あ、そっか」
リナテイクは現在ジョブチェンジによりホーリーアーチャーとなっている。
光の矢は回復に特化しているが、敵対者には普通の矢となる。
意図的に敵対者を回復させれば。
ゾンビは成仏するはず。
「これでも食らいなさい」
リナテイクは光の弓に矢をつがえる。
1本の矢が複数に分裂し、無数の矢となり数100体のゾンビ達を一瞬で蒸発させた。
「おお、これは、悲しい、わが友達達よ、君達が成仏してしまう事を創造できただろうか、なら残った君達でやれる事はしようではないか」
ブレイクはさらに手を叩く。次に足を地面に叩く。
杖でさらに地面を叩く。
「まるで赤ちゃんです」
ペロンクが思わず突っ込むと。
「き、さま、今なんと言った」
ブレイクの表情が見る見るうちに真っ赤に染まると。
ゾンビ達が次から次へと融合を始めた。
1体と1体のゾンビが融合していくと。
巨大なゾンビとなる。
ゾンビがゾンビの盾を作り出したりしている。
リナテイクは構わず光の矢を解き放つも。ゾンビの盾で防がれてしまう。
光が粉のように霧散するだけであった。
「ここは爆弾さね」
「だね、ねーちゃん」
四方八方。
リザードマンのガニーとゲニーの爆弾がさく裂する。
まさに爆撃そのもの。
ゾンビ達の体はぐちゃぐちゃに飛び散る。
だがその体のパーツから再生して新しいゾンビが生まれだす。
「げ、きりがねーよ」
「まったくどうなってるんだよ姉ちゃん」
「あたしが知るかよ」
「あーまったく、リザードマンはいつの時代も品のない生き物だね、はて、先ほどのコボルトは?」
「ここだよ死体臭い兄ちゃん」
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