第25話 ブレイク=グール族

 ペロンクの能力はトランプマスター。

 トランプがある場所ならトランプを通して移動出来る。

 先程の爆風でトランプが飛散した。


 数枚のトランプが英雄ブレイクの周囲に落下したのだ。

 その結果ペロンクは英雄ブレイクの背後に移動し、その背中に大きくしたトランプを張り付ける。


「ふふ」


 なぜか英雄ブレイクは余裕そうに笑い。

 

 別の箇所に英雄ブレイクのお腹が移動。

 お腹を失ったブレイクは死亡するはずであった。

 だが血は流れず。

 お腹が無くなっても、ただ立ち続ける英雄ブレイクにペロンクは恐怖を感じ。頭をわしづかみにされる。


「このガキは面倒くさい事しやがってからに」


「ぐああああああ」


 レベル1億の圧力にペロンクの頭蓋骨は割れそうになる。


 光の矢が飛来し英雄ブレイクの右腕を突き破る。

 落下したブレイクの右手から逃げたペロンクはトランプを使いガニーの隣に避難した。


「あいつ」

「姉ちゃん、あれ、恐怖体験てやつ?」


「馬鹿いうなよ」

「だって、姉ちゃん、体があちこちにあんのに動いてるぞ」


「いえ、操作は出来てないようです」


 リナテイクが告げる。


「聞いた事がありますよ、アンデット王の配下の一族グール族」


「それはなんです?」


「いくら殺そうと死なない最悪な種族」


「でも奴は人間だろ?」


 リナテイクはガニーの質問に首を横に振る。


「人間のふりをしてたんですよ、そして死んだのは事実、彼等を倒す方法はある」


 その場が静まり変えると。


「あまり五月蠅いと殺すよ?」


 右腕を失い、お腹を失ったグールの英雄ブレイクは。

 近くにいたゾンビを頭から食い破った。

 それだけで、体は自己再生した。

 恐ろしいのは他の部位、右腕とお腹も自己再生し。


 英雄ブレイクが3名になる。


「グールの恐ろしいところは、死体から死体へと増えていく事よ、これが【種族スキル:増殖】よ」


「てことはさーレベル1億が3名って事?」

「あまり現実を言うもんじゃねーぞゲニー」


「これって絶体絶命って訳じゃないよ、皆」

「何を言ってるの? ペロンク」


「僕は父ちゃんと母ちゃんが死んだ時、決めた事があるんだ。大事な仲間を守るのはいつだって皆それぞれだ」


 皆が沈黙しつつ。


「コボルト族の種族スキルにはオオカミ化ってのがあるんだよ、犬から狼、夢を見ていたんだよコボルト族は」


「やれるのか?」


「うん、でもうまく操作できないから、ぼくはオオカミ人間化でゾンビ達をなんとかする。あとはガニーとゲニーとリナテイク姉ちゃんでなんとかしてね」


 風が止んだ。

 ゆっくりと時間が経過していくような心臓の鼓動。

 のんびりとのんびりと動き出す呼吸。


 コボルト族の種族スキル。

 それはオオカミ化。

 リナテイクも聞いたことがある。


 もはやトランプマスターというスキルは関係なく。

 巨大なオオカミに変貌したペロンクは獰猛なうなり声を上げた。


 そこにはオオカミ化になったまさにオオカミ人間がいた。

 大きさはエルフより頭1つ分くらい大きい感じだ。


 右手と左手の爪は伸びており。

 ゾンビの頭を握りつぶしている。

 それでもゾンビ達は群がっていく。

 地面から地面からもはや塔のようになりつつあり、その塔のてっぺんでペロンクは暴れている。


 本城の入り口の近くには内部の広場がある。

 そこに英雄ブレイクのレベル1億が3体立っている。

 1人はお腹の衣服がなくて、1人は右腕だけ衣服があってほぼ全裸、1人はお腹だけ衣服があってほぼ全裸。


「あまり見ないでくれ、これでも恥ずかしがり屋なんだ」


 そう言いながら英雄ブレイクは服を魔法で再生させていた。

 3名ともだぶだぶのローブを着用していた。


「では「はじめよう」「それが問題だ」」

「何か「考えるとしたら」「もっと難しい難題の時だな」」

「その通り「苦しむなら」「沢山の希望を」」


 3名がゆったりと地面を歩いた。

 1人だけオーク材の杖を持ち、2人は何も持っていない。


 リナテイクはジョブチェンジを発動し竜の精霊を操るエンチャンターのエラフィンに切替わる。


「ガニーさんゲニーさん爆弾を強化しますから」


「倒す方法ありそうだねぇ」


「気になるー」


「いいですか、3体同時に頭を吹き飛ばすだけです。脳みそを吹き飛ばすだけなんです。ただ脳の一部を体に移植している可能性があるので、とりあえず3体同時に全部消し炭にしてください、爆弾エンチャントしますから」


「ふふふ、リナテイクちゃん、悪いわね、あたし達の爆弾やばいから」

「そうだよー体そのものが爆弾だからねー」


「はい?」


 現在ガニーとゲニーは竜の精霊により強化されている。

 リナテイクの考えだと、爆弾その物を強化させるつもりであった。

 2人はわきわきと手をグーパーしながら。歩き出す。


 レベル1億の英雄ブレイクはゆっくりと近づき、杖を振り上げて、ガニーを殴る。

 それだけで甚大な負傷になるのだが、ガニーは歯を食いしばる。

 ゲニーは2人の英雄ブレイクに殴られても怪我を負っても立っている。


「リナテイクちゃん、ちょっと抑えきれないから、死なないでね」


「はい?」


「姉ちゃんフルパワー越えてるぜ」


「さぁ、スキル:バクサンいくよー」


「体が光輝いてピカ―っと」


 次の瞬間、リナテイクの人生で人生の終わりと感じざる負えない爆発が起きた。

 全てをなぎ倒し、全てを蒸発させていく。

 リナテイクはとっさにナイトソルジャーにジョブチェンジし、盾2枚でガードをし続ける。

 

「うそだ「ろ」「ありえんぞ」」


 ネクロマンサーの英雄ブレイクは一瞬で全てが蒸発したようだ。

 近くにいたゾンビも蒸発し、塔のようになっていたゾンビ達は下から津波のように迫りくる爆発で消滅していく。

 ペロンクは上空で気を失ったようで、上空にいたおかげで爆発から逃れる事に成功。


「こ、これってエンチャントする必要無かったじゃないですかああああ」


 リナテイクの悲痛な悲鳴。


 爆発はエルフレイク城を襲った事だろう。

 そしてこの世界からエルフレイク城その物を蒸発させてしまった訳だ。


 隠れていたりしていた兵士もきっと全滅。

 エルフの人々がいない事を祈ったリナテイク。

 爆発が止むころになると、近くの森まで焦土となり、川も蒸発し、エルフ族の希望の城は綺麗さっぱり荒野になっていた。


 リナテイクはへなへなと座り。


 骨の壁に守られているオメガ団長達を見てほっとして。


 本城の所には白いバリアが張り巡らされている。

 その男が、流星シルベスタンだと悟り。

 そこにはエルフ王とエルフ女王とその息子と娘がいた。


 流星シルベスタンはこちらを見てげらげら笑っていた。


 弓をつがえようとすると、いつの間にかオメガ団長がいてリナテイクを制する。


「疲れてるだろ、後は俺がやる」


「は、はい」


「ルウガサーはペロンクの介護、ボーン卿はガニーとゲニーを起こせ」


「「御意」」


「さぁて、流星シルベスタン、お前にはちょっとお仕置きしないといけないなー」



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