第23話 チート級武具壊れる

 実は銀神のグローブと靴は幸運の石を100個程使用して製造された。

 確率的には大幸運の状態。

 それでもイメージ通りにならず失敗。


 完成品に程遠いいグローブは数百個も存在し、イベントリで眠っている。


 まるでギャンブルをしているように、何度も何度も制作し、思うような能力が付いた時。


 発狂して暴れた。

 魔王ルウガサーにたしなめられて説教を36時間もくらった。

 ある意味死ぬかと思った。


「お前なんだよ、俺の速さに至るとはな、パワーでもくらっとけ」


 オメガの拳がヒショウの腹に届く前に。

 ヒショウの拳がオメガの腹を殴り飛ばした。


 魔王ルウガサーは既にそこにはいなかった。


 背丈の都合上、ドワーフのアバラに命中したヒショウの拳。


 嫌な音を炸裂させ、衝撃破がドワーフの背中から飛び出る。

 空気が振動し。ドワーフのオメガの後ろを竜巻のごとく吹き飛ばす。


 それでもオメガは優雅に立ち。


 ヒショウの足を踏みつけようとするが、ヒショウは危機を察知して宙返りをしながら逃げる。


「はぁはぁ、久しぶりだぜ、おめーすげードワーフだな、楽しく、楽しくなってきたぜえええええ」


 ヒショウは地面に拳を打ち込む。

 地面が一瞬で消滅し、次の瞬間、地面が揺れた。

 それは地震。


 人間が起こしていい自然現象ではない。


 オメガとルウガサーとボーン卿はバランスを取る。

 ヒショウは思いっ切りジャンプすると、くるくると回転しながら地面に向かって拳を叩き落とす。


 衝撃はもはや大地震と呼んでいいだろう。

 大勢の兵士達がパニックになる。


「ふぅぅああぁあああああ」


 ヒショウが大きな呼吸を整えながら。

 右手と左手を合わせる。

 目をかっと開き。地面を蹴り上げる。

 走って走って地面が爆発する。

 土煙があちこちを支配し、兵士達の姿を見えなくする。


「最強の、宇宙一最強の拳をくらえ、ばーか」


 オメガは人差し指でそれを受けた。


「は……」


 ヒショウは何度も何度も拳を飛来させる。

 スキル:パワーを発動させまくる。

 それでもそれでも、レベルがいくら上昇しようとも、発狂しながら。


「嘘だろ」


 ヒショウは致命的なミスをしていた。

 呼吸を忘れていた。

 あまりの圧倒的な強さ。

 人差し指だけで宇宙一最強な拳を止められた。


 ヒショウのやる気はなくなり、さらに絶望へと包まれていく。


「なぁ、もっと拳を打ち込んでくれよ、こんな弱いのじゃなくてさ」


「なぜだぁ」


「俺の想像力舐めてねーか?」


 大勢のドワーフが死んだ。

 大勢のドワーフが狂った。

 親しい友達がおかしくなった。

 沢山のドワーフが苦しんだ。

 それだけではないリザードマンが、エルフ族が。

 瞑想をすればするだけ、大勢の異種族が死んでいく。

 死は死を生み死は死を作る。

 それの繰り返し。


 いつしかオメガは創造するようになった。

 どのように考えたらいいのか考えるようになった。


「どのようにどやってどういう場合どうやったら殺せるか、こんな力があったら守れるだろうか、こんなすごいのがあったらきっときっとあのドワーフは助けられたんじゃないか、あの力があれば、でもねこのグローブと靴は一度の力を使用すると壊れるんだよ」


 チート級。

 想像力を具現化させる武器と防具。


 だが問題がある。壊れる事。


「は、はは、ははははは」


 ヒショウの目に光が宿ったのだが。


 彼は気づいていない。

 右腕と右足をスケルトンの大群に囚われている事を。

 左腕と左脚が蛇のようなモンスターに囚われている事を。


「この、うごけ、目の前に勝利が、蘇ったんだ。このヒショウ、また大地の覇者となり」


「人間、言いたいことはそれまでか」


「まったく、捕まえるの大変じゃわい」


 魔王ルウガサーとボーン卿が頷き。


「さて、ヒショウ、もう一度死ぬか」


 オメガが囁く。


「いやだあああああああああ」


 ヒショウはようやくもう一度の死を悟る。

 イベントリから取り出された高速の剣で高速で何回も突き刺されて動かぬ躯となり、地面にゆっくりと倒れた。


 次の瞬間、爆発する光にその場がおおわれヒショウの魂がどこかに飛んで行った。


「あれは、何かの柱になるのだろう」


「柱?」


 オメガが尋ねると。


「どうやら皇帝陛下も馬鹿じゃないようだな」


「何が」


「今はそれより兵士を皆殺しにするのだろう」


「そうだな、悪い人間は皆殺しだ」


 オメガの目元にはクマができつつある。

 人の死が当たり前になっていく中で、人を倒す欲望に負けまいと戦い。

 人に罰を与える。それは神様でもなんでもないのだが。


 それでもドワーフの仲間たちが苦しんだ事だけは許せなかった。


「団長落ち着かれましたか」


「ああ、助かったよルウガサー」


 ルウガサーは水筒から水を飲ませてくれた。


「まったく、英雄とは恐ろしいな」


 ボーン卿が振り返るように呟く。


 辺り一面が大爆発でもしたのかというくらいの惨劇になっていた。

 いたる所に英雄の攻撃に巻き込まれて死亡した兵士達が無造作に転がっていた。


「これならガニーとゲニーとペロンクとリナテイクが心配だな」


「きっと大丈夫じゃろう」


 オメガも頷く。


「ひ、ひいいいい」


 人間の兵士を見つけた3名は容赦なく命を葬り去っていく。






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