第6話 勇者パーティーざまぁーみろ

 勇者イルカスは魔王ダンジョンを破壊の限りを尽くした。

 魔王を鑑定したところレベルは100。

 他のモンスターはレベル50止まり。

 勝利は目前だった。


 勇者イルカスは人間族であった。

 最近皇帝陛下が多種族全てを奴隷にする計画を進めた。

 その計画の一部として勇者イルカスは魔王を倒す為に動き出した。


 勇者イルカスは今年でレベル80になった。

 一生懸命モンスターを倒したり多種族を殺害してレベルを上げた。


 一番簡単だったのは奴隷に集めたドワーフを片っ端から殺す事だった。

 ドワーフ族とは長命でありレベルも90を超えているドワーフがまれにいるのだ。


 リザードマンもエルフも獣人族もヴァンパイア族もありとあらゆる多種族を殺してスキルを獲得してレベルを上昇させてきた。


 仲間にも恵まれた。


 賢者リメリア

 彼女はレベル70の賢者であり図書館でこもっている所を見つけた。

 彼女は小人族を趣味で殺していた。


 戦王ガルフォー

 彼はレベル80の戦士であり、戦の中でしか存在理由を見つけ出せなかった。

 多種族を殺す事しか楽しいとは思えず。

 子供だろうが赤子だろうが女子だろうが片っ端からその斧で殺しつくす。


 乙女テニ

 彼女はレベル80のヒーラーであり、完璧な防御力をほこっている。

 怪我人を治癒する名目、よく人体実験をしていて王国から追放される。


 その他にもあと数十名という勇者がいた。


 彼等はどいつが勇者になってもおかしくなく。

 勇者イルカスが死ねば別の奴等が勇者になる。

 これを勇者候補生33人と呼ばれた。


「ここか」


 勇者イルカスは巨大に盛り上がった闇色の城のようなものを眺めていた。


「近くにリザードマンの村があるわね、人間が沢山死んでるわ、リザードマンも殺しとく?」


「リメリア、それはやめておこう、下等生物には下等生物の終わり方というものがあるんだよ」


 イルカスが優しく諭すように呟く。


「はは、あんな巨大な城おもしれーどんなザコモンスターが出てくるんだ。魔王ルウガサーは俺様がバラバラにばらしても良いんだよなぁ? イルカス」


「それはうちがやろう」


「ばかやろうお前ヒーラーだろうが」


「解体ショーはうちの仕事よ」


「テニー落ち着け、瞳孔が開いていますよ」


「はは、楽しみでさ」



 勇者イルカスは自分の姿格好を見回す。

 軽装備の青い鎧、武器と防具全てレベル1000セットのものだ。

 レベル100でさえ高価な代物とされる。


 賢者リメリアは黒いローブを羽織っている。それもレベル1000セットとなっている。

 戦王ガルフォーは血の色のような深紅の鎧を羽織り、巨大な斧を握りしめている。

 乙女テニーは白い柔らかそうなローブを羽織っている。小さな杖のようなロッドを構えているが。体の周囲には随時無数の盾が飛翔している。

 これが最強の防御力の理由だ。


 勇者候補生33名のうち4名はらくらくと門を開いたのであった。



====圧倒的な暴力====


 平原が広がっている。

 城の中なのに空がある、しまいには太陽だってある。

 モンスターは闊歩していない、まだそれだけのモンスターを創造する時間がなかった。

 ドワーフ族のオメガ、リザードマン族のガニーとゲニー、魔王のルウガサー。

 目の前に立っている4名を見ていた。


「おお、これはこれは、ダンジョンボスが自らご出陣ですかな?」


「勇者か、よくも仲間達を」


「あれはカスだろう」


 オメガは鑑定をすます。


「カスはお前だろうイルカス」


「きさま、ドワーフ風情が」


「名前にカスがついてるぞ、カスなんだろお前」


「よくも、殺すぞドワーフ風情」


「そうだ。良い事を教えよう、俺達は傭兵団だ。ボスは俺」


「は?」


「俺の許可なく出る事は許さないから門は閉じさせてもらう」


「ばかじゃないのさ、あんたら死ぬわよ」


「こ、こわいよおお姉ちゃんんん」


「ほらリザードマンだってそう言ってるしぃ」


「乙女テニー仲間達を解剖したな」


「それはきっと楽しいから解剖したんでしょうねーうちは」


「さっきからくっちゃべってねーでやりあおうぜ」


「では俺1人で片づけてきます」


 オメガは散歩するように歩き出す。


「勇者よぉお、あの自信を壊すのは俺様の仕事だぜええええ」


「やれ戦王ガルフォー」


 戦王は斧を構える。

 地面を高速で走り出す。

 草原が抉れ、ガルフォーが走った場所では炎が燃え上がる。


 オメガの首元に命中する。

 レベル9999:無敵の鎧

 圧倒的な防御力を前に、ガルフォーの斧が爆発した。



「は、え?」


 それでもドワーフのオメガは散歩する。

 人間達に思い知らせるかのように。


「ちょっと、まてや、武器がねーんだ。降参だ」


 オメガは無常にも右腰につるしていた高速の剣で戦王ガルフォーの首を跳ねた。


 その行程を誰も見る事は出来なかった。


「きゃああああ」


「うそだろ」


「何をしてるガルフォーおおおおお」


 オメガはガルフォーの死体を見る。


「レベルこれっぽっちじゃ生贄にも出来んな」


「これでもレベルは高いほうだぞ、き、貴様のレベルは」


 どうやらようやく勇者イルカスはこちらの4名を鑑定する気になったようだ。

 その顔が少しずつ真っ青になっていく。

 

「れ、レベル0だと、ばかじゃねーか、ぎゃはははははは、こいつら雑魚だぜ」


「ふぅ、でもなんで」


「偶然でしょ、レベル0だと奇跡でも起きんじゃねーのか」


「でも、でも、武器と防具はレベル9999よ」


「なるほど、そういう事か、殺して奪うぞ」


「きゃはっは」


 勇者イルカス、賢者リメリア、乙女テニーは強奪者の如く走り出した。


「なぁ、あたし、ぶちぎれそうなんだけど、こいつら吹き飛ばすよ、いくよゲニー」


「怖いよおおおってね、もう怖くないんだなーこれが」


 ガニーとゲニーが爆弾を投擲する訳だが。

 ガニーが高速で爆弾を構築し、ゲニーがモンキーハンドで投擲する。

 そのスピード常人では避ける事不可能。


 一瞬にしてヒーラーなのに先陣をきって走っていたテニーの顔面に爆弾が飛んでくる。

 白い光を発してそこからテニーは足だけを残して蒸発する。


「う、うそよおおおお」


「ほ、本当にレベル0なのか、あの爆弾だって爆弾じゃないぞ」


「ごめんあそばせ、これは爆弾じゃなくって分解玉っていうのよ」


「分解玉?」


「そこに触れるものどんな強くとも分解するのよ、てへ」


「姉ちゃんんん、ツンデレいらないからー」


 勇者イルカスは脂汗を垂れ流しながら散歩のように近づいて来ようとするドワーフであるオメガを見る。


 次にリザードマンの姉弟を見る。


 賢者リメリアを見る。


 最後に魔王ルウガサーを見る。


「リメリア、ワープ魔法だ。早くしろ」


「う、うん」


「レベル0っていうのはなにかの」


「ああ、それね、表記できないんだよ、俺達レベル10000でさ9999以上は表記できないから、0になったの」


 オメガがすらりと絶望の呟きを発する。


「あと逃がさないよ、人間達には滅んでもらいたいからまぁ選別はするけどね、人間にもいい奴はいるでしょ?」


「は、はははは、はははっははははははははは、俺達ようやく80レベルとかになって、そんなのカスはカスは俺達じゃねーかよ」


「あら、ようやく気付いたかしら」


「姉ちゃん可哀そうだってあの人痛い人だろ」


「わ、わたしだけでもワープ魔法を」


「忘れたのかな? ダンジョンでは移動魔法は使えないわよ?」


「あ」


 魔王ルウガサーが地面を蹴り上げた。

 その刹那だけで賢者リメリアの胴体は半分に分かれて落下した。


「嘘だろレベル1000セットの防具だぞ」


 勇者イルカスは城の門に向かって這って逃げる。

 未だにドワーフのオメガは散歩するように歩き続ける。


 勇者イルカスは城門に辿り着く。

 何度も扉を開こうとするも開かれる事はなく。

 

「最後に言い残す事はあるだろうか」


「いやだあああ、死にたくないいいい、これから俺は伝説をつくってぎゃふ」


 勇者の首が落下した。

 勇者イルカス、賢者リメリア、戦王ガルフォー、乙女テニー。

 4人の勇者パーティーはあっけなく死に絶えた。


 勇者イルカスの首、賢者リメリアの首、戦王ガルフォーの首、乙女テニーの足。

 生贄には使えないため、皇帝陛下へのお土産とする事にした。


「おめでとう、4人の魂が吸収されダンジョンポイントが上昇したぞ、現在は200pだ」


 幸運の女神のチャクターがにんまりと笑い。


「まったくレベル10000だと表記されず0となるか、これから面白そうじゃ」


「ぱーっとやろうぜ」


 オメガが叫んだ。

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