第2話 旅の鍛冶屋

 オメガの旅はただ歩き続ける事から始まった。

 向かう先はドワーフ王国。しかし、今の自分では武器がレベル9999でも体力がもたない。

 なのでレベリングが大事だし、さらにいい武器や防具が欲しい。

 後製作する事が大好きだから、森の中で休憩しながら武器などを試しに作ってみる。

 しかし手元にあるレベル9999の木のナイフのような最高傑作は製作出来なかった。


 大抵がレベル10だったのだから。

 オメガのレベルは22でここら辺にいるモンスターのレベルは10くらい。

 弱いモンスターを倒しまくってもレベリングにはならない、さらに時間がかかる。


【ので、強いモンスターを沢山倒す事をお勧めします】


「確かに幸運の女神の言う通りなんだけどさ、強いモンスターが近くに、あ、リザードマンの村の近くの湖ならいるかもしれない」


【それならその近くの森に幸運の石の反応が複数ありますよ】


「決まりだな」


 オメガの背丈は人間の半分程しかない。 

 人間が一週間かかる距離はドワーフのオメガでは2週間かかる。

 それでもオメガは必至になって歩き続ける。 

 木のナイフというレベル9999の武器を片手に。


====リザードマンの村====


 空に満月が輝く時、2人のリザードマンが闊歩していた。

 人間達は抵抗しなくなったリザードマンを片端から捕えていた。

 だが2人のリザードマンだけは違った。


「ねえええちゃんんん、つかれたよー」


 そう叫んだのは青いリザードマンであった。


「にへらー」


 そう意味不明な声を上げたのは、赤いリザードマンだった。


「ボンバー」


 そう赤いリザードマンが叫ぶと、当たり一面が爆発した。

 人間達は10人以上がぼろぼろになっている。

 青いリザードマンはボールのような物を兵士にぶん投げる。

 その速さは剛速球と言って良い程のスピードだった。


 人間の胴体の体に穴が空き、そこで爆発が起きる。


「ねえちゃんんん、もう無理だよ」


「るせーこういう時はな王子様が迎えに来てくれんだよ」


「ねええちゃんん、ここでツンデレはやめてよおおお」


「こういうのはツンデレじゃねえええ、デレデレだぜ」


「おい、動くな」


 1人の人間が前に出る。

 そいつは人間の隊長であった。

 彼は右手に子供のリザードマンを掴み、左手のナイフで殺そうとしていた。


「いわゆる人質ってやつかい、まったくはずかちいいねえええ」


「姉ちゃんやめてよおお、あの子殺されるよおおお」


「動いたら子供が死ぬ、動かなかったら助かるぞ」


「あーはいはい」


 そう言って2人の赤いリザードマンのガニーと青いリザードマンのゲニーは捕縛されたのであった。その出来事はオメガがリザードマンの村に辿り着く3日前の出来事だった。


====☆☆☆====


 リザードマンの村が見えてきた時、何かおかしいのだと気づいた。

 リザードマンが湖に1人たりとも見えないからだ。

 建物の中からリザードマンの気配は微妙に感じるし、垂布の隙間からリザードマンの鱗の足が見える。

 

 人間の姿がちらほらと見えた時、怒りが芽生え始めてきた。

 だがその数を数えていくと200人はおり、迂闊に近づけない感じとなっている。


 一度引き上げ、幸運の女神が教えてくれた幸運の石が複数あるであろう森に向かった。

 その森に辿り着いた時、素材の宝庫に絶句してしまった。

 

 なぜなら鉱石が大量に採掘できる小さな鉱山があちこちにあり、さらには丈夫で逞しい樹木があちこち生えていた。しまいには野草やら小さな素材となるものまでそこら辺に落ちている。

 そこにはもちろん幸運の石が無数に落ちている訳で。


 オメガの脳裏は今まさにハッピーモードに切替わっていた。


【涎が出ていますよ】


「そうだな、イベントリにはいくつか素材がある。それより遥かにいい素材が期待出来そうな場所だな」


【ここを幸運の森と言うらしいですよ】


「ふ、そうか」


 スキル:採掘S、スキル:伐採S、スキル:採集Sが活用される時が来たようだ。


 その日から創作と製作を繰り返す日々が始まった。

 自分がどのような武器や防具を作りたいのか、どのような形をしていて、どのような性能があるのか、考えがまとまるたんびに、幸運の石を砕き、高速で製作する。


 呼吸を忘れてもがき苦しんだ時もある。食事を忘れて空腹で倒れた時もある。

 それでも必死に人間達を滅ぼす最強の武具達を作りたい。

 今の自分ではそこには到達する事が出来ない。いくらレベル9999でもまだ無理だ。


 ならどうするか、それは経験だ。

 ありとあらゆる経験を経て、最強の武具を造る。そして人間を滅ぼす。


 ふとオメガはなぜ最強の武具がワンセットだけではダメなのかと思った。

 そうか、自分は仲間がいて欲しい、仲間に最高の武具を付けてもらいたい。

 

 最強の傭兵団。

 そういったものを作りたい。

 出来れば変わったメンバーが良いだろう。

 そんな事を考えていた気がする。


「できたな」


 かかった時間1週間。

 採掘して伐採して採集して幸運の石砕いて出来上がったのは。


【レベル9999:無敵の鎧】

【レベル9999:高速の剣】

【レベル9999:破壊の弓】

【レベル9999:創造の矢筒】


 無敵の鎧はレベル9999だから実現した。ほぼ確実に破壊されない防具であり、鎧の隙間でも魔法のバリアが展開しそれも無敵。

 高速の剣はそのままで軽く1回振るうだけで、10回斬撃が行われるスピード。

 破壊の弓は圧倒的な破壊力を誇る。

 普通の矢だけで岩を吹き飛ばし、家を吹き飛ばす事が出来る。

 創造の矢筒は自分が創造した矢が矢筒に現れる為、ほぼ無限生成となる。


 現在ドワーフ青年であるオメガの体はありとあらゆる鉱石で作られた無敵の鎧に包まれている。エメラルドだったりダイヤモンドだったりトパーズだったり。そのような超絶な宝石を採掘できたのも、採掘Sというスキルがあったから。


 右腰には高速の剣が帯剣され、懐に木のナイフがしまわれている。

 背中には破壊の弓と創造の矢筒が装備されている。

 その全ての装備がレベル9999であった。


 実はレベリングは一部こなしていた。

 装備の性能を確かめたりする為だ。

 後、幸運の石のストックもドワーフ族専用スキルのイベントリにしまってある。


 この幸運の森には無数のレベル50のモンスターがいた。

 そいつらは狼のような姿をしているが化け物そのものだった。

 高速の剣で瞬殺し、破壊の矢で破壊した。

 狼の牙は無敵の鎧を通す事はなかった。

 そして現在、オメガのレベルは50になった。


 全ては計画と作戦通り。

 後は。


「ヒャッハーするだけだぜ」

 

 オメガはにやりと笑った。

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