第5話 不倫の果てに
捜査本部の中でも、殺害された遠藤玲子の旦那が、第一発見者の実兄であり、捜査をしていると、二人の間で、何かしらのおかしな人間関係が成立しているのではないかという思いがあった、
「どうも、この兄弟、どこか歪な関係があるかも知れませんね。調べていると、どうやら殺害された奥さんと、第一発見者である秋月という男は、大学時代の同級生だったということです」
と、山崎刑事が報告した。
「じゃあ学生時代に付き合っていたということもあったんじゃないか?」
と辰巳刑事が聞いたが、
「それはないというのが、当時の二人の共通の友達の見解でした。被害者の方はひょっとしたらそういう意識があったかも知れないけど、秋月の方が、どうも恋愛に関しては苦手だったようで、特に自分の気持ちを表に出すことはしなかったようです。これは恋愛に限ったことではないようなんですが、精神的な引きこもりに近かったというのが、おおかたの意見ですね」
と、山崎刑事は答えた。
「なるほど、確かに昨日の事情聴取でも、しどろもどろのところがあって、もっとも、自分の死っている人が殺されているのを自分で発見したんだから、誰だってしどろもどろになるのは仕方がないんだろうけど、それだけではない何かがあるとは思っていたが、そういうことだったのか」
警察の方も、秋月がその日の夕方にある程度自分で気付いたあたりのことを調べるのに、三日くらいを要したが、やはり秋月の考えていたくらいのことまでは、行き着いたようだ。
「それにしても、遠藤隆二という男、かなり自尊心の強い男だということですね。遠藤玲子という社長令嬢と結婚し、今はまだ三十そこそこで、部長クラスなのだから、普通なら逆玉ということである程度満足のいく毎日なのだろうと思いきや、まだまだ欲が深いようで、部長クラスでは満足していないようです。しかも、仕事以外のプライベートでも、奥さんがいながら、適当に不倫もしている。一種のつまみ食いなのだろうが、その相手はほとんどが水商売の相手、ある意味では後腐れがないという意味で、実にうまくやっていると言えるのだろうが、ひょっとすると、そのあたりにやつのおごりのようなものがあるのではないだろうか」
と、山崎刑事が報告すると、
「あの兄弟、それぞれ両極端に見えたんだが、どうなんだろうかな?」
と、辰巳刑事がいった。
「どういうことだ?」
と訊いたのは清水警部補で、
「兄の方が、強かで、そのしたたかさも想像以上のものに感じられるが、弟の方は、ラブホテルでデリヘルを呼んでいるというところからも、どうも小心者に思えて仕方がないのだが、考えすぎですかね?」
と辰巳刑事が答えると、
「ある意味、弟の方が、一般的な男子に近いんだろうね。でも、彼のような青年は結構たくさんいるんだけど、見た目は似ていても、腹の底で考えていることは、それぞれに違っているので、何とも言えない。兄の方が分かりやすいと言えば分かりやすい。極端ではあるが、自尊心が強ければ強いほど、見た目が、その人そのものだと言えるからだろうね。弟のようは、見た目で判断できないというのが、私の意見でしょうか?」
と、山崎刑事が言った。
事件への核心に迫るということに関しては、辰巳刑事の方が、一歩も二歩も山崎刑事に勝っているところがあるのだろうが、こと捜査において、人間性や動機などということについての推理や観察眼は、おそらく、K警察はおろか、県警察の中でも屈指なのかも知れないと、清水警部補は感じていた。
清水警部補が、山崎刑事と辰巳刑事を必ず自分の配下として捜査本部を形成するのは、そのあたりを買っているからであった。
辰巳刑事も山崎刑事に、山崎刑事も辰巳刑事に、相手の素晴らしいところに敬意を表しながら、よき好敵手であり、パートナーとして接しているのである、
時として、口論になることもあるが、それを見て、清水警部補が咎めることはほとんどない。むしろ、意見を戦わせる二人を頼もしく感じているほどで、
――やはり、この二人を配下にしていてよかった――
と、絶えず考えていたのだ。
「ところで、夫婦二人はそれぞれに不倫をしているということなのだろうが、決まった相手というのはいないのかい?」
と、清水警部補が聞いた。
「そのあたりなんですが、旦那の方には、情婦がいたようです。片桐澄子という女性なんですが、遠藤隆二の会社の事務員だそうです」
と辰巳刑事が答えた。
「じゃあ、部下の女の子に手を出したということなのかな?」
と清水警部補が聞いたが、
「というよりも、二人は以前から知り合いだったという話もあったので、調べてみると、彼女が大学生の頃、一度今の会社にアルバイトに来ていたことがあったようで、その時少しだけ付き合ったことがあったというんです」
「じゃあ、元彼女だったということかな?」
「そのようですね。だから、そのあたりも含めて捜査しているんですが、彼女がこの会社に入ってきたというのも、まんざら偶然ではないとすると、何か今回の事件に関係があるのかも知れませんね」
と辰巳刑事は話した。
「でも、気になるのは、二人が付き合っていたというのがいつ頃だったかということですよね?」
と、山崎刑事が聞いた。
「今、二十五歳の片桐澄子が大学生の頃のことだから、四、五年くらいが経っているということではないでしょうか?」
「じゃあ、別れてから四、五年くらい経っているということになるわけなので、そんな昔のことを偶然でもなくて、思い出したように必然にしますかね? 特に今の遠藤にとっては、逆玉に乗って、将来が約束されているわけですよ。それを昔、付き合っていた女性をわざわざ連れてきたりしますかね? 面倒なだけにしか思えないと感じるんですが」
と山崎刑事が言った。
「確かにそれは言えるかも知れないですね。男女の関係は複雑怪奇とも言われるけど、遠藤のように、見えている将来への成功を、崩すようなことは計画通りに進んできた人間ですからね。澄子の方に何か思い入れがあったか、あるいは、遠藤に対して強く出ることのできる何かがあったか、そのあたりも調べてみる必要あるかも知れないのかな?」
と辰巳刑事は言った。
辰巳刑事は、事件を理論立てて考えることには長けているが、人間関係に関してはどこか疎いところがあった。特に男女の関係になってくると、難しいところがあり、山崎刑事に助言してもらうことも少なくなかった。
今回もそのあたりを山崎刑事に意見をもらいながら、捜査することを考えていたのだった。
それにしても、今回の事件は、複雑に何かが絡み合っているような気は、皆それぞれの中にあった。
そもそも、第一発見者が、被害者の義理の弟で、しかも、二人は学生時代からの知り合いだったということからして、とっかかりから、偶然というには、不思議に思える話だった。
そこに持ってきて、被害者も、被害者の夫もお互いに不倫をしていて、旦那の不倫相手とは、二人は以前恋仲だったということが発覚してくると、どこまでが偶然でどこからが必然なのか分からなくなってくる。
今回の事件がなければ、まったく接点がなかったはずの偶然が、一つの殺人事件で明るみになってくるというのは、偶然というよりも、殺人事件が結び付けた事実として、殺人事件そのものに、違った意味の「真実」があるのかも知れないと思えた。
そう考えると、
「殺人の動機というものが、このあたりの複雑な恋愛関係にある」
と言ってもいいかも知れない。
もちろん、それだけを事件の動機として絞り込んでの捜査は、
「見込み捜査」
ということになり、事件を簡単に見てしまうことで、危険なところはあるだろうが、とっかかりとしての捜査では、まず、恋愛関係から当たるのが、一番の方法なのではないだろうか。
そのことを一番感じているのは山崎刑事であり、今までの自分の刑事としての勘が、
「事件を一つに絞ってしまうのは危険だ」
と言っているように思えて仕方がなかった。
山崎刑事がそんな風に考えているのを他の捜査員が気付いているのかどうか分からないが、まだ事件の捜査は始まったばかりだということに違いはなかった。
秋月は、綾子と連絡を交換していた。もちろん、本名、お互いのことを必要以上に詮索しないという条件であったが、綾子がこの事件が気になって仕方がないということからだった。
この日、呼び出しを掛けたのは綾子の方からだった。綾子はこの日、デリヘルの方は休みで、昼間のバイトも三時までということで、そこから先は時間があるということだった。秋月も、その日は残業もない日だったので、仕事が終わってから、秋月の会社の近くで待ち合わせをしたのだ。
「いいんですか? 会社の近くで」
と言われたが、
「いいんだよ、どうせ、皆僕のことなんか気にしているわけでもないし、見られたとしても、妹か何かじゃないかって思うだけだろうからね。どうせなら、彼女だって思ってくれた方が嬉しいくらいさ」
ということで、秋月の会社の近くの喫茶店で待ち合わせをすることになった。二人が会うのはあの事件から初めてで、五日ぶりきらいのことだった。
秋月が店にいくと、綾子はすでに来ていた。キョロキョロと店内を見ていた秋月に、綾子は手を振って答えた。
「お久しぶりです」
と声をかけてくれたが、秋月は、おやっと感じた。たった五日しか経っていないのに、久しぶりというのはどういうことかという意味である。
秋月の方からすると、五日というと、まるで昨日のことのように思えるくらいで、綾子はそれをどれくらいの感覚でいるのか、きっと毎日が充実しているからなのかも知れないと感じた。
秋月が感じる日々の感覚は、少し不思議な感覚であった。
一日一日があっという間の時は、一週間くらいの単位では結構長かったような気がするし、逆に一日一日が長かったと思うと、一週間があっという間だったりするのである。
この五日間は、一日一日は結構長かったような気がしていたので、今から五日前の綾子とのことを思い出すと、あっという間だったように感じるのだ。
「あれから、何か事件の進展はありました?」
と、いきなり事件の話をし始めた綾子に、一瞬冷めた感覚になった秋月だったが、その様子に気付いたのか、
「すみません、いきなり会って最初の会話で色気もないですよね」
というので、
「いや、いいんだ」
と答えたが、綾子の方が自分との接点を考えた時、事件が一番強かったことを思えば、それも無理もないことだった。
でも、少なくとも男女が、久しぶりに(もっとも彼女が言っているだけだが)会った相手に対して、あまりにもそっけないという思いになったのは、男としては辛いところではないだろうか。
「事件の方は、今のところそんなに進展はないようですよ。僕のところにも最初に事情聴取されただけで、それ以降は何もないですからね」
と秋月がいうと、
「じゃあ、お兄さんの方は? お兄さんは被害者の近親者なのだから、当然いろいろ聞かれたんでしょう?」
「まあ、そうですね。二階くらいは言っていると思いますよ。最初に被害者の身元確認だったり、その後の事情聴取だったりでね。でも、それ以上に葬儀などの手配もあったりするので、そっちの方が忙しいんじゃないかな? でも、綾子さんの方も、どうしてそんなにこの事件に興味を持っているの?」
と秋月が聞くと、
「確かに私はミステリーが好きなので、興味があるというのが一番なんだけど、この事件の人間関係に興味があるんですよ」
と、綾子は言った。
「どうしてなの?」
「私の家族も複雑で、この間の秋月さんの話を訊いていて、他人事のように思えないんですよ。きっと、それはお互いの家族の性格なのか、本性のようなものに同じようなものがあるんじゃないかと思ってですね」
と綾子は言った。
「じゃあ、綾子さんの家族関係の中で、だれか浮気や不倫をしている人がいるということなのかい?」
と秋月が聞くと、
「ええ、そうなのよ。それも皆隠しているわけではなく。不倫をしているというのは、公然の秘密のようになっていて。お互いを詮索しないということで、少しの不倫ならしょうがないということになっているようです。もちろん、金銭的な問題や、子供ができるなどという話は問題外なんですが、お互いに浮気性というか、気が多いということは気になっていたようで、それだけに相手の気持ちも分かるということで、お互いに相手に知られないようにごまかしながら不倫をするよりも、お互いにオープンな方がいいという考えのようなんです」
という話を綾子から聞いて、
「それってどういう心境なんだろうね? 普通ならありえない感覚なんだけど、僕に言わせる、浮気を我慢できないくらいだったら、結婚なんかしなければいいと思うんだけど、違うんだろうか?」
というと、
「でも、子供はほしいという話なんですよ」
という綾子の話を訊いて、さらに分からなくなった秋月だった。
「それこそおかしいじゃないか。子供ができても不倫するということでしょう? 女性は身重の時は精神的に不安定になるはずだから、それを男の人は気にしないということなんだろうか? しかも子供ができても、子育て中にも、不倫をするということ?」
と言われて、綾子の方では、
「私もよくは分からないんだけど、そのあたりは当然考えているんじゃないかな? お互いに気が多いわけだから、相手の気持ちも分かるわけでしょう? まあ、男と女の違いはあると思うんだけどね」
と考えているようだが、
「だけど、それこそおかしいんじゃない? 男と女の違いこそ、僕には大きいんじゃないかって思うんだ。特に出産が絡むと余計に思うよ。それにもう一つの問題は一度でも相手に疑問を感じると、何か事件が起こって、一通りの解決がないと、結論のようなものは出ないので、いくら問題にならなくても、気持ちの上での解決にはならないんだよ」
と秋月は言った。
「じゃあ、何か問題が起こった方がいいということ?」
と綾子がいうので、
「そこまでは言わないけど、気持ちがすれ違っている時というのは、何か問題が起こって、お互いに自分を顧みることをしないと、精神的な解決にはならないと思うんだよね。お互いに気持ちを通わせるためには、喧嘩になるのも致し方のないことではないかと思うんだよ」
と、秋月は言った。
「そこまでしないとうまくいかないというのは、何か悲しい気がするかな?」
という綾子だったが、それを聞いて、少しイラっとした秋月だった。
「いやいや、そうじゃないでしょう。そもそも不倫をするということが悪いわけであって、確かにそれぞれに理由はあるんだろうけど、それによって振り回される人もいるわけなので、そんなに簡単にはいかないんじゃないかな?」
と言われた。
それを聞いた綾子は少し恐縮したかのように、
「ごめんなさい。私が少し軽率な言い方をしましたね」
と言って恐縮する姿を見て、ハッとした秋月は、
「いやいや、ごめん。僕も偉そうなことを言ってごめんね。君には君の事情でそういう気持ちになったということなんだよね。その気持ちを考えることもなく苛立ってしまって申し訳ない」
といった。
「いいえ、それにしても、秋月さんは、結構全体を冷静な目で見て居られるんですね?」
と綾子がいうと、
「ええ、そうなんだけどね、僕もあまり男女の関係に関しては素人なんでよく分かっていないんだよ。それなにに偉そうに言ってしまって、それが冷静に見えたのかも知れないね」
と、秋月が言った。
「秋月さんは、誰かを真剣に好きになったという意識は今までにありました?」
と言われて、ドキッとした。
同じことをその時思っていた秋月とすれば、嬉しいという気持ちもあったが、逆に気持ちを見抜かれていると思うと、今度は少し怖い気もした。綾子に対しての怖さというよりも、自分の中で解釈できないことが起こった時の戸惑いに似た怖さを感じていた。
さらに、彼女が自分と同じことを考えていたということは、自分たち二人だけではなく、他の人も簡単に考えることではないかと思うことであった。それだけ自分が世の中を知らないと思ったからなのかも知れない。
「以前、大学の同級生にとんでもないウワサをされた人がいたんだけど、真意についてはあまりにも突飛だったので、僕自身信じられなかったので、ハッキリとは分からないんだけど、親が会社の社長か何かのやつだったんだけどね」
というと、
「ありがちな話なのかな?」
と、綾子は興味深げに聞いていた。
「あれは、二年生の頃だったかな? そいつは、結構端正な顔立ちをしていたし、やはりお金も持っていたので、彼女も複数いたんだよ。その中にはも細々と小さな事務所に所属してモデルやアイドルのようなことをしている女の子もいたんだよね」
というと、綾子はニンマリとして、
「そういう子がほとんどだったんじゃないかな? やっぱり彼女たちはまずはお金目的なんだろうからね。それに男の方もまんざらでもないと思っているのかも知れない。なぜなら、お金は親からもらっているだけで十分だし、そのお金にいくら女の子が集まってきたとしても、相手がアイドルやモデルのタマゴだったりすると、ひょっとしてメジャーデビューするような子も出てくるかも知れない。その男にとっては、アイドルと付き合うというのも、一つのトレンドのようなものだったんじゃないかな? 結構、そういう男女関係って聞いたりしたこともあったわよ」
と言っていた。
「うん、そうなんだ。お互いにそれぞれ口には出さないけど、それぞれに一物隠し持っているんだ。それだけに、男の方は高飛車になったり、女の方もお金目的ということで、少々のことは我慢しようとする。それが次第に形になってくると、バランスが崩れてしまえば、その形が災いしてしまうのよね。例えば、男の方とすれば、自尊心と独占欲の塊りのようなところがあるので、アイドルやモデルともなれば、いくら地下であっても、華やかな世界に男からすれば見えるだろう。そこに変な嫉妬心が芽生えないとも限らない。彼女たちは少しでも上に行こうと、プロデューサーやディレクターに媚びを売るのも当然のこと、お金で彼女たちを繋ぎとめているという意識があるからなのか、彼女たちが自分のために媚びを売ることが男の自尊心を傷つけ、独占欲を粉砕する。そうなると、男は嫉妬からか、見境がなくなるだろう。でも、実際には、女に対しての嫉妬ではなく、女が自分以外の男に媚びを売っているということに我慢できていないということを分かっていないんだろうね。要するに、自分と媚びを売られる向こうの男とはある意味、彼女たちにとっては同じ立場なんだよ。そのことをやつは分かっているんだよ、同じ立場だからこそ、絶対に負けたくないという思いなんだ。それを女の方は分からない。ただの嫉妬だと思っているとすれば、とんでもない思い違いではないだろうか。そうなると、男の立場からすれば、どうして女は自分の気持ちを分かってくれないのかと思うんだよ。それが愛情の裏返しで、縛り付けておきたくなる。そもそも愛情も何もないのに、愛情の裏返しもくそもなく、男にとっては、今まで我慢してきた自分の本性がむき出しになるかも知れない。それが異常性癖としての、SM趣味であったり、相手をいたぶるという意味でのDVだったりするんだ。そうなってしまうと、自分たちだけでは解決できなくなる、何かの騒ぎや事件が起きないと、その関係が収まらない。そういう意味では、どうせ起こるなら早い方がいい。だけど、実際には、どうしようもなくなって警察に逃げ込んだりするんだろうね。警察に逮捕されたりして、前科がついたりしていたものだよ」
と秋月は、そいつのことを思い出しながら、時々苦み走った顔をして話を続けたのだ。
「そういう事件はよく聞くわね。確かに今秋月さんの言ったことそのものなんだけど、精神的な面で、相手とのすれ違いと、最初からお互いの想いの隔たりの大きさから、一旦こじれてしまうと、本当にどうしようもなくなるものなのよね」
と言った。
「この男、まだ続きがあるんだけどね」
と秋月は言った。
「うんうん」
綾子もここまで聞いたのだから、さらに興味津々になって聴いていたのだ。
「やっぱり、こういうお金のある男は、アイドルやモデルという女性との付き合いをトレンドのように考えているんだろうね。でも、今度は、嫉妬に狂うこともあるかも知れないというのを分かっているのか、すべてをアイドルやモデルばかりにはしなかったんだ。この男、たちが悪いことにロリコンでもあったので、高校生にも手を出したりしていたんだ、その頃には、ネットの世界では少々有名になっていて、ユーチューバーなどと言われて、調子に乗っていたりしたんだけど、やはり独占欲の強さからか、か弱い女子高生を監禁して脅迫したりしていたらしいんだけど、もちろん、警察沙汰にまでなるほどのものではなく、警察が介入できないほどの些細なことだったのだろうが、女の子にとっては、DVを受けているようなものだったらしいんだ。でも、ネットで有名なだけあって、素性は結構皆に知られていて、影では本名はおろか、自宅や会社も知られていて、過去の女性関係も丸裸にされていたんだ。こういうしょうもない男こそ目立つというもので、知らぬは本人ばかりだったというわけなんだけど、この女の子のことがバレてからは、さすがにネットでも黙っていていいものかということになり、ウワサを流す者、告発のような文章をネットに晒す者、そして女の子に接近して、その子から内容を聞いて、ネットで洗いざらいぶちまける者、それぞれいたんだ、そうなると、あることないこと、ウワサがウワサを呼んで、ネットは大炎上、ここまでくればさすがに父親も庇いきれなくなって、勘当したようだ。当然児童虐待でまた逮捕、今度は二度目なので、刑事罰もかなりのもので、今は刑務所に入っているようだけど、戻ってきてもいくところがないということなんだ」
と秋月は言った。
「本当にひどいやつよね。でも何となくdかえど、それが誰だか分かった気がするわ」
と綾子は言った。
「そんなに有名なのかな?」
と秋月がいうと、
「うん、確か、元アイドルグループの彼女と結婚寸前という話だった人でしょう? 確か、お腹には赤ちゃんがいるとかなんとか聞いたことがあるわ。しかも、監禁脅迫事件が発覚したのは、そのできちゃった婚の発表寸前のことだったって聞いたわよ」
と綾子は言った。
秋月の方も、その、
「できちゃった婚」
の話までは知らなかったけど、もしそれが事実だとすれば、もう救いようがないだろう。
「それにしても、大学生でようそこまでできたもんだって思うわね。もっとも、精神年齢は相当低かったんでしょうけどね」
と、綾子はムカムカしている様子で話した。
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