第4話 捜査本部

 K警察署では、けど蔵捜査本部長を中心に、清水警部補、辰巳刑事、山崎刑事を中心としたお馴染みのメンバーが捜査に当たっていた。

 今回の事件の戒名は、

「ラブホテル主婦殺害事件」

 という内容で、ラブホテルという意味深な場所で、主婦が、部屋ではなくエレベーターの中で、奇妙な格好で、殺されていたという一つ一つを切り取っても、奇妙な内容が凝縮していることで、マスコミの反応も大きかった。

 新聞にも社会面では大きく取り上げられ、週刊誌にも話題となった。ただ、話題性として大きいのは地元だけのことで、ちょうど世間は、政治や芸能界のスキャンダルがマスコミを支配していたので、さすがに全国ニュースとまではいかなかった。それでも地元メディアは、この不可解な事件を取り上げ、地元紙面に幅を利かせることになっていた。

 警察にも当然メンツがあり、

「早期解決に全力を尽くしてほしい」

 という県警本部長の訓示もあり、捜査本部もそれなりの緊張感をもって捜査に望むことになった。

 第一発見者の一人である秋月も、最初こそここまで大きな事件になるなど思ってもいなかったようで、簡単に考えていたが、

――なるほど、ミステリーの好きな綾子さんが興味を持つだけのことはある――

 と思ったほどで、逆にことが大きくなってきたことからも、どこか他人事に思えてきた自分が、やはり小心者なのかと思うのだった。

 秋月は、あの日、綾子と話をした中で、不可思議な内容を思い出していた。一番おかしなことがエレベーターの姿勢だということを話してくれたが、そこに至るまでのいくつかの不思議なことも話をしていた。

「まず、どうして、四階にエレベーターを留め置かなければいけなかったのかということよね? 四階に何かあったのかしら? 警察が勘ぐるとすれば、あなたという身内がいたこと。そういう意味ではあなたはただの第一発見者としては警察は見ないかも知れない。少なくともあなたは、被害者と面識がある時点で、第一発見者から、参考人に立場が変わったのかも知れないわ」

 と彼女は言った。

「でも、僕があのホテルのあの部屋に入ったのは、最初から計画していたわけではない。普通の火照るや旅館だったら、予約が必要だけど、あそこは、到着してから部屋を自分で決めるんだよ。あの場所に死体があったのは偶然としか思えないんだけど?」

 と秋月がいうと、

「それは、あなたが自分の目で見て言っているだけでしょう? 客観的に見るとそうじゃないのよ。もしあなたが被害者と深い関係にあったとして、彼女があなたを尾行していたとすれば? それはあなたにとって都合の悪いことであれば、殺害も考えられる。しかもあなたを頭のいい犯人だと思ったとすれば、ラブホテルに入ったのも、今あなたが申し開きをしたように、偶然だったといって逃れるためだったと言えなくもない。だから、あなたの立場はこれから微妙になってくるでしょうね。第一発見者あから参考人になっていくかも知れない」

 と綾子がいったので、

「脅かさないでくれよ」

 と秋月は苦笑いをしたが、さすがにここまで言われると、苦笑いだけでは済まされなかった。

 背中に変な汗を掻いていて、何も頭に浮かんでこない自分に苛立ちを感じていた。誰かに相談相手になってほしいという気持ちになりながら、募ってくる不安に震えていたのだった。

「大丈夫。事件が解決するまで、この私が相談相手になってあげるから、心配しないで」

 と言ってくれた。

「本当かい?」

「ええ、ちょっと脅かしすぎちゃったわ、ごめんなさいね」

 というではないか、秋月は彼女の優しさに感動し、出そうで出てこない涙を感じ、目頭が熱くなるのは感じていた。

「でも、彼女があそこにいたということは、かなりの確率で、あなたを尾行していた可能性はあるかも知れないわね。その理由はよく分からないんだけど、ただの偶然ではないと思うんだけど、それは『ただの』という部分に限定したことであって、何かしらの偶然が含まれているのは、間違いのないことだと思うのよ」

 と、綾子は言った。

 ちょうど、似たような話を捜査本部でもしていた。綾子が句づいた、

「被害者の尾行」

 という発想は、辰巳刑事にあった。

「どういう発想なんですか?」

 という山崎刑事に対して。

「昨日の被害者の旦那が来た時の話を思い出してごらん」

 と、と辰巳刑事が言ったが、この話というのは、昨日の第一発見者である、秋月と綾子がその場所を離れてすぐのことだった。被害者の旦那であり、第一発見者の実兄である遠藤隆二が現場に呼ばれた時のことだった。

 遠藤隆二は仕事中でいきなりの訃報を聞かされ、しどろもどろだった状態から、摂るものもとりあえず現場にやってきたということだった。そのせいもあってか、彼は頭の中が整理できていなかったようで、中途半端で終わった仕事のことから頭を話すことができないほどだった。

 それだけ彼の頭の中が融通の利かないものだったのかということなのだろうが、気が動転していれば、人によっては、まったくの想定外ということもありうるはずなので、こういう時の肉親という関係者の中でも抗うことのできないほどの関係からは、想定外の行動や言動が出るのは仕方のないことだろうと思うのだった。

「いきなりで驚かれたと思いますが、ご足労いただきありがとうございます。まずは奥さんかどうかの確認をお願いしたいのですが」

 ということで、まだ現場に残っていた奥さんの顔の「実検」を一番の関係者である旦那にしてもらった。

「はい、女房に間違いありません」

 と言ってうな垂れているところ、

「それは本当にご愁傷様です。我々は今日奥さんに何が起こったのかを解明し、奥さんの無念を晴らしたいと思うますので、ご協力のほど、よろしくお願いします」

 と頭を下げると、涙ながらに隆二は頷いていた。

「奥さんのことで最近何か気になることとか、ありましたか>」

 という質問に、

「いえ、これと言ってはありませんでした。結婚してからまだ二年くらいですので、そろそろ新婚気分が抜けてきた感じで、二人の間で、そろそろ子供もほしいねなんて話も出ていましたから、おかしな雰囲気というのは私は感じませんでした」

 と隆二は言った。

「ところで、死体が発見された場所がラブホテルというのは、少し微妙な感じがするんですが、お二人で今までにラブホテルを利用されたことはありましたか?」

 と言われて、

「ええ、独身時代には何度か利用していますよ、たまには気分を変えたいという意見がどちらからともなくあり、お互いにそれについて抗うことはありませんでした。相手も同じ気持ちだったと思います。少なくとも彼女がそれを言い出した時は、私も同意見でしたね」

 と隆二は答えた。

「よく利用されるところは決まっていたんですか?

 と訊かれて、

「決まった場所というのはありません。いつも同じところで行くわけではなく、衝動的に行きたくなっていくことが多いので、わざわざそこまで行くということはありませんでした。でも、大体の地域の中で、このあたりだったら、どのホテルというのは、ある程度決まっていました。このあたりだったら、確かにここのホテルを使うことは多かったと思います」

「じゃあ、奥さんはこのホテルについては熟知していたということでしょうか?」

「ええ、そういうことだと思います」

 この会話を捜査本部で報告すると、

「旦那は、奥さんが不倫をしていたかも知れないという思いはあったのかな?」

 と、清水警部補がそう訊ねると、

「本人は否定していましたが、私の見た限りでは、完全には知らないまでも、疑いの目では見ていたような気がします」

 と辰巳刑事が聞くと、

「じゃあ、旦那かあるいは旦那に頼まれたか何かの他の人が、不倫相手と彼女を尾行していたということはありえないわけではないとも言えるのかな?」

「私はそう思います」

「その根拠は?」

 と清水警部補が聞くと、

「あのホテルに、彼女の義弟がいたからです。確かにラブホテルというところ、その時のインスピレーションで入るのだから、最初から分かっていたわけではないと思うんです。そういう意味で、殺された彼女が何かを思って義弟のそばにいたとは思えないんです。それよりも彼女が殺されたことで、その犯罪の矛先を逸らすのであれば、表に出ているのが義弟ということで、彼を表舞台に引きづり出せばいい。少なくとも偶然が重なったように見えるのであれば、それは必然の可能性もあるわけですよね? その必然が被害者を飛び越したものであったと考えられるんです。被害者の向こう側に義弟を見ていたのか、それとも彼女を見ていて、その向こうにいる弟を見たのかと考えれば、後者も十分にありえる気がするんですよ。つまり、想像力を膨らませようとすると、いくらでも発想することができる。それがこの事件の特徴ではないかと思うんです」

 という、分かりにくい話を辰巳刑事が言った。

「じゃあ、君は、この事件が表に出ているだけでは測ることのできない何かを秘めているとでも言いたいのかな?」

「ええ、そういうことになりますね。しかも、そのことを、例の義弟は気付いているのではないかと思うんです。やつは見た目はさえない、自分の意見を持っていないやつに見えますが、それだけに、何かに気付いていて。それを自覚できない性格にも見えるんです。だから私は、この事件のカギを握っているのは、彼だはないかとも思っているくらいなんですよ」

 と辰巳刑事は言った。

「旦那と、第一発見者の秋月氏とは実の兄弟だというではないか。ひょっとすると、あの弟は姉のことを意識しているということなのか?」

「それはあると思います。それがすべての発端だとは言いませんが、過去において何かあったのだとすれば、秋月氏と殺された遠藤玲子さんの因縁に関係しているかも知れないと思うんですよ」

 と辰巳刑事はいう。

 清水警部補は、普段から事件における、

「偶然」

 というものをあまり信用していなかった。

 どちらかというと、そのお偶然は必然ではないかと思うのだ。

 偶然には偶然が重なることで、それが必然となる。その考えが清水警部補にはあり、偶然と見える裏に潜んでいるもう一つの偶然を探そうとするのが、清水警部補のやり方だった。

 辰巳刑事はそんな清水警部補の考え方を最初から知っていたわけではない。だが、辰巳刑事も捜査の基本の一つとして、清水警部補と同じ考えを持っていた。今では辰巳刑事も清水警部補の考え方を分かっているつもりなのであるが、最初はあまりにも似ているために、

「まさか、同じ考えが根底にあるなんて、信じられない」

 という思いが強く、信じられないという考え方が支配していたのだ。

「それにしても、どうして半人は四階にこだわったんですかね? 弟が四階にいるからという意識から、四階にしたんでしょうか?」

 と山崎刑事が言ったが、

「それだけではないような気がする。だって、他の四階の客が出てきてからでは、とてもエレベーターの前の仕掛けを利用することは難しいんじゃないですか?」

 という辰巳刑事の言葉を補足でもするかのように、

「壁にもたれかかるようなあの姿も、おかしいんだよな。四階に留め置くために、死体を扉が閉まらないように使ったのだとすれば、あの短い時間であそこまで起こせるとは考えにくいし、ましてや、何かを置いていたとすれば、それをどこかにやるには、もっと時間が掛かる気がする。だから、死体が何らかの役目を果たしたことは間違いないんだ。そのあたりから考えてみる必要があるんじゃないかな?」

 と、清水警部補がいうと、捜査会議は誰も発言する者がいなくなった。

「あの恰好に何か意味があるのかな?」

 と、山崎刑事が呟いたが、すぐに何か返事のできる人はいなかった。

 この言葉に意味があるようで、それは誰にも分からない。すぐには分からなくても分かる日がやってくるのは間違いないが、それが、本当に事件の核心部分なのか、その時点では何も分からない。

「旦那の様子はどうなんだい?」

 と訊かれて、

「憔悴しきっている感じはしましたが、明らかに何かの動揺は感じました。最初は旦那だから仕方がないと思っていましたが怪しいと思えばいくらでも怪しく感じられるのがこの事件の特徴でもあります」

 と、山崎刑事は答えた。

 このあたりに関しての話は、秋月の方でも感じていたことであり、何しろ実兄なのだから当たり前のことといえば、それまでだが、秋月が感じているのは、

「あの兄は、よく分からないところが分かるということだ」

 というところに行きつくことであった。

 弟としても、他人の目から見ても同じに見えるというところが、兄の最大の特徴であり、そんな兄が自分の好きだと思っていた女を、

「横取り」

 したのだと思っていた。

 弟が兄の好きなものを欲しがるということは、親の育て方によっては、よくあることだった。だが、それは兄も弟もお互いにある一定の関係を維持している場合に言えることで、この二人に限っては逆の関係だった。

「兄が弟のほしがっているものを欲している」

 という関係は、普通に見ていて気付く人はいないだろう。

 逆に、普通の人のように、

「弟が兄のほしがっているものを欲しがっている」

 という風に見えるのだ。

 そのまわりの目が、弟にとってどれほど理不尽に感じさせるか、その感覚が弟を引っ込み思案にさせ、自己嫌悪を最大のものにさせた。しかし、それはあくまでも、世の中の都合に振り回されたからであって、

「世間には逆らえない」

 という気持ちを抱いてしまったことが、弟にとっては悲劇だったのだろう。

 自分のすべてを否定し、人から慕われたり、女性からモテるなどというのは、夢物語に過ぎないということを、嫌というほど思い知らされた。

「ひょっとすると、兄には兄の言い分もあるのかも知れない」

 という思いが、どうしても自分を表に出すことのできない性格にしてしまった。

 だから、いくらまわりから促されても、最後の一歩を踏み出すことができないでいた自分になってしまった。

 玲子を好きになっていたにも関わらず、それを分かっていながら認めることができなかったことで、兄によって強引に自分のものにされた玲子こそ、この兄弟の最大の被害者だったのかも知れない。

 兄の隆二はまるでほしかったおもちゃを手に入れるがごとく、玲子をおもちゃ代わりにして自分のものにした。

 玲子は気丈だったこともあって、兄を恨むどころか、兄弟の因縁を知ったことで、一番に秋月を呪ったことだろう。

 だから、血痕に際しては抗うことをしなかった。あくまでも秋月に対する当てつけの意味が強かったのだ、

 だから、平気で浮気もできたのだし、それ以前の隆二が他のオンナを抱くことも、正確には浮気ではない。

 隆二という男は、すべての目が弟に向いていた。何が兄をそんな歪んだ根性に結び付けるのか分からないが。、弟が自分の中でのすべての敵として凝縮されていたのだ。

 こんなこと、普通の兄弟ではありえないことだろう。

 それでも、この二人の間には、拭い去ることのできない因縁として残り続けている。おそらくどちらかが死ぬまで変わらないだろう。いや、どちらかが死んでも生きている方の心には思いとして残り続けているので、消えることはない。

「悲劇とは、こういうことをいうに違いない」

 そのことを、少なくとも弟の秋月は分かっているつもりだった。

 一緒にいる綾子も、ここまでひどい兄弟を見たことがない、だが、この二人の兄弟に勝るとも劣らないほどの経験をしていると、綾子も思っていた。

 綾子には、兄がいた。

 兄は、今は警察の厄介になっている。今綾子が、風俗嬢として働いているのも、その責任の一端には、兄の存在があったからだ。

 同情の余地のない兄の存在が、綾子の心を傷つける。何をやっても、自分の行動の裏には兄の存在が影響している。

 さすがに秋月兄弟ほどのひどさはないが、少なくとも兄は犯罪者だった。

 正直、常識のない人間ではないのだが、こと女性に対しては、相手によってではあるが、人間が変わってしまうことがある。まさに現代の、

「ジキルとハイド」

 と思ってもいいだろう。

 ちなみに、同じ兄弟で名字が違っているのは、兄の隆二が養子に出たからだった。遠藤家というのは、戦後すぐに混乱から財を成した家系であり、その頃から代々世襲にて会社を大きくしてきた経緯がある。そのため、子供に補正しかいなければ、夫には養子になってもらい、会社をいずれは継いでもらうというのが、慣例になっていたのだ。

 したがって、兄が玲子さんと結婚した時にも養子になるという条件だったのだ。

 秋月家は、別に継ぐような財産がある家系でもなかったので、長男だから、養子に行ってはいけないなどというそんなものもなかった。どちらかというと野心家である兄は、本当に玲子さんと愛していたから結婚したのか、それとも、遠藤家に入り込むために結婚したのか分からない。秋月が兄を完全に信用できないのはそのあたりにあり、二人が浮気や不倫をしていたとしても、踊りくことはあっても、不思議に思うことはなかった。

 兄が結婚前に他のオンナと一緒にいたとしても、それはひょっとすると、それまでの女たちへの決別からだったのか、抱き収めだとでも思ったのか、

「恋の清算」

 という意味合いが強かったのかも知れない。

 しかし、それにしても、そんな兄だからこそ、弟の持っているものを兄が欲しがるという性格お分からなくもない。それだけ完璧主義者だったのではないだろうか。

 弟の持っているものを欲しがる中で、玲子という思わぬ副産物を見つけた。きっと兄としては、

「あいつにはもったいない」

 とでも思ったのか、兄の自尊心に火をつけてしまったのだろう。

 どこまで玲子さんのことを好きだったのか、それに、玲子さんもどこまで兄のことを好きだったのか、それを思うと、秋月にも何かが思い当たるような気がした。

「まさか、玲子さんは僕への当てつけのつもりで、兄と結婚したのではないか?」

 とさえ感じた。

 兄と知り合って、兄が強引に玲子さんを自分のものにした時、一番心の中にいたのが、秋月だったとすれば、何かが繋がるような気がする。

 玲子さんがもし、結婚してから不倫を繰り返していたのだとすれば、なぜ自分に言い寄ってこなかったのか、それは一番そばにいてほしい。そして一番辛い思いをした、兄からの強引な行動に、秋月が気付きもせず、とんでもない兄に対して抗うことができない、そんな意気地なしの秋月にたいして、

「可愛さ余って憎さ百倍」

 という言葉のごとくだったのかも知れない。

 それを思うと、殺された玲子が今どのような生活をしていたとしても、少なくともその責任の一端は、秋月にあるといえよう。

 今まではそのことをウスウス感じていながら、目を逸らしてきた。

 いや、

「俺は兄の被害者なんだ」

 という思いから、被害者意識が強く、その意識の延長線上にある、玲子の存在から目を背けていたのだろう。

 玲子だけではないかも知れない。自分と兄との関係の中で、被害者意識のその先で盲目になってしまった罪が、いくつも蠢いているかも知れないと思うと、今回の玲子さんが殺害されたことから目を背けてはいけないのではないかと思うのだった。

 ただ一つ気になるのは、綾子がどうしてこの事件に興味を持ったのかということであるが、それだけ秋月の中に自分が気付かない中で、他人に何かの影響を与えるような力が存在しているのではないかとまで思ってしまうほどだった。

 秋月は、兄に対して、どちらかというと、対照的なイメージを持っている。兄の自尊心の強さと、弟のものを欲しがるという思いである。本来なら、平行線のように交わることがないもののように思うが、それはきっと他人には分からない、兄弟にだけ存在しているものではないだろうか。

 玲子が殺害されたという今回の事件、少なくとも、この二人の兄弟、そして、兄、弟のそれぞれとの関係が絡み合って、殺害に繋がっていると考えることができるような気がする。

 となると、

「今表に出ている事実だけで、犯人に辿りつくのは結構難しいのではないか?」

 と、秋月は考えたが、警察の捜査能力にも限界がある。

 特に、個人情報という壁は大きなようで、不倫や浮気というのはウワサがあっても、なかなかその事実にまでたどり着くのは難しいだろう。

 現段階で動機を狭めて見るのは危険であるが、秋月の中では、他に動機になるものが発見できないような気がする。そうなると、事件の歯車がかみ合いにくくなるのではないかということが想像されるのであった。

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