第7話 ホワイトプラチナムメリダス

 2日後、3人はホワイトプラチナメリダスを発見した。ホワイトプラチナメリダスは宝箱に入っていた。宝箱はキングベへモットが守っていた。


 キングベヘモットは全長20メートル・総重量11・6トンの超重量級モンスターだ。動きは鈍重だが攻撃力が高く、燃え盛る炎を吐く。尻尾だけで周辺の木々を薙ぎ倒し、強力な皮膚で覆われている。肉弾攻撃に滅法強かった。


 ヤマトはギランの魔法で飛び回り、キングベヘモットの気を引く役目を果たす。攻撃は主にギランの魔法だった。まず厄介な尻尾を切り落とし、それから四肢を狙う。


 右前脚を重点的に狙うヤマトだが、一撃一撃がまるで効果が無いかと疑ってしまった。そのくらいキングベヘモットの皮膚は硬く、厚い鉄を超える強度だった。


 だが同時に、ヤマトは自分が強くなっているのも感じていた。それは戦闘面以上に精神面でだ。昔の自分ならばすぐに諦めて誰かに任せていた。勉強でもスポーツでも、誰かに負ける・諦めるのが沁みついてしまっていた。


だが命を懸けた戦闘を通し、あがくことを覚えた。必死になってしがみつく行為は悪いことじゃない。このあがきがヤマトを強くしていた。


ギランのアルガ(氷系の魔法が右前脚に当たり、キングベヘモットがよろける。


「今じゃ小僧っ」


ヤマトはキングベヘモットの腹部に潜り込む。そこが最も防御力の低い箇所だった。ヤマトが腹部に剣を突き刺した。数時間掛け、キングベヘモットが倒れる。


宝箱に眠る、ホワイトプラチナメリダスを入手した。


「何とまばゆい輝き」


 ホワイトプラチナメリダスはソフトボール大の大きさで、ヤマトが今まで見てきたどんな物質より光沢があった。多角的に光を放ち、どの角度から見ても直視出来ないくらい眩しかった。


ホワイトプラチナメリダスには18億の価値が付いた。エリザ・ギランと共に、ヤマトはジュベル政府から絶賛された。


 以降3人は、三人一組で行動をするようになった。


 エリザが話していたように、グラウンド・オルタナスの人口は増加した。各国(惑星)は経済を回す為に組織化を進める。


ヤマトのような剣士、闘士(ファイター)、狙撃手(スナイパー)、射手(弓矢)の戦闘要員から、魔法使い・商人・僧侶・鍛冶屋・大工・警備・宿屋。魔物を倒すだけが収入源ではない。どんな方法でもGAGを入手すれば、現実世界の通貨と換金可能だ。グラウンド・オルタナス内の経済は、順調に拡大していった。


 メタバースではDAO組織、つまり分散型自立組織で中央集権制は敷かれないのが魅力の1つとされていた。が、そのような組織は日に日に減少している。ビジネスとして収益を目的とする場合、誰かが組織を先導しなければならない。悠長にしていては他の組織との競争に負けてしまうからだ。競争が無くなった集団が安定的に実績を残せなくなるのは、現実世界の20世紀に証明済みだった。


 エリザやギランと行動を共にするようになったヤマトは、実力を急上昇させていった。2人はラント随一の実力者で、赴く場所や与えられる任務のレベルが高かった。ヤマトは何度か死に掛けたが、その度にエリザの回復魔法で一命を取り留めた。


「あ、2人共。もう敵はやっつけましたよ」


 ヤマトの周辺で大量のメリダスが煌めいている。


「小僧、貴様あれだけの魔物を1人で倒したのか」


10分前まで多数の魔物がヤマトを取り囲んでいた。ヤマトと分断されたエリザとギランは、極力素早く敵を葬った。エリザが想像していた以上に、ヤマトの成長速度は凄まじかった。


「小僧、使えるようになってきたのう」


「ありがとうございます」


 2人の会話をエリザは観察していた。


 やはり急激な成長である。何故彼だけがこんなプロセスを辿るのか。いや、彼以外にも同じような成長過程を辿っている者が居る。だがその要因が分からない。この現象に何か理由はあるのか。


「ヤマト。戦いに慣れてきたようですね」


「そうだね。でもまだ戦闘中に困る時があるんだ。もっと出来ると思うんだけど」


「……」


 ヤマトは未だ自身の実力に満足していない。


「ヤマト」


「うん?」


「もっと強くなりたいですか」


「うん。2人の足手まといになりたくないからね」


「ならば修行をしませんか。貴方の潜在能力を開放する為に」


「良いの。じゃあお願いするよ」


チームとして活動するようになって、1年が経っていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る