十七歳

 凌辱のエターニアⅣ─アルス王国建国記─では、俺、こと、シドル・メルトリクスは十七歳の誕生日を迎える前に死んでいるはずだった。

 だが、今、バハムル王国の王都と言うには些か長閑で閑散としているバハムル村とその小さな王城の一室で無事に十七歳の誕生日を祝ってもらえていた。


「誕生日に私を差し上げます。と、言いたいところだけれど、残念なことにフィーナが結婚まで我慢するということだから、それまではお預けだわ」


 そう言ってイヴェリア・ミレニトルムは木箱を俺に差し出した。

 彼女は凌辱のエターニアシリーズの最初のラスボスだった。

 主人公アルス聖女ハンナとの決闘で命を落とすはずだったところ、俺が助けたのだ。


「今日の日のために用意をしたの。王として恥ずかしくないローブをと思って」


 イヴェリアから木箱を受け取った俺は、


「開けても良い?」


 と、イヴェリアに訊いてから箱の中を確認。

 濃碧色を基調として深青、白を織り交ぜたローブだった。


「森のエルフの絹糸に灰銀の鋼糸を織り込んで世界樹の樹液を塗布したものよ。世界樹の樹液は霊性を高めるから、シドルの甘美で濃厚な魔素にとても強い反応を示すそうよ。色合いはそうね──。バハムルの森と湖、それと雪を連想するものにしてもらったわ」


 世界樹の樹液とはこれはまた希少なもののはずだ。

 イヴェリアの表情からは贈呈品に自信あり気でそれでいて大人びた笑顔で俺を見つめている。

 ローブを手に取るとふわっと柔らかく光った気がした。


「凄い……。こんなに馴染むものなんだ……」


 サラッとした肌触りに一体化する感覚。

 ぼんやりとしたその光は、光輝くと言う感じではなく、薄っすらとした光を帯びていて、光というより温かみに近い。

 それをただ、静かに讃えている。

 まるで世界樹がそこにあるのかと思わされる。そんな深みを感じさせる気配。


「あら、ローブに魔素が広まって輝くのね。それにしたってこれは、霊性を高めるからってケレブレス様に聞いたのに神性を帯びている感覚すらあるわね」


 イヴェリアはそれを神性という言葉に例えた。

 彼女の【魔素探知★】というスキルがそう感じさせているんだろう。

 そして、イヴェリアは


「──この神性を帯びた強い魔素マナ……。これは使えそうね」


 と独り言っぽく呟いて「ねえ、フィーナ」と俺の傍のもう一人の美少女に目線を送る。


「私にはわからないわ」


 フィーナはそう答える。

 フィーナは俺と同じく魔素を感じることができない。

 俺が魔素が濃いとか薄いとか分かるのは魔法を使ったときくらいだ。

 イヴェリアのプレゼントを受け取った次は、フィーナが布に包まれた長柄のものを俺の前に差し出した。


「今度は私からね。誕生日おめでとう。シドル」


 そう言ってフィーナは包装を解いて一つの剣を俺に手渡す。


「私の持つ細剣レイピアと雌雄一対の長剣よ。ただ、シドルは魔法を使うから魔法の威力を高めるための宝玉を柄にあしらわせたけどね」


 黄橙色の刀身に漆黒の柄。

 その柄に取り付けられた黒い宝玉は俺はフィーナにあげた力の指輪マナ・リングの宝玉によく似た色をしていた。

 そう、この宝玉はフィーナの意趣返しだ。


「刀身はモリアで鍛造してもらったオリハルコン製。柄と鞘はイシルディル帝国で作成してもらったガルヴォルン製。宝玉はエターニア王国の宝物庫にあったものを使ったの。シドルがくれた指輪についていたものに似た色だから使わせてもらったのよね」


 ということらしい。

 ガルヴォルンは隕鉄鉱から作られる漆黒の金属で灰銀鉱から出来るミスリルと同列の金属としてこの世界では扱われている。

 隕鉄鉱の主な産地はイシルディル帝国内。

 帝国の女皇帝ネイル・ベレス・メネリルが装備する全身鎧の材料でもあった。


「ありがとう。フィーナ。大事に使うよ」

「ふふ。喜んでくれてるその顔がとても嬉しいよ。宝玉は指輪のものより大きいけど指輪と違って何も込められていないから効果がないの。魔法の威力が高まることだけは確認したんだけどさ」


 フィーナがそう言うので俺は【鑑定★】でフィーナから貰った剣を見る。

 力の指輪マナ・リングの黒い宝玉とは別物だった。

 とはいえ、この剣の柄を飾るこの石は黒水晶。

 これもまた貴重品である。

 ともあれ、おそろいの物にしたがるのはフィーナっぽくて微笑ましい。

 こうして二人の幼馴染のプレゼントを皮切りに、俺の十七歳の誕生日を祝う席が始まりを迎えた。


「シドル様、お誕生日おめでとうございます」


 領城は狭いからそんなに多くの人を呼んでないが、今回は帝国からネイルの妹のルシエル・メネリルが訪問していた。

 それも数十名と言う帝国兵を伴い当面の滞在の許可を得るためにネイルの名前付きの書簡を携えて。

 書簡はあとで確認するとして、お礼が先だ。


「ルシエル様、ありがとうございます」


 ちなみに帝国からはフィーナに貰った剣の柄や鞘に使われているものと同じ素材を使った胸当て。

 これをルシエルが到着した一昨日に献上品として受け取った。

 返礼品に岩塩と灰銀鉱を既に手配をしてあるので数日中に使節団を纏めてイシルディル帝国に向かわせるつもりだ。


「ルシエル様と共にやってきた帝国騎士たちは、もうダンジョンに?」

「ええ、数名を残して皆、ダンジョンに行きました。ここは安全だと聞いてましたし、バハムル兵がガイドとしてついていてくれてますから我が国の騎士たちも安心して挑みにいきました。まずは軽く偵察という形式ではあるけれど」

「ダンジョンは良いんだけれど、バハムルの森のダンジョンは非常にレベルが高いので身の安全を最優先にしていただければ俺としては言うことは何もないよ」

「それはもう今朝、耳が痛くなるほど、バハムルの兵士たちに言われましたよ」


 といった感じで彼女と会話をする。

 イシルディル帝国はここに大使館を作るつもりで、その先遣としてルシエルが来た。

 エルフやドワーフは故郷を出て好き勝手に移住してきているというのに、こっちの褐色のエルフは国として交易を結びに来ている。

 帝国騎士を定期的に派遣するつもりらしい。

 概ね戦闘訓練の一貫だろうな。

 俺としては命の安全を最優先にしてもらえるなら断るつもりは全く無い。


「命があってのものですから。ここは元々、村落だったところに国を興したものですし、人が死ぬということがどれだけの損失か皆がそれぞれ痛感しているんです。だから死なないために口が酸っぱくなるほど注意を促してるんです」

「お姉様も似たようなことを言うんですよ。どれだけ強くなっても命の脆さと大切さがわからなければただの蛮勇でしかないといった感じで」


 それは当然そうだろう。と、俺もネイルに完全に同意。

 だから俺は


「ネイルの言葉には俺も同意するよ」


 と、言葉にした。

 ここで会話が一旦途切れるとフィーナがルシエルに声をかける。


「お久し振りです。ルシエル様。その説は大変お世話になりました」


 カーテシーを見せてまずは挨拶から。

 ルシエルもフィーナに応えてカーテシーを返した。


「お久し振りです。フィーナ様。あいも変わらずお美しくて何よりです」

「いいえ。ルシエル様だって、とてもお綺麗でして……。と、そんなことよりも紹介しておくわね」


 と、フィーナの視線につられてルシエルはイヴェリアに目線を移す。


「貴女が【精霊魔法】を使えるという人間なんですね……」


 ルシエルが思わずと言った顔で独り言っぽく言葉にした。


「エルフと袂を分かつとも、その血の濃さが精霊や魔素に理解を持たせる……そういうことなのね」


 ルシエルの独り言にイヴェリアは独り言ちる。

 まあ、恩返しと言いたいところだけど、良い意味での意趣返しといったところか。


「そちらのフィーナ・エターニアの紹介に与りました、ミレニトルム家の長女、イヴェリア・ミレニトルムと申します。どうぞお見知り置きくださりますようお願い申し上げます」


 と、表現し難い妖艶さを漂わせて優雅にカーテシーを披露。

 ルシエルとイヴェリアは同じくらいの背の高さだと言うのに、ルシエルは自分よりも大きいものを見ているのかと言った姿勢でイヴェリアを眺めた。

 彼女──ルシエルはイヴェリアの優雅な振る舞いに見とれ、大きな瞳を丸くしている。


「こうして、拝見すると、ルシエル様の造形はシドルの好みに当てはまっているのね。ルシエル様のお姉様──皇帝陛下も似ていらっしゃって?」


 イヴェリアは言った。


「え……ええ。あ、はい……。お姉様はもっとこう……シドル様が見惚れる感じで……」


 ダークエルフでイヴェリアよりも年上だと言うのにルシエルはイヴェリアの雰囲気に呑まれてしどろもどろに答える。


「そう。ありがとう。お答えくださってとても参考になったわ」


 イヴェリアは魔女の笑みを浮かべるとルシエルは


「こちらこそ。お役に立てていただけましたら大変に僥倖にございます」


 と、笑顔で応じてこの場から離れていった。

 それからのルシエルは大変大人しい。いや、こういうのはしおらしいと言うのか。

 普通に会話をする分には存外に接しやすくなっていた。


「バハムルは森に入ればエルフの森ほどでないにしろ、それなりに濃いから充分だとは思うけれど、ルシエル様が魔素をお求めのようでしたら応じたほうが宜しいかと思うわ」


 イヴェリアはルシエルを遠巻きに見ながら俺にそう言った。

 もはや恋人と言っても良い二人の幼馴染から俺は離れて母さん達の席に向かう。

 そこには母さんのシーナ・メルトリクス・エターニアと俺の弟のトール・メルトリクス、そして、妹のジーナ・メルトリクスの三人がいる。

 席に座り、俺が来るのを待っていたらしい。

 目が合うと母さんは色香を漂わせる笑みを向け、トールとジーナは席から立ち上がって俺のことを呼ぶ。


「お兄様」

「シドルお兄様」


 トールは現在、メルトリクス領の領主として働いてる。

 まだ十四歳と幼いながら周囲の家来の協力もあり、適切な領地運営を執り行っている。

 今回は俺の誕生日ということでバハムルに来ており、母さんとジーナが住んでいる小さな家に滞在をしている。

 彼と同じ席に座る十歳になったばかりのジーナは今も変わらず俺に抱き着いて離れたがらない甘えん坊だ。

 母さんは俺に「十七歳、おめでとう」というと申し訳無さそうに──、


「せっかくシドルの誕生日を久し振りに祝えると言うのに何も用意できていないわ」


 ごめんなさい。と、母さんは言う。

 バハムルでは貨幣は出回っておらずフィーナやイヴェリアですら、お金という観点で言えばすっからかん。

 それでも、これまで築いてきた人脈を使い、バハムルの生産物を差し出して目的の物品と交換するなどして収集した。

 イヴェリアが領民を教育するその場を手伝い、同じく領民の教育を預かる一人として働く彼女には領民は少なからず親しみを覚えている。

 だから、母さんとシーナは食べるものには困っていないし、生活面での不便を感じることも少ない。

 だけど、このバハムルの高原を下り、メルトリクス領の領都シデリアや旧王都で今はエテルナ領の領都エテルナに行くと途端に母さんに対する評判は悪い。

 俺の父で母さんの夫であるドルム・メルトリクスが主人公アルスの影響下で行った数々の蛮行、そして、実兄のジモン・エターニア前国王が王命で貴族の娘を差し出させてはアルスの手に汚され、殺され、捨てられると言った行為を重ねた所為で、領民からの反感が強かった。

 今は新興国ながらバハムル王国の王となった俺の母親だからと許されている部分はあるけれど、社交の場で母さんが貴族たちの輪に加われるほどの許しを得たわけではない。

 当初はフィーナもそうだったのだが、彼女はバハムル王国の建国に奔走し、帝国との国交を樹立した立役者の一人として受け入れられている面があった。

 彼女は信頼を足で稼いだのだ。

 そんなようなことをやんわりと話していたら母さんは表情を一変。


「それは同じエターニア王家の出として見習わないとならないわね」


 俺は失念していた。

 母さんは曲がりなりにもエターニア王家の元王女。

 当然、王立第一学院に通いそれなりの成績を修めていたはずだ。

 つまり、何かしらの職能ジョブを持ち、技能スキルを保有しているだろう。

 それもバハムルの森のダンジョンで戦えるほどでないにしろ、バハムルの森を単独で歩き回れるほどの強さは持っている。

 エターニア王家はそうやって鍛えていたはずだった。


「考えてみたら私、バハムル王国の国王であるシドルの母。王の母として恥じない女であるべきだったわね」


 この瞬間を境に母さんの目に力が籠もる。


 俺の誕生日を祝う席は恙無く。

 誕生日の席で戴いたものの確認をする。


──十七歳。


 ゲームの正規のエンディングを迎えたなら俺は十七歳を迎える前に死んでいた。

 でも、もう一つのエンディング。

 スタッフロールすら流れないただのバッド・エンドに辿り着いたのだと俺は考えている。

 凌辱のエターニアシリーズでただ一つ。

 ゲームオーバーの表記で終わった、その先を歩み始めたのだと思いたい。


 それから、主人公アルスの女たち──ヒロインたちは本来迎えるべきだったハッピーエンドから程遠い状況になっていることをフィーナから聞いている。


 エターニア王国の各所に存在する聖神を崇める大教会の本部に籍を置いている聖女ハンナ。

 彼女はエターニア王国の王都エテルナの王城の後宮の一室に軟禁。

 その処遇はフィーナが預かることになった。

 ハンナの状況はフィーナから共有されていて彼女の処遇は今後の課題となってる。

 教会では大司教の地位にある彼女をおいそれと処分をするのはアルスの騒動で聖神や聖女に救いを求める民が少なくないことから憚られていた。

 アルスへの協力をしていた主要メンバーだというのに民からの信奉を集めているのはハンナがアルスだけにかかりきりというわけではなく、数多くの戦地に足を運び、後方での支援活動を惜しまなかったことによるものだろう。

 そんなわけで、ハンナを無闇に処分することは出来ず、アルスの一件を調査するためという名目で軟禁を続け、ハンナとの調査結果を公にすることにした。

 それからハンナの一家を殺害したことを明るみにすると大教会は民からの非難を浴び、その信用は失墜。

 大教会は一端、管理下に置いてハンナは一時的に国外に退避という形を取ってもらうことにした。


 サラ・ファムタウは近衛騎士団に返された後、騎士団から離任。その後、ファムタウ領に戻ったがアルスの修行で滞在したときにアルスの暴虐を黙認したことで住民の不満が溜まっていたのか、それとも、寄り子の貴族が離反したのか、領民が蜂起してファムタウ領主が滅び、寄り子の貴族たちが支配体制を敷いている。

 それを知ったのは、領主を討った貴族からバハムルに遣いを送ってきたからだ。

 それを聞いたカレンは表情を動かすことなく、


「見境なく悪事に手を染めた勇者に肩入れした結果ですよね」


 と、言葉にした。

 アルスの【主人公補正★】が解けてからというもの、少なからず起きていた。

 勇者に協力的だった父さんと叔父もそれは同じだったが、メルトリクス領はトールが領主として着任し、学院で学んだ知識を存分に活かしているそうだ。

 とはいえ、ここでも勇者に加担して重ねた罪を償うために何らかの処罰が必要だったが、父さんと叔父に近しい商人たちもいることから命を奪うことはせずメルトリクス家から放免。男爵に降爵してもらってシデリア市内の貴族街の一角に屋敷を与えた。

 この二人はなかなかアルスの影響が抜けなかったから随分と苦労したけれど、最後は謝罪をして処分を受け入れてくれている。


 それから、エルフのエルミア。

 彼女はフィーナがアルスの屋敷を訪ねたときには既にいなかったそうだ。

 その日は前王がアルスに与えた屋敷を処分するために、そこに謹慎させているルーナとその母親のサレア様、それとエルミアに退去を命じるために伺ったわけだけど、エルミアだけがいなかった。

 エルミアの行方がわからないとフィーナからの報告を受けて捜索を出そうとしたけど、イヴェリアがケレブレスとの念話を通じて彼女がグランデラック湖で入水自殺を図ったことを聞く。

 何とかならなかったものかとイヴェリアに話したけれど、


「ケレブレス様は『あの子の人間嫌いは筋金入りで生真面目な性格だから、自我を取り戻した時点で自分自身を許せなかった』と仰ってたわ。きっとケレブレス様が止めたところで利かなかったろう──と」


 と既にケレブレスとは確認を取り合っていたそうだ。

 彼女は俺を世界樹に招くことに反対して刃を向けるほど、森のエルフの民ということに誇りを持っていたからな。

 遺体を引き上げて届けるかと聞いてもらったけれど、自然に還るのだからこのままで良いという話を聞いたけど、こちらで勝手に引き上げさせてもらって丁重に埋葬させていただいた。


 それから、ルーナとサレア様。

 幼馴染の女の子の一人だったし、お世話になったこともあった。

 その恩や情が少なからずある。

 だから、彼女たちも救えたら良かったけれど、俺からは手が届かなかった。

 せめてものお詫びだと母子で生活するにしても別々に暮らすにしても困らないだけの白金貨と金貨を詰め込んだ袋を用意。

 俺がアルスの邸宅に行こうとしたが「シドルが行くのは良くない。私がエターニア王国の王家の人間としての仕事だから」とフィーナが自ら行くことになった。

 けど、よく考えたら、この状況で俺がルーナに会いに行くことはバハムルの興国に協力してくれたドラン・ファウスラーに対する体裁が整わない。

 俺には彼女たちにお金を人伝で渡すくらいしかやり様がなかった。


 思い返せばもっと良いやり方があったんじゃないかと思うところは当然ある。

 けれど、実際にできたことはそれほど多くはない。


 ともあれ、これで死ぬわけじゃないんだから良い人生を歩んでくれさえすればそれで良い。

 俺との婚約を死ぬほど喜んでくれたルーナと、優しくて素敵だった彼女の母親の人生が良いものでありますように。

 そう願った。


 そうして俺は、俺の右腕に巻き付いて眠るフィーナと俺の左側に覆い被さって柔らかい胸の圧力で若干の痛みを感じさせるイヴェリアの寝顔を見ながら、十七歳までのシドル・メルトリクスという男の人生を振り返った。


 前世で何度もプレイした凌辱のエターニアシリーズ。

 本編は全四作。

 シリーズで唯一のバッド・エンド。

 そのエンディングは


『<主人公>はシドル・メルトリクスに破れ、夢半ばでその生命は潰えた』


 の一文のみで、数秒後にタイトルへ戻っていた。

 この<主人公>の表記は任意に変えられるが初期設定が『アルス』だったな。


 その主人公アルスが居ないこの先はどんな世界に変わっていくのか。

 スピンオフ作品にあった設定とかってどうなるんだろう?

 Ⅳの発売前に何作か出てたけど、大人になった主人公を描いた作品が多く、明らかにⅣのあとの世界を描写したものだった。

 もし、それら──スピンオフ作品の設定がこの世界に生きているとしたら、猫耳美少女とか出て来るのかもしれない。

 それに勇者といえば魔王。勇者がいないけど魔王ってどうなるんだ?

 他にもいろいろあった覚えがある。


──兎にも角にも、俺、こと、シドル・メルトリクスは生き残った。

 俺は生きて十七歳の迎えられた。

 これからも何度も誕生日を迎えて年を重ねることだろう。

 だが、しかし、エターニア王国から引き継いだ領地の多くは疲弊してるし、バハムル王国は新興国で人材が足りてない。

 なので、まずは各都市の復興を目指した国の統治だ。


 君臨すれども統治せず──これを地でいきたいけれど、猫の手も借りたいくらい人が居ないこのバハムル王国。


 これからどうしようか──とあれこれ考えているうちに俺は眠りに就いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る