勇者の称号

深層

 バハムル領は厳冬を越え春を迎えた。

 イヴェリアがバハムルに来て四ヶ月が経ち、ここでの生活は随分と慣れた様子。


「まさか、こんな田舎でお父様に勝る料理を戴けるとは思っても見ませんでしたわ」


 思えば、イヴェリアが初めて来た日。

 一時は修羅場を見るかと思ったが、カレンの手料理を食べたイヴェリアの態度はあっという間に軟化した。


「とっても美味しいわね。王都から離れてもこれほどの美味しい料理を口にできるとは……。カレンは料理の腕が素晴らしいわ」


 美味しい料理は心を和やかにしてくれる。

 イヴェリアの忌憚ない称賛にカレンははにかんで喜んだ。


「王都のお貴族様、それも公爵家の方に褒められると嬉しいです。ありがとうございます!」


 お貴族様というのは平民が貴族を揶揄する時に使われる蔑称だけど、カレンの言葉には嫌味がない。

 カレンが明るく笑顔を向けるものだからイヴェリアも気を良くしたのもあると思う。

 以前までならお貴族様なんて呼ばれたら怒っていたかもしれない。と言うか俺もイラッとはするからな。

 何故かカレンのお貴族様呼ばわりは気にならない。

 お貴族様といえば、身分。バハムル領で貴族と言えるのは俺とイヴェリアだけ。

 カレンは准男爵を継いだとはいえ名誉貴族みたいなもので平民と変わらないのだ。

 何なら騎士爵のほうが貴族に近い。


「王都では貴族は貴族として振る舞い、平民は平民としての義務を全うするものでしょう?バハムル領は王都とは違うじゃない?王都の価値観や常識をここに持ち込んではダメよ。シドル」


 俺が平民との距離が気にならないかを聞いたときに、何故かイヴェリアに窘められた。


 それから領村の開発。こちらは雪が積もってから全く進んでいない。

 冬場は雪が積もって外での作業はままならないから基本的に家に引きこもる。

 バハムルでは収穫した野菜類を雪の中に保管してそれをほそぼそと食べて冬を越す。

 引きこもり生活バンザイ!なんて素晴らしい環境だと思っていたら、天候が良い日に手が開いてると畜産農家の手伝いに駆り出されるわけだ。

 俺ももちろん手伝った。


「代行様。お暇なら外に出ましょう」


 そう言って連れ出される先はいつも牛や羊を飼う農家。

 働きたくなくてダラダラしていたい俺に対して、イヴェリアは何故かこういう時に張り切きる子。

 そんなイヴェリアの手前サボることができずにいたのだ。

 そうして面倒を見ている動物を殺して食べるわけで、俺もイヴェリアもこうしたところはあまり見ないから勉強になったと感謝した。

 そのおかげで肉類は新鮮な状態で通年で食べられるんだよね。

 それと雪の中で越冬する野菜類はとても美味しいということも教わった。


「私、このレベルの料理を食べ続けられるならずっとここに住んでいられるわ」


 イヴェリアにそこまで言わしめるほどの味である。

 それはカレンの料理の腕もあるが。


「バハムルの食べ物は本当に美味しいですから調理の甲斐があるんですよね」

「お父様が料理をするのが好きなのよ。いつかお父様をここに連れてきて、カレンの料理を食べさせてみたいわ」


 カレンの料理は彼女の父親で公爵家の当主であるヴィレル様以上に美味しい。

 だからヴィレル様がここに来たらカレンと料理談義で盛り上がりそうだ。


 バハムルは前述の通り、割と豪雪地域で深く積もる雪のせいで雪をかく以外はあまり家から出ない。

 つまり村全体が暇なのだ。

 そこで、俺とカレン、イヴェリアでバハムルの森のダンジョンの攻略を進めながら、領民の強化を兼ねて腕に覚えのある者や希望者を募ってダンジョンの低階層でのレベル上げを少しずつ行っている。

 数週間もすると高レベルまで育った村人が出てきたので俺たちの手を離れ、今では希望者のみで五階層までの周回を自発的に繰り返していた。


 そうしてようやっと深層の攻略に取り掛かる。

 メンバーに高レベルのイヴェリアが加わったことで食糧の携行量が増え、五十階層の突破を果たせた。

 更に深層に進むと食べられる魔物が居たことで一気に攻略が進んだわけだ。

 現在は七十階層を突破し、概ね七十五階層までを周回してレベリングを行っていた。

 魔物のレベルは概ね七十以上。バハムル領の強化も順調だし、俺たちも順調に成長している。

 今では三人ともレベル七十を越えて熟練度スキルレベルも上昇。

 どのくらい強くなったかと気になってステータスを確認するが、俺が他人の──特に女性のステータスを覗き見すると、性癖とか性感帯とかデリケートな部分まで映り込む。

 それは彼女たちの名誉のために表に出さないでおこう。


───

 名前 :シドル・メルトリクス

 性別 :男 年齢:13

 職能 :なし

 Lv :78

 HP :3180

 MP :14060

 VIT:159

 STR:236

 DEX:236

 AGI:313

 INT:703

 MND:703

 スキル:魔法(火:8、土:8、風:8、水:8、光:8、闇:8)、

     魔力感知8、詠唱省略★、無属性魔法:8、MP自然回復★、

     解錠:8、鑑定★、気配察知★、認識阻害★、房中術★、

     剣術:8、盾術:8、槍術:8、斧術:8、弓術:8、

     棒術:8、杖術:8、体術:8

───

 名前 :イヴェリア・ミレニトルム

 性別 :女 年齢:13

 身長 :163cm 体重:44kg B:75 W:54 H:72

 職能 :大魔女★

 Lv :91

 HP :3700

 MP :21800

 VIT:185

 STR:91

 DEX:91

 AGI:363

 INT:1090

 MND:910

 スキル:魔法(火★、土★、風★、水★、光:2、闇★)

     鑑定:8、無属性魔法:4、詠唱省略:8

     剣術:4、弓術:8、杖術:8、体術:6

 好感度:100★


 ︙

───

 名前 :カレン・ダイル

 性別 :女 年齢:15

 身長 :165cm 体重:47kg B:83 W:57 H:86

 職能 :剣聖★

 Lv :75

 HP :14900

 MP :7500

 VIT:745

 STR:745

 DEX:76

 AGI:301

 INT:375

 MND:748

 スキル:魔法(火:7、土:7、風:7、水:7、光:1)

     無属性魔法:3、詠唱省略:4

     剣術★、盾術:8、斧術★、槍術:6、弓術:2、体術★

 好感度:100

 ︙

───


 空いた時間の大半をダンジョン攻略に費やした。

 バハムルの森のダンジョンは高レベルの魔物が多いから、今の俺達のレベルなら魔物を倒せば倒すほどレベルは上がっていく。

 六十階層以降は十階層ごとに出現するフロアボスを倒す毎に宝箱がドロップして、そこから貴重品やスキル結晶石を入手出来た。

 なお、六十階層のボスを倒して貰ったアイテムは【スキル結晶石:属性魔法】で三人とも習得済みの属性魔法だから不要ということで保管してある。

 七十階層では【スキル結晶石:光属性魔法】が三つドロップしたので、イヴェリアとカレンに光属性魔法を覚えてもらった。

 これでイヴェリアが俺に続く全属性の魔法使いに至った。

 きっと【職能クラス:大魔女★】の影響で光属性魔法の熟練度はあっという間に上がるだろうし、俺なんかあっという間に追い越していくんじゃないか。

 今でも既に魔法の効果に左右する知性INTや魔法防御や状態異常の効果を左右する精神MNDが俺よりもずっと高い。

 カレンなんかはもうステータスとしては化け物じみてるからね。

 俺が武芸でカレンに挑んでも軽く往なされてしまうことだろう。

 この二人を間近で見て俺は、凌辱のエターニアシリーズ最弱のラスボスというのは強ち間違いじゃないといった自覚を持ち始めていた。


 ともあれ、イヴェリアとカレンが光属性魔法を覚えられたのは本当に良かった。

 これで光属性魔法の熟練度スキルレベルを上げていけば魔法で自己回復が出来るから戦闘が楽になる。

 他の属性魔法のレベルを上げれば上位の回復魔法を習得できる。

 それに無属性魔法の熟練度スキルレベルが上がって身体強化や防御魔法の強度も上昇。

 イヴェリアとカレンはゲームの中の彼女ら以上に強くなっているはずだ。


 ダンジョンを周回し続けているうちに季節は巡り、雪が溶け、春が訪れたバハムル領は領民が忙しなく働き始める。

 領民のレベルが上ったからか、ステータスの上昇の恩恵で農作業が随分と捗ったらしい。


 更に時が流れて初夏。

 麦や小麦の収穫時期を迎えた。


 俺はイヴェリアとカレンと三人でダンジョンに入っている。

 現在は八十階層のボス部屋前。


「とても強い魔力を感じるわ」


 イヴェリアが扉に触れて探っていた。

 俺も扉の向こうに大型の魔物の気配を感じている。


「まあ、大丈夫でしょう。十分に休めてますし、食事もしっかり取れてますから」


 カレンの料理の腕のおかげで魔物の肉が美味しく食べられるから、空腹で体力が不足するということがない。

 レベルだって十分に上がってるし、体力も気力も充足してる。

 扉の向こうから押し潰されそうなほどに強い圧迫感。

 緊張感で心臓が早鐘を打つ。

 今の俺たちなら、きっと大丈夫だと言い聞かせて、扉の向こうのフロアボスに挑む決意をする。


「よし。行こうか」


 俺が扉に手をかけた。


「ええ。参りましょう」


 イヴェリアが俺の手に手を重ねる。


「行きましょうッ!」


 カレンも扉に手を触れて三人で扉を開けた。


 目に入ったのは銀色の巨大な竜。

 目が合うなり、強烈な衝撃波に見舞われる。


──危ないッ!


 俺は咄嗟に前に出て空気の断層を目の前に展開した。

 真空派や衝撃波といった風属性の魔法は空気の断層で盾を作ればこちらに衝撃は来ない。

 それにしても強い魔力だ。

 初手がこれ。


 【鑑定★】をするとレベル85のシルバードラゴン。

 【風属性魔法:8】が特徴の魔物だ。


「これドラゴンですよね?食べられるかなー」


 カレンは両手に剣を持って構え、突進する態勢を取る。


「トカゲの魔物はそれなりに美味しかったわね。でも、食べるには倒さなければなりませんのよ?」


 イヴェリアは魔物を食べたことがあるのか…。それもトカゲって……。

 イヴェリアとカレンは同じ目の色でドラゴンを見ている。

 あんなに強そうな銀竜も、彼女たちの前では捕食対象でしかないらしい。

 それにしてもドラゴンでっかい。

 銀色の体躯がとても綺羅びやかで美しい。


 見惚れていたらドラゴンが爪で殴りかかってきた。

 思ったより速いがおおぶりだから避けるのは難しくない。

 このスピードならイヴェリアでも大丈夫そうだ。

 再びドラゴンのターン。

 また衝撃波の類の攻撃だった。

 空気の断層を作ってそれを盾にして防ぐ。


 今度はこっちのターンだ。

 カレンが大剣で殴りかかるとドラゴンは頭や目を守り、爪や尻尾で剣戟を牽制。

 だがカレンが剣で叩いた箇所は鱗が剥がれ皮膚が抉れ血が滲んでいる。

 効いていないわけではない。

 カレンの攻撃が終わって、今度はイヴェリアの魔法が発動。


「ストーン」


 鋭角な槍状の石をドラゴンに飛ばす。


「アイス」


 石の次は氷の槍だ。

 どちらもドラゴンの鱗を破って皮膚に突き刺さって霧散する。


 イヴェリアの魔法でドラゴンが怯んだ。

 次は俺の番だ。

 尖った石の礫でドラゴンの鱗を弾き飛ばしながら剣を突き立てる。

 うまく懐に入れたから腹を抉れた。

 そのまま剣を引き腹の皮膚を割る。


 ドラゴンは鮮血を撒き散らして俺に血が降り注ぐ。


 ドラゴンはまだ生きている。

 俺のターンが終わるとドラゴンが腹から血を落としながら後退り魔法を発動した。


「ぐあああぁぁぁぁぁぁぁああああああーーーーーッ!!」


 咆哮と共に足元の塵がヒュルヒュルと小さく渦巻く。


「避けて──ッ!」


 俺が叫ぶと、イヴェリアは直ぐに反応したが、カレンは避けきれなかった。

 足元から風の渦が勢い良く巻き上がり、身体が真上に吹き飛ばされる。


「いッ痛ったーーーーぁぁぁっ!」


 地面に背中から落ちたカレンは手足が非ぬ方向に曲がっていた。

 身体は血塗れで落ちた場所に血溜まりが出来ている。


「カレンッ!」


 イヴェリアが咄嗟にドラゴンを牽制して、俺はカレンの傍に駆け寄る。


「ごめんなさい。シドル様……当たっちゃいました」

「まあ、大丈夫」


 俺はカレンに上級回復魔法を使う。

 傷は塞がり、折れた箇所は戻ったが俺の回復魔法では失った血までは戻らない。


「骨折や傷口は治せたけど、休んでてくれ」

「申し訳ないです。油断しちゃいました」

「死んでないからまだ大丈夫──」


 俺はカレンの頭を撫でてからドラゴンの傍に向かった。


「シドル!傷が塞がってきているの!」

「わかった。イヴェリアはできるだけ攻撃を止めないでくれ」

「分かったわ。お願いね。シドル!」


 イヴェリアはそもそも【職能:大魔女★】というクラスの恩恵で、6つある属性魔法のうちの5つの熟練度がユニーク相当に達している。

 俺の【鑑定★】で見た時に映る『★』はユニークであることを意味していて、職能についている場合はユニーククラスということである。

 魔法やスキルにも★が付くことがあるが、これも同じでユニークスキル、または、ユニーク相当に達したスキルという意味になるらしい。


 イヴェリアは魔法の熟練度が高いので極大魔法を扱うことはできるが、この場でそれをやるとダンジョンの崩壊を招きかねない。

 それを分かっているから小さな魔法をチマチマと打ち続けている。

 イヴェリアの【詠唱省略】がユニーク相当に達したらまた違ってくるのだが……。


「ストーン」

「アイス」


 イヴェリアは攻撃の手を緩めない。

 シルバードラゴンはその間も、爪でなぎ払い、衝撃波や真空波といった風属性の攻撃を繰り返している。

 俺が前衛に戻ったことでイヴェリアに掠りもしなくなったが、つい先程まではギリギリで避けていたので彼女のローブがところどころ破れていた。


 そうした攻防の最中、再び足元の埃がクルクルと渦を巻き始めた。

 さっきの竜巻がまた来る!


「避けてッ!!」


 俺が叫ぶとイヴェリアとカレンは移動して風の渦から逃れた。

 風の渦は勢いを増して竜巻と化し、空気を強く巻き上げる。

 ビュウビュウと音がけたたましい。


 けど、この技を放ったあとは少しばかり長く硬直するらしい。

 俺は石の礫を繰り返し顕現してシルバードラゴンに射出しまくった。

 パンッパンッと音がすると鱗が弾け飛び皮膚が露わになっていく。

 俺は懐に入り、鱗がなくなった場所に剣を突き立てた。


 燃やすと焦げて食えないよな?


 一瞬頭を過ぎった。


 じゃあ、これだッ!

 剣で抉った傷口に魔法で創った過冷却水を送り込んでやった。

 魔力を強めて体内の温度を一気に下げる。

 すると、シルバードラゴンの血が瞬く間に凍りついて、心臓が止まった。

 俺は剣を引っこ抜いて後ろに下がる。


 鮮やかな銀色の竜は静かに目を閉じてドサリと倒れた。


「倒したわね……」

「ああ、倒したな」

「シドル様、イヴェリア様。申し訳有りませんでした。最初のを避けられていれば……」


 それにしても銀竜シルバードラゴンか。

 こいつは主人公が凌辱のエターニアⅡで挑むダンジョンの中ボスだけど、そこではレベル40なんだよな。

 さっきまで戦ってた銀竜は再生の速度が速すぎだし、魔法の発動時間が短くてビビる。

 ゲームの知識があったから良かったものの、予備動作を知らなかったら俺も絶対喰らってた。

 イヴェリアは魔力をある程度感じるだろうし、俺の言葉に全く疑わないから反応が速かったけど、カレンは聞いて判断して避けているから仕方ない。

 判断するというほんの少しの時間でカレンは当たってしまったんだ。


 八十階層のボス、銀竜を倒したことで奥の部屋の宝箱を開ける。


 【スキル結晶:魔法★】

 【スキル結晶:詠唱省略★】

 【ラストリーフ】


 宝箱は三つ。それぞれ別々に入っていた。

 まだ降りる階段はあるというのに、ダンジョンをクリアしたと思い違いをしそうだ。


「【ラストリーフ】……」


 イヴェリアは呟いた。

 物欲しそうにしているけど、三つあるなら報酬として三等分。

 俺としてはイヴェリアに【スキル結晶:詠唱省略★】を使って欲しいし、【ラストリーフ】はカレンに持っていてもらいたい。

 彼女には死の運命が待っているからだ。

 俺は【スキル結晶:魔法★】が欲しい。これで属性魔法を全てユニーク相当に引き上げられるし、ついでに無属性魔法もユニーク相当のスキルに発展する。

 熟練度のあるスキルは【スキル結晶石】を使っても直ぐに★がつかず、しばらく使い込んでいく内に熟練度が上がってユニーク相当になるんだそうだ。というのはイヴェリアに確認した。


「一人一つよね……」


 イヴェリアは【ラストリーフ】を感慨深い表情で見ている。


「私は【スキル結晶:詠唱省略★】が欲しいけれど【ラストリーフ】には思い入れがあるのよ……」

「じゃあ、私がイヴェリア様に差し上げましょうか?」

「それではダメ。報酬は受け取るべきだし、それに私はシドルから戴けることに意味があるものなの。だから【ラストリーフ】は今の私には不要よ。シドルだって【スキル結晶:魔法★】が必要でしょうしね」


 俺とイヴェリアの考えは一致していた。

 だけど、カレンにとって【ラストリーフ】は価値がわからないし、何ならハズレだと思うだろう。


「カレンは【ラストリーフ】に魅力を感じないかもしれませんが、前衛ですし、何より先程のように避けきれなくて即死するかもしれない場合でも生き残ることができるのよ。私はシドルに貰った【ラストリーフ】のおかげで今をこうして生きているのだから、今のカレンに必要なものだとお勧めすることができますわ」

「イヴェリア様にそう言われると私が持つべきかもって思えてしまいますね。さっきのフロアボスの攻撃に当たっちゃってシドル様に迷惑をかけてしまったので……」

「じゃあ、【ラストリーフ】はカレン。【スキル結晶:詠唱省略★】はイヴェリア。【スキル結晶:魔法★】は俺で分配しよう」

「ええ、それが良いわね」

「わかりました」

「カレンの【ラストリーフ】はブローチ型だけどネックレスにして首に下げられるようにしておくよ」

「それはありがたいです。私、そうじゃないと無くしそうなので」


 こうしてドロップ品の分配が決まり、八十一階の様子を見るために階段を下りた。


 レベル90の魔物がぞろぞろと動いてる。

 倒して食用に出来そうなのは良いけれど、現状では一体を相手にするだけでも厳しそうだ。

 ということで、今回の探索は八十一階層で終えることとなった。

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