第6話
メテルリ――いや、メテルリさん――は俺の目をじっと見ながら、音も立てず、水しぶきも飛ばさずに、ふわりと浮かび上がった。
そして、俺から見てロモルの
ロモルは
だが、
そのことだけが気にかかった。
ロモルと同年代と聞いていたが、メテルリさんの顔立ちはもう少しお姉さん、人間で言えば18歳くらいに見える。
古い西洋絵画を描いた、ブグローだかカバネルだか、そういった画家がかつて描いた、美しい女神や天使のようだった。
癖の強い髪が全身を
それがクジャクの羽や
そして驚いたことに、メテルリさんにはおっぱいがあった。
髪に隠れて突起は確認できないが、ロモルと違い、明らかに2つの大きなふくらみがある。
そんな人、いや人魚が、目の前にいて、俺の目を
「はじめまして。わたしはメテルリ」
メテルリさんは声もロモルとは違う。
「わたしの手が冷たくて驚いた? これはね、寂しいからなのよ。あなたは温かくてうらやましいわ」
「何しに来たのよ、メテルリ」
ロモルが
反射的に振り返ろうとした俺の肩に、メテルリさんの手が乗せられた。
だが、ロモルがすぐに払いのけた。
「帰ってよ。ナオトはあたしのよ」
「そうなの、ナオト?」
メテルリさんに名前を呼ばれて、俺の心臓はドクンッと
「いえ、ロモルのではないです」
「あら、やっぱり? うふふ」
うふふと笑ってかまととぶった感じが全然しないのだから、メテルリさんはすごい。
「おい、ナオト! ちょっとはこっち見ろ!」
負け犬のロモルがみっともなく喚いているが、俺はもうメテルリさんのことで頭がいっぱいだった。
「ねえ、ナオト、わたしを
メテルリさんはそう言って、俺を見上げた姿勢のまま、ゆっくりと目を閉じた。
――これは、キス待ち……!? しちゃっていいのか、会ってまだ5分も経ってないけど!?
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