第3話

[黒川礼奈視点]


 幼い頃から「礼奈ちゃんは可愛いね。将来は絶対美人さんだね」と周囲の大人達に言われて育った。


 その言葉は、小学生までは嬉しかったけど、中学生になる頃には呪いの言葉にしか聞こえなくなった。


 周囲のあたしを見る目が、とても異様になったからだ。

 それに男子も女子も――あたしを外見だけで判断しようとしてきた。


 男子からは告白されたり、あからさまに他の女子より優しくされた。

 下心しかない目を向けられることも多くなった。


 女子からは「礼奈はいいよねー、可愛いから」「本当、美人って何しても許されそうだよね」とか、あからさまにイジメられたり、無視されることはなかったけれど、心無い陰口は沢山言われていた……。


 仲の良い、本当に心を許せる友達なんて――羽美くらいだった。


 だけど、中学は羽美とは別中だったから、本当に地獄だった。


 当時は、毎晩、羽美に電話で泣きついていた。


 そんなあたしを心配して、羽美が同じ高校を受験してくれて……


 高二に進級してからは、余裕が出来たのか気になる人が出来た。


 気になるって言っても恋とかではなくて、純粋に行動が気になる男子というだけだけど。


 その男子は羽美と同じバイト先で働いている柏田要君。

 いつ見ても一生懸命働いていて、しかも何でも卒なく熟してしまう。

 あと彼のしている仕事は合理的で……それなのに凄く丁寧だった……。


 接客も完璧で、きっとこの人はどんな些細なことでも誠実に対応するんだろうな〜と思わせるような、そんな人だった。


 あと、あの他人を全く褒めない羽美でさえ、柏田君には一目置いているみたいだった。

 

 それに「実は羽美って、柏田君のことが好きすぎるよねー」と揶揄うと「馬鹿言わないで……」と顔を真っ赤にして黙り込むのもかわいい。




 だから、ね……。




 あの頃のあたしは……羽美の柏田君への想いを応援しようと思ってたんだよ?



 

 本当に、馬鹿みたいに。


 

 ただ、そう思っていたんだよ……。



 ◇



 皆様、応援や評価をありがとうございます。

 頑張って更新します。

  

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