第4話
バイト終わり。
西へ向かう太陽の背中を追いかけるように、自転車を押しながら歩く。
そんな俺の隣には、まさかの黒川さんがいる。
本当に、どうしてこんなに懐かれたのだろうか?
疑問だ……。
それにしても緊張で手汗がヤバい。
芸能人やアイドルに勝てるほど美人すぎりゅ。
俺の隣で、毛先までよく手入れされたストレートロングの金髪が揺れる。
そして、真夏の暑さを感じさせない涼やかな瞳。
鼻筋の通った高い鼻、柔らかそうな唇。
モデル並みのスタイル。
人目を引く容姿とはこういう容姿を言うんだろうな、と漠然と思いながら――隣から香る、もっそーいい匂いに頭をクラクラさせていると、
「柏田君って羽美と同じクラスだよね?教室では話したりするの?」
不意に、黒川さんがこちらを覗き込むように話しかけてくる。
うわー睫毛なげー、と思いながら首を横に振る。
「そっか、バイト先ではあんなに楽しそうに話してるのにね〜」
んん?楽しそう?
いや、それはない。
あれは、ただ……コアラ女が労働したくないがために俺を利用しているだけだ、と言いたかったが、黒川さんがニコニコと笑っているのでお口をチャックする。
「あーあ、教室でも二人が話してくれていたら、あたしも二組に遊びに行きやすいのに」
いや、さすがに教室でバイト先の延長のような馴れ馴れしい会話をコアラ女とは出来ない。
悔しいが、あの女の人気は本物だ。
俺はクラスの男共から敵視され、村八分になるのは御免だ。
あと、そのことが解っているから、コアラ女もわざわざ俺に話しかけて来ない。
まーラインを無理矢理交換させられてからは、授業中にも関わらず、コアラ女からメッセージが頻繁に送られてくるけどな。
主に、人の悪口か、俺を揶揄って遊ぶか、昼寝用のアラーム代わりにするかのロクでもない三択だけどな。
おおん、三重苦。
あと、面白ネタ動画を送ってきて、授業中に笑わせようとしてくるのだけはやめてほしい。
笑いを堪えて腹筋が崩壊しそうになる。
「いいなー。二人だけの秘密の会話みたいで。あたしもそんな楽しそうなことしたいし」
黒川さんは両頬を膨らませながら、俺をジト目で見つめて来るのだが、美人過ぎると……例えジト目でも可愛いんだな、と見惚れてしまう。
挙げ句、「あたしともさ……ライン交換しようよ?」と今度は上目遣いに見つめられて、俺は困ってしまうのだった。
はぁぁぁ……。
ちょっと待って。
かわええぇぇぇぇぇぇ。
でも、あーた、彼氏持ちですよねぇぇぇぇ。
あと、俺氏、やっぱり野郎全員を敵に回したくないんですけどぉぉぉぉぉぉ。
◇
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