第一章 There is strong shadow where there is much light.

第1話 

 あれから四時間――。


 俺は産業ロボットのように無心で働いた結果、ピカピカになった洗い場と、やっと落ち着きを取り戻したホール。

 

 我ながらグッジョブだと思う。

 マスターや内田さんも俺に向かって、無言で高速サムズアップをしてくる。

 

 俺はそのいいね!の嵐に一礼をする。


 しかし、その後、ふと窓に映る自分の顔を見てギョッとする。

 貧相な顔がさらに貧相になっている。


 たった四時間。

 されど四時間。


 死んじゃう。

 俺氏、高二の夏休みで死んじゃう。


 クタクタ、ヨロヨロになりながら、俺はバイト先を上がろうとすると、唐突に窓際の席に座っていた黒川さんから手招きされる。


 はっ!!まだ居たんか?


 俺は霞む目を擦りながら近づくと「お疲れさま、羽美の分まで大変だったね」と黒川さんが満面の笑みで迎えてくれる。


 ま、眩しい。

 黒川さん、なんか発光するモノでも持ち歩いているんじゃね?と思うくらい、キラキラしていた。


「コアラ……じゃなかった。花茎さんは?」

「羽美、眠くなったから帰るって」


 おおん、自由か……。


 そうか、だからか。

 だからなのか。

 あのスタンピードみたいな客足が、少し緩まったのは……。

 

「羽美も頑張って柏田君を待ってたんだけどね〜」

「いや、別に二人で俺の上がりを待たなくてもいいだろ?」

「はあ?何でそんなこと言うかな〜」


 ぷくぅーと子供みたいに両頬を膨らませる黒川さん。

 

 あー、なんかごめんて。


 はぁ、やれやれ……。

 

 しかし、いつの間に、こんなに懐かれたのやら……。


 俺はガシガシと頭を掻きながら、一週間前の出来事を思い出すのだった。

 



 ◇



 お読みいただきありがとうございます。

 フォローや応援、それに評価まで……。

 本当にありがとうございます。

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