第16話 デートプラン

 たくさん遊んだせいか帰りの電車では皆寝ていた。


(みんな疲れてるんだろうな……)


 俺も寝────れないわ!! この状況で寝れるわけないだろ。


 隣には俺の肩にもたれかかった唯川がいる。なぜこうなったのかというとそれは電車に乗ってすぐに遡る。


「あっ、席空いてる。唯川、座ったら?」


 女子に席を譲り、俺は立っていようとしたが、唯川はありがとうと言って俺の服の袖を引っ張り、席へ座らせようとしていた。


「えっ……日比谷さんと座ったらって思って言ったんだけど」


 なぜか唯川は俺の隣に座らせようとしてきた。


「舞桜ならもう楠美ちゃんと座っているじゃない。だから橘、ここに座りなさない」


 後ろを振り返ると唯川の言う通り、若宮さんと座っていた。ここで、座らない選択肢を選んだら唯川が怒りそうだし、座ろう。


 唯川の隣に座り、しばらく彼女と話しているとうとうとし始めてしまい、そして冒頭へ戻る。


(寝れない……)


 時々、唯川の髪の毛が顔に当たりくすぐったい。横目で寝顔を観察していたが、よくないと思い、すぐに目をそらす。


 電車を降りるとそこで解散となった。みんなと別れ、帰ろうとするとまだその場に残っていた唯川に引き止められた。


 ま、まさか、寝顔を見られてることバレたのか!?


「唯川、どうした?」


「あなたが言ってたデートのことだけど今日の夜に電話で決めましょ」


「あぁ、わかった。9時頃でもいいか?」


 家に帰ってからすぐだと夕食や風呂の時間があるだろうし、その時間帯がいいだろう。


「えぇ、いいわよ。電話待ってるわね」


 俺がかけること前提かよ。まぁ、嫌じゃないんだけど……。





***




 き、緊張する。電話かけるのってこんなに緊張するものだったっけ?


 スマホを持ち、通話ボタンを押すだけで電話はかかるのだが、緊張して中々電話がかけられないでいた。


 目を見て話すことができるのに何で電話で緊張するのだろうか。


 スマホを持つが電話をかけられないこと10分。よしかけようと思ったその時、画面に綾乃と表示された。

 

(ま、まさかの唯川からの電話!!)


 嬉しく思い、電話に出るとやや切れ気味の唯川の声が聞こえてきた。


『橘!!』


「は、はい!」


(何、怖い怖い! 俺、何かしました!?)


『遅いわよ電話。遅くてこっちからかけちゃったじゃないの!』


 怒ってらっしゃる。これは、どう見ても中々かけられなかった俺が悪い。


「ごめん、ちょっと長風呂してて」


『あなた嘘つくの下手よね。女子に電話をかけるのが緊張するとか思って中々かけることができなかった……違う?』


 ば、バレてる……。唯川さん、あなたはエスパーですかね。


「いや、合ってます……」


『そうだと思った』


 好きな人に電話かけるのって緊張するんだよ。唯川にはわからないだろうけど。


『じゃ、デートプランを教えて』


「へっ?」


『何がへっ?なのよ。あなたが提案したデートなのだからどこに行くかは当然あなたが決めるのよ』


 デートプランか……好きな人とどこかに行きたいっていうのはあるけど、果たしてそれが唯川にとって楽しい場所かわからない。

 

「プランは、楽しみにしといてくれ。その方が楽しみが増えるだろ? 集合場所は駅前、時間は10時な」


 今のところノープランだが、電話を終えたらすぐに考えよう。


『わかったわ。楽しみにしてるわよ、橘』


「あ、あぁ……」


(何があぁ……だよ! ノープランなのに)


『じゃあ、お休み』


「うん、おやすみ……よし、考えるぞ!」


 電話を切り、俺はまず友人に相談することにした。





***





「デートか……」


 ふふっと小さく笑い私は、クッションを抱きしめてヘッドへ寝転がった。


 橘に告白されて、助けられた日から話すことが増えた。彼と話す時間は、楽しくてもっと一緒にいたいと思ってしまう。


 楠美ちゃんが彼と仲良くしているのを見て私は間違いなく嫉妬していた。取られたくない、そう思っていたのだ。


(私、橘のこと好きなのかな……)


 ここ最近、思っていても気のせいだと思っていたこと。誰かを好きになったことがない私にはわからない。


 これが恋なのかそれとも橘ともっと友達として仲良くなりたいのか……。


 翌日、舞桜に相談しにいくとすぐに答えは返ってきた。


「恋だと思うよ」


「やっぱりそうなのかしら……」


「んー、どうなのかは綾乃にしかわからないけど、気になって、誰かに取られたくないって思うなら好きなんじゃないかな?」


 私が橘のことを好きに……。けど、そうだとしても橘のことは一度振ってしまっている。一度振った相手に告白なんてしてもいいのだろうか。


「か、仮によ……私が橘に告白するとして一度振った相手に告白ってしてもいいのかしら? 私、前に橘に告白されたのだけれど……」


 舞桜にそう言うと彼女は告白されていたことに驚いていた。


「告白されたんだ……。けど、その時は好きじゃなかったんだからそんなこと気にしなくていいんじゃないかな?」


「……けど、橘はもう私のこと好きじゃないかもしれない」


 告白した時は好きでも今はもう橘は私のことを好きではないかもしれない。そう思うと自分が橘のことを好きかどうか考えなくてもいいんじゃないかと思えてくる。


「そんな誰だって告白する時は相手がどう思ってるなんかわからないものよ。綾乃は、好きな人に思いを伝えず、他の人に取られてもいいの?」


「そ、それは……」


「橘くんが他の……例えば楠美ちゃんと付き合いだしても綾乃は何とも思わない?」


(橘と楠美ちゃんが……?)


 2人が楽しそうに一緒にいるところを想像してみるが多分現実にそんなことが起こったらモヤモヤして見てられないと思う。


「私は……」




***


 


 翌日。俺は若宮さんと一緒に景色が綺麗な展望台に来ていた。


「今日は、ありがとう……」


「こちらこそ誘ってくれてありがとう」


 若宮さんから誘われるなんて思ってもなかった。今日の若宮さんはやけに積極的だったのが気になった。


 隣にいる彼女を見ると彼女もこちらを見ていて目が合った。すると、彼女は口を開いた。


「橘くん、今日は伝えたいことがあるの」



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る