第15話 何あれ、可愛すぎない!?

「あっ、2人ともここにいたんだ……」


 唯川と2人で食べているとたこ焼きを買って持っていた若宮さんが来た。


「楠美ちゃん、ここ座ったら?」


 3人分のイスがあったので唯川は、自分の隣に若宮さんを座らせる。


「うん、ありがと……」


 最初の頃と違って唯川と若宮さんは、仲が良くなったように見える。


「たこ焼き美味しそうね」


「うん、美味しいよ……」

 

 唯川は、若宮さんが食べているたこ焼きがほしいのか先程から何度も彼女の方を見ていた。


「1ついる?」


 若宮さんは、唯川の視線に気付き、たこ焼きを1つ箸で掴んだ。 


「えっ、いいの?」


「1つだけなら……。あげる変わりに綾乃ちゃんのポテトほしい」


「どうぞ」


 唯川は、1つポテトを手に取り、彼女の口元へ持っていく。それを若宮さんは、手を使わずパクっと食べた。


「美味しい……綾乃ちゃんもどうぞ」


「ありがと」


 目の前に美少女2人が分けあっている姿を見て俺は、癒されていた。


「橘も食べる? 1つぐらいならいいわよ」


 カレーを食べる俺に唯川はポテトを1ついらないかと聞いてきた。


 にしてもこんなに食ってるのに1本しかあげないって……。全部食べきれるのか心配だが、パフェを2つ食べた唯川のことだ。全て食べられるのだろう。


「ありがと。じゃ、1つもらうわ」


 唯川と若宮さんが美味しそうにポテトを食べていたので俺も食べたくなっていた。


「美味しいけど塩辛くないか?」


「そうかしら? それが美味しいと思うけど」


「私もちょっと塩多いなって思ってた……。ところで、食べ終わって少し休憩したらみんなで水中バレーしてみない?」


 若宮さんは、水中バレーをしている人達に視線を向けて俺と唯川に提案した。


「してみましょ。橘ももちろんやるわよね?」


 唯川は俺にそう尋ね、焼きおにぎりを食べ始める。


「うん、やろっかな。空達も誘おう」




***





 場所取りしていたところを全て片付け後の時間はみんなで水中バレーをすることになった。


 ボールは空が持ってきてくれていたのでレンタルせずに済んだ。


「えっと、普通に水中バレーする?」


 日比谷さんがそう尋ねると紬がハイハーイと手を挙げた。


「せっかくだし、ボール落とした人は、好きなものとか自己紹介的なのしようよ」


「いいわね。まだみんなそこまで相手のこと知らないもの。いいと思うわ」


 紬の提案に反対する人はおらず水中バレーは始まった。


「いくよー楠美ちゃん!」


 日比谷さんは若宮さんにパスしたが、彼女はスカッとからぶりする。


 沈黙が続き、若宮さんは落ちたボールで顔を隠した。


(あっ……か、可愛い……)


 若宮さんは、唯川とはまた違って小動物的な可愛さがある。


「何あれ、可愛すぎない!?」

 

 紬は、若宮さんを見て、隣にいる唯川に共感を求めていた。


「そ、そうね、あの仕草で男何人か落とせるわ」


 唯川も若宮さんのあの姿に心やられたそうで可愛いと呟いた。


「楠美ちゃん、今のはたまたまよ。次、回ってきたときは必ずできるわ。ボールを落としたから楠美ちゃん、お願いできる? 何でもいいよ」


 若宮さんは、ボールを落としてしまったため自分のことを何か1つ言わなければならない。


「えっと……趣味は読書と御朱印集めです」


「御朱印集めってあれだよね? 神社とかでもらえる」


 紬がそう言うと、彼女はコクりと頷いた。


「うん……神社巡りとか好きだから集めてるの」


「楠美ちゃん、結構集めてるって前に言ってたよね、また見せてね。次は綾乃から」


 若宮さんは唯川にボールを渡し、彼女からスタートする。


「えぇ、わかったわ。橘、行くわよ」


「えっ、あっ、うん」

 

 唯川に名前を呼ばれて構えていたが、パスではなくまさかのアタックだった。


「うぉ! 何で打ち付けるんだよ!」


「パスを繋ぐゲームとは言われてないわ。だからアタックもありなの」


「いやいや、そんなこと言い出したらみんな負けるわ! パス繋ごうよ!」


 これは、チーム戦の試合ではない。だからこそパスを何回か繋いでいきたいものだ。


「はいはい、2人ともケンカしないの。落とし合いもいいけど、目標回数を決めてパスは何回か繋ぎましょ。取り敢えず、橘くんは、落としちゃったからお願いできる?」


 日比谷さんが俺と唯川の間に入ってくれたおかげで落ち着きを取り戻せた。


「何でもいいんだよな?」


 隣にいる紬に尋ねるとコクコクと縦に首を振った。


「うん、趣味とか好きなものとか。あっ、ここで公開告白しちゃう? 実は……みたいな感じで」


 紬は、俺にそうコソッと言ってきたが、ここで告白なんてできるわけないので却下した。


「そうだな。得意なスポーツは、バスケで、ここ最近の日課は、朝早起きして勉強することかな」


 そうみんなの前で言うと紬から突っ込まれた。


「凄い真面目だよね、良太って……。もっと趣味とかないの? ねっ、気になるよね? あやのん」


 紬は、唯川に共感を求めるように尋ねた。すると、彼女は小さく頷いた。


「す、少しだけ気になるわ。教えてくれないかしら」


「趣味は、バスケかな。動くのわりと好きでさ」


「へぇ~、バスケ部?」


「残念ながら帰宅部だ。唯川は?」


「何部に見える?」


 ん~、そうだなぁ~。運動得意そうだし、入っているとしたらバレー? いや、もしかしたら文化部かもしれない。


 文化部としたら軽音楽部、茶道部とあるが、唯川が、入っている感じはしない。


「わかった、ソフテニだ!」


「残念。私も帰宅部よ」


 あっ、一緒だった。帰宅部ってことは、放課後はフリーってことだよな。帰り、誘ったりしたら唯川は一緒に帰ってくれたりするのだろうか。


 俺と唯川がしばらく話していると全員から視線が来ていることに気付いた。


「2人って仲いいよね~。私達に内緒で付き合ってたりして」


 紬は、ニヤニヤしながら聞いてくる。


「してない。唯川とは友達だから」


 間違ったことは言っていない。けど、唯川がこちらを見て頬を膨らませていた。


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