第3話 助けてくれたお礼に
唯川に告白して振られ、そして困っている彼女を助けた。そして今日、放課後に何があるかわからないが誘われた。
失恋してこの恋を諦めようとしたが、彼女と話しているとやっぱり俺は彼女のことが好きなんだなと思い諦めきれない。
放課後、彼女に言われた通り、昨日、唯川を呼び出した空き教室の前の廊下に行った。すると、彼女が先に来ていた。
唯川は、自分より先に来てなかったら『遅い。女子を待たせるとかどういう意味かわかってる?』とか言って腕組みをして待っていそうだと勝手に思っていたが、彼女は窓から外を見て待っていた。
「唯川、ごめん。待たせたよな?」
「別に、私もさっき来たところだから。さっ、行きましょ」
そう言って彼女は階段を降りて行く。
「い、行くってどこに?」
置いていかれないように彼女の後に階段を降りていく。
「それは到着してからのお楽しみよ。あなた、甘いものは好きかしら?」
「好きだけど……」
「なら良かったわ」
着いてからのお楽しみといいつつ彼女の今の質問で今からどこに向かうのかは察することができた。
そうして着いた場所はカフェだった。こういうところって男女2人で来たらデートみたいだな。
店内に入り、メニュー表を見ていると目の前に座る唯川は口を開いた。
「好きなの選びなさい、私が奢るから」
「えっ? 俺、奢られるようなこと唯川にしたっけ?」
ま、まさか、ケーキ奢ってやるからその恋諦めろって遠回しに言われてる?とおかしなことを考えていると彼女は俺の質問に答える。
「昨日のお礼。助けてくれたから」
「えっ、あぁ……礼なんていいのに」
「私がこうしないと気が済まないの。だから奢らせて」
「あっ、はい……」
これ以上、でも……とか言い出したら彼女が怒りそうなのでお言葉に甘えて好きなケーキを選ぶことにした。
そんなに高くない1番安いケーキを選ぼう。メニュー表を見ていると彼女がトントンとあるケーキを指差した。
「これ、美味しいわよ」
「えっ?」
「悩んでそうだったから私が選んであげようかと思って」
どうやら安いケーキを探す=どれにしようか迷うと思われたようだった。
「それが美味しいのか?」
「えぇ、ミルクケーキが1番美味し──って、何笑ってんのよ。やっぱ奢らないことにしようかしら」
「誤解だ。唯川ってそんな顔するんだなって思っただけだ」
「それは悪い意味かしら?」
「いやいや、意外な一面的なものが見れて良かったなと」
「そう……。意外な一面が見れて良かったわね」
悩んだ末、俺は唯川はオススメのミルクケーキを頼み、彼女も同じものを頼んだ。
待っている間、俺と唯川は一切会話をせず注文したものが届くまで沈黙だった。
話題が無さすぎる。そういや、俺って唯川のこと好きだけどそう言えばあんまり彼女のこと知らないな……。
「お待たせしました。ミルクケーキです」
テーブルに並べられ、唯川はニコニコしながらフォークを持ちいただきますといって先に食べ始めた。
(本当に好きなんだろうな……)
「橘、食べないの?」
「えっ、うん、食べるよ」
「私が好きって言うんだもの。橘もほっぺた落ちるぐらい美味しいって言うはずよ」
いつから俺と唯川の味の好みが一緒みたいになってるんだよ。
唯川は甘党な感じがするが、俺はあんまり甘いもの好きでは───うまっ!
1口食べると口の中に甘い香りが広がった。これは唯川が言った通り、ほっぺたが落ちるほどの美味しさだな。
「ふふん、美味しいでしょ?」
なんで唯川が作ったみたいになってるんだよ。けど、本当に美味しい。
「あぁ、美味しい」
ケーキを完食し、後はセットで頼んだ紅茶をゆっくりと飲む。
「そう言えば、日比谷さんが言ってたけど男嫌いなのか?」
「人によってよ。下心見え見えな男が嫌いなだけ。橘は……まぁ、話しやすいし、嫌いじゃないわよ」
唯川の顔を良くみるとほんのり顔が赤い気がした。
(なにこれ、もしかしてデレ!?)
「あの、昨日はありがとう。私のこと好きって言ってくれて……気持ちには答えられないけど嬉しかった。私、全然知らないから……もし良ければ教えてほしいの……橘のこと」
告白してきた振られたけど、告白をしたのをきっかけに彼女は俺のことを知りたいと少し興味を持ってくれたってことだよな。
自分も唯川のことを知りたいと思っていたので俺は頷いた。
「うん、いいよ。けど、俺が一方的なのもあれだし唯川のことも教えてくれ」
「うん……」
少しずつ彼女のことを知り今より好きになって、彼女が俺のことを少しでも興味を持ってくれるまで俺は彼女に好きだとアピールする。
「ところで橘は私のどこが好きなの? 私なんていいところどうせ外見だけなんでしょ?」
周りから可愛いと言われ続け、唯川は自分のいいところに気付けていなかった。
「確かに唯川は可愛いし、どこが好きかって言われたら俺も可愛いところって言うかも。けど、俺は優しいところが1番好きかな。他にもあるけど言い出したら切りないかも」
「優しいって……私、あなたに優しいことなんてした覚えないけど」
「好きって気付いたのは去年の秋かな……唯川は忘れてるかも知れないけど、俺、唯川と一度だけ話したことあるよ」
「嘘……いつ?」
「文化祭の時で舞台上で演劇する前の舞台裏で」
俺がそう言ったが、唯川は覚えていないようで思い出そうと必死だった。
「……ごめんなさい、あの時バタバタしていてあまり覚えてないわ」
「いいよ、思い出せなくても。あの時の唯川には感謝してる」
「……感謝とか言われたら思い出すなって言われても頑張って思い出さないといけないじゃない」
そう言って彼女は紅茶を飲んだ。
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