第23話 もう一回♡
太陽が見えない灰色の空、気づけば私は現実に戻されていた。しかし、依然として涙は止まる気配もなく零れ続けている。複雑な感情、息苦しさ、そして頭痛がしてくる。忘れてはいけない大切な人を忘れていた。苦しい、辛い、苛立ち。あらゆる感情が私を私の心を刺してくる。痛い、だけどそれが丁度いい。私という存在が誰かに塗り替えられるより、私が私自身を痛めつけて自分色で塗り潰すほうがいい。
私は立ち上がり空を見上げる。先程と違い一瞬にして空は黒い雲に覆われ太陽が塗りつぶされていた。私の心を映し出しているかのようで少し憂鬱な気分になる。あの頃と同じ光が一切ない希望のない虚ろな目みたいで。
「......動く的ちゃん?」
声が聞こえ後ろに振り返ると不思議そうに私を見つめるツキさんの姿があった。憎悪の感情は身に纏ってはなく代わりにどことなく妖艶な雰囲気があった。昨日に比べツキさんを見ても恐怖は感じない。恐怖を感じないからこそ何度も見てしまう。それほどまでに魅力を感じる。
「何見てるのかな動く的ちゃん?」
「い、いえ......何も見てないですっ...!?」
ツキさんは微笑みながら私に近づく。その表情がイタズラっぽくてどこか色っぽく感じる。そんなツキさんを見ていると私の奥底にある何かが疼いて変な気持ちになってしまいそうになる。動悸が激しくなり身体が熱くなる。身体がビクつき脚が震え、ハーハーと息が漏れる。
『だ、だい......うぶ?』
声がきこえる。しかし何を言っているのかわからない。身体が異常をきたし色々なところがおかしくなっている。視界はボヤけ声は曇っているかのようにきこえてくる。明らかに身体がおかしい、なのになぜだか笑いが出てくる。何も面白くも楽しくもない、言うのであれば辛い、そして苦しい。そう思った頃にはもう遅かった。
「えへへ......美味しそう♡」
私の理性のりミットは完全に解除され、狂っているかのように涙を零し笑いながらツキさんに飛びかかる。
「動く的ちゃん!?ま、待って...落ち着い......にゃっ...!?」
抵抗するツキさんを無視し首筋に噛み付く。可愛らしい声がツキさんから出ているが
そのまま欲望のままに血を吸い上げる。
「ツキさんの血美味しいです......あむっ...!」
「や、やめて...変な気分になるから......!」
ツキさんは肩を押して離そうとするが血を吸われているせいか全くもって力が入っていない。それでも必死に抵抗しようとしているので首筋を噛む力を強める。
「イっ......!?」
「ふふっ...可愛いですね?」
私は笑みを浮かべながらそう言い再び噛み始める。噛んだり血を吸ったりした時のツキさんの反応が可愛くてやめられない。怯えている表情、蕩けている表情、全てが私の心に刺激される。愛おしいからこそイジメ甲斐がある。
私は血を吸うのをやめ首筋から離れる。ツキさんは顔をを蕩けさせ身体をビクつかせてる。目からは涙が零れ落ちている。かわいそうなことをしたかなとは思うがそれ以上にもっと虐めたいと思う気持ちで心が昂ぶる。
そんな昂ぶる気持ちのままに私は拳銃を取り出す。安全装置を解除し引き金に指をかける。ツキさんは気づいている雰囲気では到底ない。
だからこそ目を醒ましてあげなきゃね?
私はそのままツキさんのお腹に突き立て、引き金を引いた。
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