第20話 心配

 私はシノアさんに拳銃を取り上げられハグされている。シノアさんの匂い、感触、体温を感じる。シノアさんがいるということが実感できて気持ちが落ち着き、視界が明るくなったような気がする。

 

 「モエちゃん...何しようとしてたの......」


 「も、もちろん...この世から去ろうとしてました......?」


 シノアの私を抱きしめる力が強くなる。少しばかり苦しいが心配しているのがよく伝わる。少し嬉しいようで申し訳ない、そんな気持ちが私のなかで駆け巡る。心配されるのが何故だか少し心地よさがある。


 今までで味わったことのない感情の味に沼りそうで中毒になってしまいそう。何か危ないことをするだけで心配される。それによって自分に存在価値があるんだという悦に浸かれる。ただただ存在価値があるというのが認められたいだけなのかもしれない。私に限らず全ての人が。


 「二度とそんなことしようとしないで。しようとしたら許さない」


 シノアさんがそう言う。その言葉はどこか暗い雰囲気を纏っているかのようで恐怖を感じる。だけど、恐怖を感じたのはシノアさんだってそうだ。本当かどうかはわからないが仮にも私のことを好きになっているシノアさんの前から消えようとしたら恐怖を感じるのは必然。きっとそれが今回のような出来事のことなのだと言える。

 

 だけど恐怖は常に感じている。だからこそ生きていることを実感、確認することができる。

 

 「......わ、わかりました...でも、これだけは約束してください。私のそばからいなくならな

 いで」


 私は強くシノアさんを抱きしめる。

 

 「勿論だよ。だけどモエちゃんもいなくならないでね...」


 私はそっと頷きながらシノアさんの胸元に顔をうずめるのだった。



 

 



 あれから私はシノアの抱き枕にされ一夜が過ぎた。シノアさんの体温と感触が心地よくてすぐに眠りにつけた。抱き枕にされるのは案外ありなのかもしれない。

 

 そんなことを思いながら私は寝間着を脱いで制服に着替える。この制服の可愛いさにはなれる気がしない。だけど変に色あいとかがダサいよりかはマシ。ただ単にこの制服が似合っている気がしないだけだ。シノアさんに言ったとしても多分可愛いって言われるだけだ。可愛いのは私じゃなくてシノアさんの方なのに。


 「......シノアさんはどうして私の胸を揉んでいるんですか...」


 制服に着替え終えて色々と考えているうちにシノアさんに胸を揉まれていた。私の貧相な胸を揉むぐらいだったら自分の胸を揉んだほうが楽しいと思う。


 「なんでって...もちろん楽しいからだよ!」


 「私の胸よりシノアさんの胸のほうが大きいと思うんですけど」


 私がそう言うとシノアさんは私の胸を揉むのをやめて自分の胸を揉み始める。自分の胸と私の胸を比較するように。


 「確かに私のほうが少し大きいね...?」


 「遠回りに小さいって言うのやめてください...人に言われると普通に心にきます」


 シノアさんは私に笑みを向ける。何故今のタイミングで私に笑みを向けているのかわからない。煽っているのかそれとも哀れみなのか。どちらにしろ普通に失礼だと思う。少しばかり私より大きいからって。別に大きくなってほしいとは思ってないけど。匍匐とか走るときとかに邪魔そうだし。


 「ご、ごめんね......?胸揉んであげるから拗ねないで?」


 「べ、別に拗ねてません......!あとちゃっかり胸揉むのやめてください」


 私はそう言うもシノアさんは胸を揉むのをやめなかった。


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