第18話 暗い世界の私の孤独
きっとこの世界はあの世界と同じ。だけど何かが違う。
目を開けるとそこには無数の薬莢、マガジン。そして倒れているツキさんの姿があった。何故ツキさんが倒れているのか私にはわからない。と言うより、そのときの記憶が全くもってない。忘れているとかそういうわけではない。
何かが私の中にいるようで、蝕んでいるかのようで視界という世界が暗く見える。私という存在その者がこの世界からただただ一人っきりの孤独に閉じ込められている。
「動く的ちゃん。だ、だいじょうぶ......?」
ツキさんが立ち上がって私に近づいてくる。心配そうな表情をしている。きっとその表情は簡単に崩れてしまいそうなほど脆いものなのだろう。
だってそこに恐怖という感情が混じっているのだから。混じっているからこそ恐怖で震えてしまっている。
「な、なんで私を見て震えてるんですか......私ツキさんになにかしましたっけ......?」
私がそう言うと、ツキさんはさっきまでの脆そうな表情から一変して哀しそうな表情へと移り変わる。どこに哀れむ要素があったのだろうか。わからない。わからないからこそそれに恐怖を感じてしまう。
「ごめん......」
「なんで謝ってるんですか...?」
私はそう言うと自分の銃を手に取り、暗い世界の道を歩き始める。ツキさんが何か言っている気がするが気のせいだろう。言っていたとしてもこの暗い世界には響かない。だってこの世界には何かが違うようで違わない何かがある。その違和感が気がかりで、そして暗い。輪郭というものが見えそうで見えない。それは暗い靄がかかっているかのよう。
月照らす今日の夜は実に愛おしい。
私は自分の部屋に戻りベッドの上に座る。シノアさんは既に帰ってきていたようでこのベッドで寝ている。寝ているシノアさんの表情はとても落ち着いていてとても愛しい。私なんかと違う存在、だからこそ私みたいに孤独に閉じ込められて叢雲がかかるような人間になってはいけない。そんな私を好きになるのはもってのほか。だから嫌いになってもらわなきゃ。どんなことをしてもいい。尊厳を破壊、無視したような行為。
「だからね...シノアさん。私を好きなっちゃ駄目ですよ......?」
私はシノアさんの頬に口づけをし頭をそっと撫でる。きっとこの表情を見られるのは今は私だけの特権。いつかの日までに何回見られるかどうかわからないからこそ、今のうちに見ておかないといけない。
「だけどその前に外の空気でも吸いに行こ」
私は立て掛けていた銃を手に取り外に出た。
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