第17話 お返し

 私は自分の銃を手に取りツキさんの所へと行く。ツキさんはあいも変わらず憎悪が滲み出ていた。


 「な、何をすればいいですか...?」


 「じゃあ、動く的にでもなって?」


 何を言っているのか理解が出来なかった。いや、理解したくないに近いのかもしれない。普通人に向かって動く的になれと言うだろうか。そんなこと言う人は私の人生経験の中で誰一人として言う人はいなかった。いや、そもそも人と話してこなかったから言う人以前の問題なのかもしれない。

 

 「何固まってるの?十秒後に撃ち始めるから。十、九、八...」


 私は全力で走り始める。狂っているとしか思えないが、不思議と笑いが出てくる。ある意味私が一番狂っているのかもしれない。


 「さーん、にー、いーち...ゼロ」


 後ろから銃弾が襲ってきた。私はできる限り被弾しないように姿勢を低くしながら走り続ける。


 「はぁはぁ......っ!...んっ、撃ち返さなきゃ」


 私はがむしゃらに銃弾をバラ撒く。しかし、狙いがろくに定まっていないためあらぬ方向へと銃弾が飛んでいく。

 そのうえ、不幸なことに私が撃ち返したせいか銃弾の数がさっきよりも増している。明らかに他の人も撃っている銃弾の数。そのため、体のあらゆるところに被弾しまくる。


 「と、とりあえず煙幕...!」


 私はポーチから煙幕手榴弾を取り出し、安全ピンを抜いて前へと投擲する。投擲した煙幕手榴弾は地面へと着くと数秒後、白い煙を出し回り始めた。

 私はそのまま煙幕の中に向かって走った。





 


 そのまま数分間走り続け、今現在茂みにて隠密をしている。先程まで鳴り響いていた銃声はいつの間にか消えていた。

 その代わり、聞こえてきたのは榴弾砲の砲火音そして不穏な落下音。何故かこちらの位置に榴弾砲の弾が飛んできている。


 「や、やば...離れないと......っ!」


 茂みから飛び出し離れようとしたところツキさんが目の前に立っており、私に銃の狙いを定めていた。

 私はすぐさま銃を構え引き金を引こうとするがツキさんに足を撃たれそのまま体制を崩してしまった。顔を上げるとツキさんが至近距離に来ており、必死に立ち上がろうとするが何故か下半身に力が入らない。せめてもの反抗として銃を撃とうとするが、無慈悲にもツキさんに思いっきり蹴られ仰向けの状態にされてしまう。


 「動く的ちゃん。どうされたい?」


 ツキさんは甘い笑みを浮かべて私の目の前に屈む。その甘い笑みから未知の恐怖を感じ背筋がゾッとする。


 「な、なにがしたいんですか...?」


 「ボコボコにしたい♡」


 「痛みを感じているときの愛しい表情、痛みを感じてるはずなのに気持ちよくなって

 るときの表情......見せて♡」

 

 ツキさんはそう言いながら私に銃弾を浴びせる。銃弾が当たるたび痛みが全身に走る。腕が、脚が、体全身が痛みに支配されているようで、屈服されているかのようで、その背徳感が癖になってしまいそうになるほど気持ちよくて。


 「その表情好き♡もっともっと見せて?動く的ちゃん♡」


 ツキさんは私のお腹の下辺りに銃口を当ててくる。これから起こることを安易に想像することができる。

 

 私のここに銃弾を撃ち込まれちゃうんだ......どうなっちゃうんだろ♡


 想像するだけで銃口を当てられてるところがキュンキュンとしてくる。痛みという名の快楽が。

 

 ドンッ


 銃声と共に弾薬が撃ち込まれる。


 「んっ...!......あっ♡」


 ツキさんは拳銃に切り替えて、馬乗りに私の体の上に跨る。


 「......次はぁ...どこがいいの...この可愛らしいお胸...?」


 「んっ......」


 「それともこのお腹?」


 「あっ......んっ...!?」


 ツキさんは私の耳元で囁きながら言っていったところを拳銃の先でグリグリしながら撃ってくる。

 

 痛い、だけどそれが気持ちいい。だから、お返ししてあげなきゃ♡

 

 「お返ししてあげますね?」


 私はツキさんを押し退け、横腹を思いっきり蹴り飛ばす。ツキさんは横腹を押さえながらうずくまっている。私は笑みを浮かべながらツキさんに銃口を向ける。ツキさんは先程までの表情から一変して恐怖で顔が青ざめている。

 私はそんなツキさんに躊躇いもなく銃の引き金を引く。引き金を引くと同時に赤黒いオーラを身に纏っている銃弾が発射される。発射された銃弾は無慈悲にもツキさんの体に着弾する。ツキさんは痛みを感じて泣いているが関係ない。

 

 マガジン内の弾薬が切れたため、マガジンを交換する。


 「や、やめて......お願いだから...」


 「数倍にしてお返してあげるまで終わりませんよ♡」


 ツキさんは絶望したのか魂が抜けたような顔をしながら言葉にもなってない言葉を呟いている。


 私はひたすらにマガジンが切れるまでツキさんの色んなところに撃ち続けた。

 

 

 

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