第15話 表面上と憎悪

 私は自分の席に座り前を見る。前には楽しげに会話している少女たちの姿があった。

 中でも桃髪ボブのハーフアップの子が逸脱している。見るからに明るい雰囲気を出している。しかし、ほんの少し暗いオーラが出ている。

 

 私とは違い憎悪の感情から出ているものだろう。表面上は明るく振る舞って影では憎悪のこもった言葉を吐いているのだろう。この学園を快適に過ごすのには一番理にかなっているが少しばかし憎悪の感情が人一倍大きい気がする。


 「モエちゃん!話そうよ」


 「う、後ろから抱きつくのビックリするのでやめてください...」


 シノアさんは私の後ろから抱きついてくる。急に抱きつかれたので驚き、私の鼓動が早くなる。

 シノアさんに抱きつかれるとなぜだか鼓動が早くなる。ドクン、ドクンっと心臓が音をあげている。


 「ところでさ、誰を見てたの?」


 「......ま、前のあの子です...」


 私はあの少女に視線を再び向けてそう言う。シノアさんは私の視線の先の少女を見つめると何か考え事を始めた。

 シノアさんの表情はどこか難しくなっている。また、何か独り言をブツブツと呟いている。その間、私は少女のことを観察し続けた。

 相変わらず憎悪の感情が出ていた。しかし、先程と比べて明らかに憎悪の感情が強くなっていた。先程まではほんの少し黒かったのが、今となってはドス黒くなっていた。


 見ているだけでどこか戦慄するような、はたまた恐怖を感じるような威圧感がオーラから溢れ出ている。楽しげに会話をしている少女の表情と合わさってさらに恐怖感が増す。


 「......確かツキちゃんだったかな...?番号が三番だったと思う」


 「...さ、三番......!」


 この番号にはクラス内での強さが表されており、数字が小さいほど強さが増していく。私はというとクラス内で最も弱い三十番である。


 「まあ、私にはモエちゃんがいるし関係ないかな」


 「わ、私...このクラスで一番弱いんですよ......?」


 「モエちゃんは強いし、何より可愛いから」


 シノアさんはそう言うと抱きつきながら私の頭を撫でてくる。心地よいが視線の先にいるツキさんのオーラで心地よさが半減される。

 シノアさんは満足したのか頭を撫でるのをやめた。


 「そろそろ席に戻るね」


 「あ、はい...」


 シノアさんはそう言うと自分の席に座った。私は物足りなさを感じながらも時が経つのを待ち続けた。






 しばらくいや、数分の時が経ち朝のホームルームが始まった。


 「起立、気をつけ。敬礼」


 号令と共に黒板の上にある国旗へと敬礼をする。この国は建国してからまだ数十年の歴史という歴史があまりない国だ。あるとすればあの隣国との戦争だ。

 隣国との戦争により両国双方の犠牲となった人の数は約百万人以上だ。その中でも犠牲となった人の大半は中高生の少女たちだった。


 号令の人が着席と言い私は自分の席に座った。


 すると、教室の扉が開き誰かが入ってきた。きっと先生なのだろう。しかし、身長は身長が低い私よりも低く、ロリ体型だった。


 「今日から約一週間後にある他クラスとの模擬戦に向けての訓練を行ってもらいます。訓

 練内容は皆で考えてね?以上、解散!」


 そう言うとロリ体型の先生は颯爽と教室から退場した。残された私たちは状況が分からず静止していた。


 そんな状態の中、一番に声を上げたのはツキさんだった。


 「と、とりあえず訓練内容考えよー!何か意見ある人?」


 ツキさんは教卓の前に行きそう言う。しかし、私を含め誰も声を上げるものはいなかった。


 


 


 


 

 

 

 

 


 


 

 

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