二章 学園
第13話 甘い時間
月明かりがカーテンの隙間から差し込んでくる。カーテンの隙間から見える夜空はとてもきれいだった。
二度寝したい。でも、二度寝したらシノアさんよりも早く起きれない。それに何かされるかもしれない。
私は体を起こしあくびをする。隣にはシノアさんが寝ている、と思っていたがよく見てみてみると何故かいなくなっていた。トイレにでも行ったのかなと思ったが、シノアさんが動いた形跡がない。また、校舎の方へと行ったのかなと思いはしたが、シノアさんの制服が部屋の中にあり着替えた形跡がなかった。
どこに行ったんだろ......シノアさんのことだからまた何かしているんだろうけどそれにしても何か下半身の方に少し違和感が
掛け布団で隠れている下半身に違和感がある。私は掛け布団を捲ると、そこには私の太ももに抱きついているシノアさんの姿があった。幸せそうにむにゃむにゃと寝ている。可愛い、そして暖かい。人肌は時に心を温めてくれる精神安定剤だ。
しかし、その精神安定剤は毒にもなりえる。過剰に摂取しまくればその分依存と副作用がでる。そうなったらもう終わりだ。
私はシノアさんの体を揺すり起こそうとする。
「し、シノアさん、太ももに抱きついて寝ないでください......」
「......モエちゃんがキスしてくれたら普通に寝るよ......むにゃむにゃ...」
シノアさんが冗談にも本気にも聞こえるような口調でそう言う。きっと冗談ではなく本気でそう言ってるのだろう。
だとしてもどうすればいいのかがわからない。キスをしたらこの悩みは消えるが迂闊にするものではない。
悩みに悩んだ末、私はキスをすることにした。
「......ご、ごめんね......?」
私はシノアさんの顔に近づく。
顔と顔との距離が五センチもない。シノアさんの顔が近い。それに加え、いい匂いがする。私の鼓動は遅くなるということを知らない。
私はシノアさんの唇にそっと自分の唇を重ねる。柔らかい、それに甘い。
シノアさんは驚いて抵抗しているがそんなことは知らない。最初に言ったのはシノアさんの方なのだから。
だからこれはおしおきなんだよ、シノアさん♡
私の体全体に魔力が流れているのを感じる。魔力の流れを感じる度まるで自分が別人かのようになっていくかのようにと錯覚する。
あの真っ黒でドロドロとした鎖が全て別のなにかに置き換わっているような気がする。
私は息が苦しくなり一度唇を離す。
シノアさんはハァハァと息を漏らしている。
私はそんな状態のシノアさんを気にもせず馬乗りになり跨る。私はそのままシノアさんの手首をベッドに押さえつけ再び顔を近づける。
「ま、待ってぇ......モエちゃ...!」
私は再び唇を重ねる。シノアさんの口の中に舌を這いよわせ、シノアさんの舌に絡ませる。シノアさんの舌は抵抗するように絡ませても逃げていく。
シノアさん。抵抗は無意味なんだよ♡ふふ、悲しき最期
私がそう頭の中で唱えた瞬間、シノアさんの舌が私の舌に絡んでくる。
先程とはちがい、シノアさんは自分のことを忘れ私を必死に求めてくる。絡み合う度くちゅくちゅと音がなる。
もっと頂戴、もっと...シノアさんを......♡
リミッターが外れ、お互いがお互いを求め合いどんどん激しくなっていく。
呼吸を忘れてしまうぐらい何度も絡み合い重ねあう。燃え上がる炎の如く、鎮火する気配が一切しない。それどころか勢いは増すばかりだ。
時間の流れが遅く感じる。二人だけの空間、二人だけの世界。鋭くなっている感覚が麻痺してくる。
月明かりに照らされるなか、私たちは深く深く溶け合うのだった。
朝日がカーテンの隙間から差し込んでくる。差し込んでくる朝日が憂鬱な月曜日の始まりの合図のように思えた。
私は起き上がろうとするが起き上がれない。シノアさんが抱きつくような形で私に覆いかぶさっていたからだ。
私はシノアさんを横に寝かして起き上がり、ベッドから立ち上がる。
妙に体が筋肉痛だ。それによく見ると寝間着が乱れている。
私は頭の中でハテナマークを浮かべながら洗面台に向かった。
洗面台の鏡に私が映し出される。寝癖でほんの少しうねっている髪、乱れている寝間着から露出する肩。
そして、首筋に赤いマーク......そうキスマークが私の首筋についていた。
「な、なんで......これって、キスマーク...だよね......」
私は首筋のキスマークに触れながらそう呟く。どうして私の首筋にキスマークがつけられているのかが分からず戸惑う。
私にはそういった関係の相手なんて一人もいない。仮にキスマークをつけてきそうな相手がいるのだとしたらきっとシノアさん以外ありえない。
だとしてもシノアさんは寝込みを襲うような人ではない。
「だ、だとしたら......誰がキスマークをつけたんだろう......」
考える度、真相がどんどん遠のいで行くような感じがした。これ以上考えても仕方がないので私は考えるのをやめ、顔を洗い始めた。
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