第11話 射撃場
昨日と何一つ変わらない訓練場。昨日の出来事を思い出してしまう。久々に感じた銃による幸せ。思い出すだけで体が疼いて求めてしまう。
私は期待を胸に込め訓練場の中へと入っていった。
入って早々ベンチに座っているアイさんを見つける。アイさんも気づいたのかベンチから立ち上がり私の方に近づいてくる。
「あっ、モエさん。おはようです」
アイさんが手を振って挨拶をしてくる。ほんの少し、癒やされたような気がした。
「お、おはよう...ございます......アイさんも訓練場に来て......いたんですね......」
きっと私の声は小さかっただろう。だけどアイさんはそんなことを気にせず笑顔を向けてくる。
「そうなの。でも、今日は昨日とは違って一人。そう言うモエさんは?」
「えっと、銃を撃ちに......」
私がそう言うとアイさんは少し顎に手を当て考え始めた。改めて見ると制服がとても似合っている。この制服を考えた人はいい仕事をしていると思う。でも、まぁ......私には到底似合わないけど......
考えている姿はとても可愛らしく思わず天を見上げてしまう。しかし、すぐに下へと引き戻される。
「も、もしよかったら......一緒に訓練しませんか...?」
私が誘ったのがアイさんにとって驚きのようで瞬きを数回している。
そんなに驚くことなのだろうかと思いはするが正しい反応だと思う。それに私自身も少し驚いている。基本的に私から何か物事を誘ったりなどはしない、というか話しかけることが怖いので誘うことができない。
「うん。一緒に訓練しよ?」
私はアイさんに手を引かれるまま訓練場の中へと入って行った。
訓練場には模擬戦フィールドと射撃場などといった主に二つ利用可能な場がある。昨日の模擬戦では前者の模擬戦フィールドを利用していた。
今日は昨日とは違い射撃場を利用する。射撃場では主に遠くの的を射撃する。純粋な射撃能力だけでは的を撃ち抜くことはできない。そのため個人の魔法の能力も試される。
私は位置に付き銃を構える。隣にいるアイさんも私と同様に銃を構えている。私は片目を閉じ狙いを的に定める。射撃場の中がシーンっと静まる。私とアイさん以外この射撃場にはいない。私は引き金に指をかける。息を呑み、軽くを呼吸をする。
次の瞬間、銃声がこの射撃場に鳴り響いた。
「んっ......あっ......♡」
私は銃の反動で少しばかり感じてしまい声が漏れ出てしまう。
反動、銃声すべてが心地良い。この瞬間だけドロドロの真っ黒い感情の鎖から開放される。きっとこれが幸せ、幸福なのだろう。
感じるたび銃弾が赤黒さと弾速を増しながら的へと飛んでいく。銃弾が次々的へと当たり貫通する。
気づいたら銃弾を撃ちきっていた。
もう終わっちゃった。まぁ、でも感情が収まりましたし......ところでアイさんは......?
私はふと隣のアイさんが気になり見てみると的が次々と爆発していた。
あれが私に当たったらどうなっちゃうんだろう?......えへへ......♡
私がそんなことを思いながら見ていると、撃ち終わったのか銃声が止む。アイさんは銃を担ぐとこちらに振り向き抱きついてくる。
「銃撃つの楽しいね...?モエさん」
耳元で囁かられる。どこか小悪魔らしさを感じるその言葉に思わず胸がギュッとなる。だけど、私の心は未だ黒いまま。どうしたらいいの......ちゃん
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