第8話 模擬戦3

 私は全速力でシノアさんの所へと向かっている。周りには相変わらず木しかない。私はシノアさんに通信を試みる。


 「し、シノアさん......聞こえてますか...?」


 しかし、シノアさんからの返答はない。聞こえてくるのは雑音だけだ。

 それと、発砲音。


 私は発砲音が聞こえた瞬間地面に伏せ、銃を構えた。周りからは一切気配がせず、不気味な静かさにゾッとする。私は立ち上がり周りを確認したのち、再び走り始めた。しかし、私の足に音もなく銃弾が当たる。私は走っている勢いで転んでしまう。足に痛みが生じ、目から涙が零れ落ちる。

 痛い、痛い痛い。


 「うぅ......い、痛いよ...で、でも移動しなきゃ」


 私は立ち上がろうとするが体が動かなかった。


 「モエさん......かわいい♡」


 前からフードを被った子がやってくる。私は必死に動こうとするが虚しく意味がなかった。

 前からくる子に体を触られる。


 「や、やめっ...っあ...んっ...!」


 胸、太もも、お腹、いやらしい手付きで触られる。私は思わず感じてしまい声が出る。


 「かわいい、かわいい♡もっと声聞かせて?」


 私は太ももに数回銃弾を撃たれる。痛い、痛いのにお腹の辺りがキュンキュンしてくる。もっと欲しい、もっと、もっと!


 「も、もっと...頂戴......」


 私はフードを被った子を押し倒し首筋に歯を押し当てる。フードを被った子は息を荒くし、腕を私の背中に回す。


 「モエさん好き、大好き♡んっ...♡」


 私は首筋を噛み血を吸い上げる。美味しい、シノアさんのとは違う美味しさがある。

 

 

 「ごめんね♡......ちゃん......また......会おうね......」


 私の意識は発砲音と共に遠のいていった。



      〆

 





 「はぁ、モエちゃん遠すぎだよ。それに通信繋がらないし......」


 重い銃を担ぎながら不満を口から零す。通信からは何も聞こえてこない、そもそも繋がらない。

 私は少し座り込み、担いでいた銃を隣に置く。

 モエちゃんはかわいい、茶髪でポニーテール、目元は前髪で隠れていてわからないけどあの時見えたあの不安そうな黒い瞳に目を奪われた。そう一目惚れだ。だけど、どこか暗闇を見てる。私が知らない独りの暗闇をモエちゃんは見ている。

 なのに血を吸っている時は完全に欲望を丸出しにしていた。自分の欲望のままに私の血を吸っていた。無性に私の血を求めているモエちゃんはとても可愛かった。


 「ドーン!ってね?」


 私は前に向かって銃弾を放つ。銃弾はそのまま木に当たり爆発する。


 「やっと見つけたわ。シノア」


 前から疲弊しているイルが出てくる。


 「戦えるのかなその状態で?」

 

 「た、戦えるに決まってる」


 イルは明らかに見えを張っていた。その証拠に足元が震えている。


 「じゃあ、撃つね?」


 イルは目を瞑っていた。涙を零しながら。


 ドーンっと発砲音がなる。


 「......っ!な、なんで撃たないのよ......?」


 「撃ったよ?木に向かって」


 木の裏からボロボロのアイが出てくる。少し足を引きずりながら歩いている。


 「......もう降参するの...もう無理......体痛い」


 「そう言ってるけど、どうする?戦う?」


 イルはアイの方を一瞬見た後、


 「降参するわ......」


 そう言い、この模擬戦は私とモエちゃんの勝利となった。


 


      〆





 最初の頃は銃を撃つのに抵抗があった。人なんて撃ちたくなかったし、戦いたくもなかった。私はただただ平和に友達と暮らしていたかった。

 その願いは虚しく散った。


 戦線に送られた。輸送車に揺られながら送られた先は見るも無残な光景だった。そこには数々の動かなくなった人たちが転がっていた。

 私はそこで数々の人を撃った。最初の頃は撃った罪悪感で体が震え恐怖に陥っていた。


 だけどいつしか何も感じなくなった。人を撃つこと、銃を撃つことに何も感じなくなった。


 そして私は銃声が飛び交い、建物が崩れ燃え上がる首都の中で眠った。



      〆




 目を開けるとそこには見覚えのある天井があった。横には銀髪ロングのシノアさんが眠っており、すやすやと寝息を立てて眠っている。

 私はシノアさんに抱きつき再び眠りに落ちた。



 

 

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