第3話 私の本能
「そういえば言ってなかったね?私はあなたを殺したシノアだよ」
シノアさんの発言に背筋が凍りつくような感覚に襲われる。それは恐怖かもしれないし、はたまた未知の何かなのかもしれない。シノアさんの瞳から感じる暗い雰囲気、そして殺意のような何か。それらが複雑に混ざり合い放った言葉に圧をかけている。
私は頭に疑問を浮かべるもなぜだかそれについて深く考えてはいけないような感じがした。
そんな私の様子を見たシノアさんは私の手首を掴み、引っ張るように歩き始めた。どこか余裕がなく焦っているかのように見えるその表情はとても複雑だった。
「あ、あの......ど、どういうことですか?私をこ、殺したって......」
「どういうことだろうね?」
シノアさんからは不思議なオーラが出ている。暗くて禍々しく闇と言っても過言ではない、そんなオーラを身体から出していた。
そのオーラはどこか触れてはいけないような、そして話しかけてはいけない雰囲気を醸し出している。私は恐怖を感じ、手や体が震え始める。
「帰ろうよ、モエちゃん?」
シノアさんに話しかけられ体だが強張る。さきほどまでの雰囲気はなくなっており、切り替えの早さに私は余計に恐怖を感じる。
「モエちゃん?何も返事しないなら本当に襲っちゃうよ?......いいんだね?」
「ま、待って」
私の声は虚しく、彼女の耳に入らない。私はそのままされるがまま床に押し倒された。互いの息が交わるくらい顔が近くなる。
心臓の鼓動が早くなる。私は思わずシノアさんのことを意識してしまう。
「ねぇ、モエちゃん。目閉じて?」
シノアさんに耳元で甘く囁かれる。その声はとても心地良く、つい気が緩んでしまう。
「い、いや......」
私は逃げようと抵抗するがそんな私の行動は呆気なく対応され、シノアさんは私の手首を床に押さえつけ馬乗りになり私の耳元で囁いてきた。
「モエちゃん、おしおきだよ」
私の手首を掴んでいるシノアさんの手にさらなる力が加わる。その瞬間、体全身に痛みを感じる。
「痛い、痛い、いたい......し、シノアさんや、やめっ...んっ......!」
私の口の中に鉄のような味が広がる。私は一瞬口の中の液体が何なのかわからなかった。しかし、やがてそれの正体が血液だとわかるとビックリして離れようとする。だが、手首は押さえつけられ、身体は馬乗りに乗られ動けなかった。
数秒が経ち、この血液が私の血ではなくシノアさんの血だということに気がつく。気持ち悪いなどといった不快感を感じる。それなのになぜだか美味しく感じてくる。高級メロンのような味わい深い甘さ。
中毒性があり、思わずもっと欲しいと思ってしまう。貪欲に、そして強欲に。気づけば頭の中はシノアさんの血のことでいっぱいになっていた。
あの中毒性のある甘さ......欲しい。もっと、もっと。
「欲しい......だからさ、もっと頂戴♡」
私はシノアさんの手を振り解く。そのままの勢いで背中を抱え込み、首筋に近づき歯をたてる。シノアさんが何か言っているが気にしない。
私はそのままシノアさんの首筋を噛み、血を吸う。
「も、モエちゃ...っん......!や、やめ......っあ......ん...!」
シノアさんの血美味しい。とても甘味で濃厚で美味しい。
私はそのまま抵抗がなくなるまで吸い上げた。
少しして抵抗が一切無くなったので私はシノアさんの首筋から離れる。少し体が火照っている。それに加えて、少し意識が朦朧としている。
「あ、あれ......?なんだか眠くなってきた......」
私の意識はそのまま暗闇へと消えていった。
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