第2話 悪夢

 他国に攻められ都市部では銃撃戦が行われていた。兵は主に中高生の少女たちが担っていた。


 交戦してもきりがない。すでに攻められてから約数ヶ月経ち、膠着状態が続いている。他国からの支援はなく、ただただ哀悼の言葉などが贈られてくるだけだった。


 政府は戦争を終わらせるなんてものはどうでもよく自らの保身のため他国へと避難し、堂々と国民を見捨てた。それに加え国外への渡航を禁止した。そのため国内では批判が高まった。




 「政府は国民を見捨てた」 「何のための政府だ」 「自分たちだけぬくぬくと安全圏に   避難するな」 「渡航が禁止?ふざけるな」 「無能政府」




 その結果、政府は国内問わず国外からも批判を受けた。


 しかし、政府はそんな言葉に微動だにしなかった。それどころか政府は拍車をかけるように次の声明を出した。




 「我が国は相手国に対し、資金援助、そして兵器の支援をいたします」




 私たちの政府は相手国に対して支援を行うという声明を出した。政府の国民を完全に見捨てる行動に各国から批難が飛び交った。 


 中には火炎瓶を投げ込む者もいた。




 その結果、私たちは苦戦を強いられた。何万人もの敵兵を前に味方は無残に散っていった。中には目のハイライトがなくなる者や身体のどこかを失いながらも不気味な笑みを浮かべて戦う者がいた。


 そんな政府が出した声明から数日もしないうちに私たちは首都にまで侵攻された。海の向こうからは戦艦に上陸用舟艇、そして空母が。その空母から戦闘機が私たちのほうに向かって攻撃をしてくる。




 私は銃を構え、前方へ射撃を行う。しかし、敵兵の数が私たちの部隊の四倍近くいるためいくら撃ってもきりがない。




 「き、きりがない......ってぐ、グレネード!!」




 気づいたときには敵が投擲したグレネードが私の足元にあった。投げ返そうとするも虚しく、爆発し体が吹き飛ぶ。その間、地雷により脚が吹き飛び泣き叫ぶ者、仲間が戦闘不能になり狂う者や失神する者も現れた。そんなの敵からしたらどうでもよいことで敵はお構いなしに空から爆撃機による爆撃を行い、どんどん味方や建物を崩壊させていく。


 火薬の匂いや血生臭さが辺り一帯に広がる。銃声、そして断末魔が絶え間なく聞こえる。


 吹き飛ばされた私の視界は赤黒く、そして血塗られていた。


 私は腕を動かそうとする。しかし、動かない。いや、腕がなかった。




 「う、うでが......な、い......」




 左腕が綺麗サッパリ失くなっていた。何も感じない。痛いはずなのに、絶望してるはずなのに......なのに、




 「...な、にも......か......ん...じな....い...」


 


 痛みも悲しさも絶望も。何一つとして感じなかった。涙がポツリと出るのに、悲しみを感じない。




 「わ...た..し...な...に....して...た、け......?」




 私の目の前が真っ暗になった。







 「っ!......ゆ、夢......」




まただ。また、この悪夢のような夢を見た。無駄に現実味があるため私は毎回目覚める時、冷や汗と涙が零れ落ちる。


 私は上半身を起こし、左右を見る。すると、椅子に座って寝ている彼女の姿があった。きっと私が起きるのを待っていたのだろう。私はベッドから降りて、時計の時刻を確認する。




 「もう夕方の四時......?起こさないと」




 私は椅子に座って寝ている彼女のところの前に行き声をかける。




 「あ、あの......お、起きてください......」




 しかし、彼女は起きる気配がまったくもってなかった。私は戸惑い始める。体を揺すれば起きるとは思う。うん、でも私なんかが触れてしまってもいいのだろうた?否、駄目に決まっている。触れてしまったら彼女は不快な気持ちになってしまう。不快に感じた彼女が私の、クラスの居場所をなくそうとしてくる。それだけは嫌だ。じゃあ、どうすればいいの?




 「っん......あっ......も、モエちゃん!起きてたんだ」




 私が思考を巡らせているうちにどうやら起きてくれたようだ。私は胸をなでおろし、ホッとする。


 


 


 「あ、ありがとうご、ございます......えっと......」




 彼女は私に微笑みながら首を傾げて見てくる。そんな彼女は私の様子に気づいたのか首を傾げるのをやめ、立ち上がった。


 彼女は少し間を置いたうえで話し始めた。




 「そういえば言ってなかったね?私はあなたを殺したシノアだよ」

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