第1話 暗闇に差し込む微かな光
あれから二分もの時が経ち、私は教室へと辿り着いた。校内は外と変わらず人で溢れかえっている。そんな中、私は自分の席の位置を確認し一人で悠々と自分の席に座り時間が経つのを待ち続けた。周りはみんな誰かと話している。私みたいに一人で座っている人なんて一人もいない。
そう、私は今現在進行形で孤立しているのだ。孤立していること自体に悲しいとか羨ましいなどといった感情を感じない。単純に人間関係が怖いのだ。いつどこでその人間関係が壊れるのかがわからない。わからないからこそ信じたくても本心から信じることが出来ない。
言動や行動を一つでも見誤るとすぐ陰口を呟かれ、孤立。次第にいじめへと発展していく。実際に私が見たことがあるからこそ、変に人間関係を作る必要性はないと思う。人間関係を作らなければ陰口なに一つ言われることはなくなる。
だとしても、友達がいないのは少し寂しい。羨ましいとまでは思わないが友達がいると楽しそうに思える。
じゃあ、私って一体......?
どんなに悲しくなくたって考えるだけで震えや涙が出てくるもの。まさに今実際にそうなっている。
突如としてクラスの人たちからの視線を感じる。ヒソヒソと話している声が聞こえ、さらに涙が目から流れる。私が思っていた通りこのクラスに優しい人はいない。それどころか皆私を見て冷たい表情を向けてくる。
私はこの場の空気に耐えきれず、席を立ち、教室から飛び出す。
怖い、怖い、怖い。私は走る、とにかく走り続ける。あの空気が嫌だから、あの表情が嫌だから。
気づけば私はトイレに着いていた。私はそのまま個室に向かい、ドアノブに手をかけ、開ける。
「ふぇ?」
するとそこには、銀色の髪をした美少女がいた。美少女は目をパチパチとさせ戸惑っている。
「し、失礼しました...」
私はそう言うと、すぐ去ろうとしたが美少女に手首を掴まれ個室の中に引っ張られてしまった。
「ねぇ、私と付き合ってよ?」
彼女は頬を赤らめながら私にそう言う。私は混乱し、静止してしまう。と、とりあえず断らないと。
「む、無理です....か、仮にわ、私とつ、付き合ったって損するだけで、です.....」
私がそう言うと、彼女は私の頭の上に手を置き撫でてきた。急に撫でられて困惑したが、だんだんとそれが心地よく感じ、自然に顔がふにゃけてくる。
「じゃあさ、友達になってよ。モエちゃん」
「ムリです.....」
私はふと我に返り、そう言う。そうだ、どうせ私のことを利用しようとしてるんだ。みんなと同じように私に冷たい表情を向けて影で陰口を言うに違いない。に、逃げなきゃ......
私はドアの方へと振り返り、開けて全速力で逃げ出した。
「私本当に好きなのに、一年前から。あ、あれ?なにか落ちてる......こ、これは...?」
私は教室に戻り、自分の席に座った。私は深呼吸をし、気分を落ち着かせる。すると、後ろから声をかけられる。
「同じクラスだね?これからよろしくね」
私は恐怖を感じる。顔が青ざめ、全身が震えだしているのを密かに感じる。武者震いでも恐怖を感じて震えているわけでもない。
きっとクラスの人たちの視線や人との会話で過度に緊張感を感じたからなのだろう。そのせいか、震えの他に目眩や吐き気、そして耳鳴りがする。
音がぼんやりと、そして曇って聞こえる。
あっ、もうダメかも......
そう思った頃にはもう遅く、私の意識は遠のいていきやがて気絶した。気絶する間際彼女の表情が他の人たちとは違い、私を心配している表情だった。
「も、モエちゃん?き、気絶してる!?」
私は気が付くと保健室のベッドの上にいた。体を起こし、左右を見ると朝の美少女が椅子に座りながら寝ていた。寝顔がとても可愛く、つい見惚れていた。見惚れていると彼女は目を覚ました。私は慌てて寝ているふりをした。
「あれ、モエちゃん起きてたよね?それとも私の気のせい?まあ、確認すればわかるよ
ね?モエちゃんの初めて貰うね?」
私は勢いよく体を起こした。
「やっぱり、起きてたね?ふふっ、かわいい」
私はまんまと騙された。私は再び暗闇に意識を落とす。暗闇、真っ暗な闇へと。
「モエちゃんって......あの事件の子だったんだね?」
彼女は含みのある笑顔でそう言い、頬にキスを落とすのだった。
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