第9話 次回!サキュバスで魔王が手下になりました その1

 結局、ライジンとの行為は水が入ったからお開きに。



『コンコンコン』と言うノック音。



 ライジンはその音を聞き、溜め息を吐いた。


「はぁ〜。……出て、エージ」


 英治朗は、


(誰か知らないけどありがとう)


 と思い、上にTシャツ、下はトランクス姿になり、顔だけをドアから出して、応対。


「夜遅くにごめんよ〜。明日の朝食券、渡してなかったわ〜」


 と、当直のオバさんに言われたので、英治朗は「あはは、どうも〜」と軽く礼を言って引っ込もうとする。






「興が逸れた。素直に受け入れていたら、先代魔王でサキュバスで、次期魔王を契約に出来たのに勿体無い」





 後ろの方で堂々と裸でウロウロするライジンを見たオバさん。


「あら、やっぱり隅に置けないけど、壁と床が薄いから他所でヤってね〜」


 と、どこか嬉しそうに言うので、「あはは、どうも〜」ともう一回言って英治朗はやっとドアを締めれた。




「ったく、注意されちまったじゃねぇか」


「大丈夫だよ。こっちからの音は聞こえない結界張ってるから」


「……うそぉ」


 英治朗は驚く。


 全然気付かなかった。


「魔王ですから!」


 エッヘンと、少し伸びた背丈は英治朗ほぼ変わらない、胸は巨乳に、腰の丸みも膨らみ、スタイル抜群であった。



「良いから服着ろ」



 英治朗はそう言いながら、ライジンが脱ぎ捨てた寝巻きを渡す。



 ライジンはそれを来ながら言う。


「これで判ってくれた?---ボクは君を信じようとしてるの?」


「判った、判ったから、無茶をしないでくれ」


「ん……。伝わったなら良いや、勇気を出した甲斐はあったね」


 少し恥ずかしそうに寝巻きを着るライジンは、また背丈と胸が元に?戻る。



 寝巻きを着終わったライジンはベッドに座り、


「んで、好きな人、居るの?」


 悪戯っ子っぽい笑顔で言う。



 英治朗は少し恥ずかしそうに、「まーな」と言いながら、ライジンを押し退けて布団へ入る。



「ふーん。---そこは真面目なんだ」


「性欲解消のセフレとは違う」


「ふーん。それなら、もし、ボクが性欲解消目的で、気持ちが本気じゃなかったら抱いてくれてたって事?」


「…………まぁ、そうなるわな」


 英治朗は少し間を開けてから言った。



 ライジンも布団に潜る。


「あちゃー、惜しい事をしたけど……。---ボクは本気だから、そんなセフレとかにはならない」


「じゃあ尚更、セックスは諦めてくれ。それ以外の方法での“吸精”は好きにしろ」


「ちなみに、告白は?」


「…………してない。---ってか、付き合っていたかどうかも怪しい」


「ふーん」


 ライジンはそう言いながら英治朗の背中にくっ付く。


「---どこまでシたの?」


「……」


 英治朗は答えない。


「もう、未だ信用して貰えない?」


「………………セックスまではした」


 また少し間を開けて言う英治朗。


 答えて貰い、少し嬉しいのかライジンは次なる質問をする。


「へぇ、そこまでシてから、どうして付き合って無いの?」


「……色々あったんだよ。---過去の傷を抉らないでくれ」


 英治朗は不機嫌そうに言う。


「……ごめん」


 ライジンは謝ったが、英治朗はまた間を開けて言う。


「はぁ〜……。……あの時はお互いの立場があったからな。---駆け落ちの話しもあった」


 この答えにはライジンも驚く。


「マジで?」


「……ああ。だからフラれて、フラれた後も肉体関係は続いた」


 これにライジンはまた気が乗ったのか、英治朗の腹部を触る。


「へぇ、それはセフレって言うんじゃない?」


 次に局部を触る。



「いや、俺は未だ……諦めていない」



 ライジンの手が止まる。


 しばらく間が開く。



「駆け落ちするつもり?」



「それは無理な相談だ」


 英治朗は溜め息混じりに言った。


「じゃあどうして---」


「裏技がある」


「う、裏技?」


「ああ」


「……」


「……」


 また無言が続く。



 それに耐えかねてライジンが尋ねる。


「いや、言ってよ⁉︎」


「言えるか!」


「むぅ!意地悪」


「邪魔されちゃ困るからな」


 英治朗は力強く言った。


 ライジンも負けじと言う。


「じゃあ絶対にそんな事させない!エージをボクでいっぱいにさせるんだから」


「ハイハイ」


 英治朗はライジンが股間を刺激するのを手で払い、遇らう。


「---今日は寝させてくれ。眠い」


「……絶対に逃がさない」


「へーへー。好きにしてく---」


 英治朗がそう言った瞬間、意識が飛んだ。









 朝起きたら既にライジンは居ない。


 しかも陽も高く登っており、完全に寝過ごしである……。



 とは言え、今日から職探しをするので、焦りは無いが、



「朝飯の時間、終わってますね、これは」



 何故か敬語でチケットに向けてそう言う英治朗。


 一旦普段着に……と言っても、Tシャツとジャンバー、綿パンを履いて、戦闘服……と言っても、単なる作業着だがそれを2着分をランドリーボックスに入れて下へ降りる。



 番台でランドリーボックスを渡して、朝食券を返却……。


 そのまま、部屋の鍵を預けて外へ出る際、仕事終わりの当直のオバさんが一言。



「あんた、姉妹を連れ込んでいたの?」



 恐らく、今朝、通常モードのライジンを見たのだろう。


「ああ、同じ人です。特殊体質なんで」


 苦しい言い訳かと思ったが、英治朗自身もそれについては、ライジンから聞いていない。


「あら、そう」


 どうやら誤魔化せた様子である……。



「……朝飯兼、昼飯。---ブランチって奴か」



 英治朗はわざわざそう呟きながら、それを求めて彷徨うのであった。

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