第19話 呆気ない魔王の最期 その3

 衣服を着替え、掃除も終えたライジンは改めて、マーガレットへ問う。


「マーガレットの目的。……寝返って人間族懐柔してから、その後は何がしたいの?」


「ああ。それなんだが---」



 結局、マーガレットの最終目標は、ライジンが魔法で世界を掌握する事だと言う。


 人間族へ寝返ったのはその布石。


 これ以上、魔族に対して敵対はしないと言う。



 それに、マーガレットはライジンにこの場で殺されても、文句は言えないと言う。


 しかし。


「なぁ、殺される前に、エージ。---抱いてくれないか?」


 一種の決意と、寂しそうな顔をしてマーガレットは、ライジンの目の前で英治朗を押し倒す。


 これにライジンは慌てて止めるが、英治朗が衝撃の一言を放つ。





「あ、スマン。今、俺、ライジンに“吸精”され過ぎてEDなんだ」





「…………」



 気不味くなったマーガレットは、そのまま英治朗の上に覆い被さり、抱き付く。



「うわあああああ、こんな未練残して死ねないいいいい。未だ処女なのにいいいいいいいうおおおおお」



 と、今度はいきなり泣き始めるので、ライジンは慌てて言う。



「大声で言わない!それに殺さないから!---利用、させて貰うから!」





 そんなやり取りから、ライジンはマーガレットを配下に置いて手下にしつつ、一時的な友好関係を築くと言う契約を交わした。


 今後は世界的な魔素不足をどうするかを課題とした。


 どの道、魔族領へ行かねばならないが、今は得策ではないと判断。



 魔族領の方で軽い暴動が起きているからである。



 例の難民受け入れで揉めている。


 今、2人が行けば余計に現場は大混乱。


 しばらく様子見がてら、ここで過ごす事となり---。









 3人は現在、仲睦まじく、ギルドで痴話喧嘩をしているのである。


(いや、俺関係無いし……)



 しかも、


「お待たせ」


 水着姿の志和も参戦。



 マーガレットは、


「お、新しいけど、随分と際どくねぇか?」


 志和をマジマジと見る。


「そう?上にTシャツ着てるからそんなに目立たないと思うわよ?」


「まぁ、そうか。下も凄いなぁ……。毛、剃ったのか?」


「……脱毛しちゃった」


 少し恥ずかしそうに言うが、何故か英治朗を見て言う。



「あ、はい」



 真顔の英治朗。



 マーガレットはライジンに、


「お前、そう言えば毛、生えてないのか?」


「む!生えてるし!」


「剃ったのか」


「それ、今訊く?」


「いや、お前も際どいからな?オレなんか剃り残しあるから、そこまではなぁ〜」


 こんな感じの会話のやり取りが始まった。





 この隙に志和は英治朗に近付き、耳元で言う。



「……今日の23時。いつもの場所で」



 英治朗は一瞬ドキっとするが、


「穏やかか?」


 内容の重さを訊く。



「……じゃないわ」


「……判った」



 ライジンとマーガレットには聞かれていない。


 今度は、ライジンが体型のコンプっレックから、巨乳で高身長、体型のバランスの良いマーガレットに噛み付いているのである。



 英治朗はそれを尻目に見つつ、目ぼしいクエストを受けに行く。




 初歩中の初歩。


 薬草採取である。



 英治朗は水着でないが、付いて来ると良いかねない女性陣3人に気を使って……。


 しかし、意外にも3人が付いてこなかったので、英治朗は1人で行くハメに……。


 なので、トボトボと目的地へ向けて街道を歩くのであった。





 途中、一瞬、嗅いだような匂いを放つ人物1名と、その同行者3名とすれ違った。


 しかし、ローブを被り、口元もマスクをしていたので素顔が判らない。



 英治朗は後から気付く。



「石田家か……」



 動きの癖一つ一つを見た英治朗は、自身の一族同胞の名前を言う。




 しかしその怪しい人物4人は止まらない。



 なので、



 英治朗は予め仕掛けていたトラップを発動。


 音も無く倒れる3人。



「お、流石だなー」



 1人は取りこぼす。


 同じ様な匂いのする人物を。



 英治朗は倒れた3人を見る。



「カラクリ忍者か……」



 所謂古来から伝わるロボである。


 英治朗はそれを魔法で燃やす。




「試しやがったな、ありさ師匠」




 英治朗はありさが消えた場所を眺める。



 すると、



「うわ、危ねぇ!」



 風車が飛んできた。


 英治朗はそれを交わす。


「ったく、そんなハイカラな矢文をしないの!」


 虚空へ向かって言う英治朗。



 その風車に付いている手紙を取り出して読み上げる。



「……『23時。一緒に楽しみましょ?♡愛しのエージへ』って……」



 英治朗は何とも言えない気分になる。


「はぁ、年増BBAめ」



 すると、無数の手裏剣が飛んでくる。



「いけね、逃げろ逃げろ!」



 英治朗はそう言いながら、街道をすすむのであった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔法がロストテクノロジーとなった時、再び魔法の覇権が始まる @Minase-Minatsu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る