第18話 呆気ない魔王の最期 その2
マーガレットは堂々と冒険者ギルドに居るが、誰も『魔王マーガレット』と言うのに気付いていない。
英治朗はギルド内のテレビに映る魔王と見比べる。
テレビに映るのは、黒髪ロングの少し吊り目で三白眼。
小柄な体型は和服でその起伏を隠す。
ライジンが放った勇者のボディカメラに映っててた姿同様である。
今、横で一緒にクエストを探す彼女を見る。
先ず髪型と色が違う。
濃い金髪はウェーブが少し掛かったロング。
背丈も英治朗より身長は高い。
体型は巨乳で腹部は筋肉質。
お尻も太もももムチムチ。
唯一の共通点は、基本的な顔付きは全く同じで、肌の色艶も同じ。
おおよそ、誰もがこの女性が魔王、マーガレットとは思うまい。
英治朗も志和から正体を言われなかったら、絶対に判らない。
志和から聞いたのは、テレビや公の場に出ている姿と違うがどちらも本人。
変幻の術でそうしているのも、裏で暗殺をされたり、パパラッチに追いかけ回されない様にする為だとか……。
通常、変幻の術で長時間、そうして変化するとその姿に呑まれて元に戻れなくなったり、最悪、人としての形を保てなくなる場合もある、
それを気にせずやって退けるのがやはり、魔王故の素質だろう……。
(顔付きは同じでも、それ以外が違うと誰も気付かないんだなぁ。---ま、俺も判らなかったけど)
そう思いながら英治朗は掲示板を見るマーガレットを見ていたら、
「ん?どした?---オレ様に見惚れたか?」
ニヤニヤ笑いながら言ってくる。
「エージ、この浮気者」
ライジンは英治朗の左側に立っているので、英治朗の右足を蹴る。
「痛てて!」
「ふん!」
不機嫌そうなライジン。
英治朗は悪態を吐く。
「ったく、暴力女め。---単にお前もそうだけど、よくもまぁそんな痴女紛いな姿でよく彷徨けるなって思っただけだ」
英治朗はビキニ姿のライジンとマーガレットを見て言う。
マーガレットは呆れながら返す。
「んだよ、失礼だなぁ。---ナイトプールって奴だよ。今日はギルドの屋上でそうしたイベントがあんだよ」
ライジンも、
「どうせエージはこんな駄肉女が好きなんでしょ?ボクの貧相な身体より!」
と、何故か怒って来る。
確かに、水着姿の男女が増えて来た。
もうそろそろ寒くなると言う季節なのに似つかない光景である。
マーガレットは英治朗に「今流行りのトレンドだ」と、最新鋭のスマホで色々写真を見せて来る。
そこには楽しそうに写真に写るマーガレットの姿。
誰か撮影者が居るのだろう。
マーガレットの姿と、逆にマーガレットが写している人物、美人でマーガレットに負けないナイスバディで爽やかな感じのお姉さん。
「お、友達か?」
英治朗はそう言ったが、
「ん?いや、よく見ろや」
英治朗はその写ってる女の姿を見る。
「んー……」
英治朗はその写真に写る姿を見て、マーガレットへ尋ねる。
「いや、判らん」
髪色は染めたのか、燻んでまばらなオレンジ色をしてる。
少し厚目の化粧は正にギャル。
「おいおい、よく見ろや。---志和だ」
「「…………………………はぁ⁉︎⁉︎」」
英治朗とライジンはハモる。
「アイツ、今髪色戻してたけど、こん時は荒れててなぁ。---エージ、お前のせいだぞ?」
「……何でだよ」
「ま、自分で考えなー」
現在、3人は仲睦まじくしているが、これには前談がある。
マーガレットがやたら英治朗の寮へ来たがったので、一か八かで案内した。
結果。
居間で大絶賛オナニーをしていたライジンと、マーガレットが顔合わせ。
しかも、先陣を切って部屋に入ってマーガレットは、ライジンが体液で汚した床へダイレクトに足を『ビチャ』っと入れてしまい、更に気不味くなる。
英治朗は後ろからそれを見て、
「あ、うん……。俺にもう“精気”が無いからなぁ」
少し遠い目をして言う。
「ああああああああ⁉︎」
これにライジンは顔を真っ赤にして、部屋の隅へ行き、英治朗へ背を向ける。
「いやいやいや。帰って来るって言うなら連絡して、エージ⁉︎---それにオーラ無さ過ぎでしょ、マーガレット‼︎」
英治朗は「スマン」と短く言う。
マーガレットは、
「おい!どう言う事だエージ⁉︎それにライジンまで⁉︎」
と驚く。
ライジンはマーガレットを尻目に見る。
「ライジンは、エージはボクの恋人」
「はあ⁉︎恋人だと⁉︎」
英治朗は訂正する。
「ライジンが勝手に言ってるだけだ」
「むぅ、ボクは本気なのに……」
不服そうなライジン。
マーガレットは英治朗に尋ねる。
「おい、お前、コイツの正体は---」
「先代魔王。そしてお前は魔王マーガレット」
ドヤ顔で言う英治朗。
マーガレットは項垂れる。
「知ってたのかよ……」
「志和から教えて貰った」
英治朗は出所を言うと、マーガレットは悪態を吐く。
「ったく、余計な事を……」
ライジンは部屋の隅に未だ居るが、
「んで、マーガレットは魔力回復やっぱり出来ない系?」
と、尋ねる。
「ああ。前回の変幻から、元の姿に戻る時にな……。殆ど魔力ゼロになっちた」
「ゼロって、またまたそんな嘘を……」
「いや、マジだ。大絶賛、充電中ってとこだ」
これにライジンは項垂れる。
「今まではさ……絶対に殺してやるって気持ちだったのに、今のマーガレット見てるとどうでも良くなったよ……」
英治朗がマーガレットへ尋ねる。
「……自然回復しかお前は無理なのか?」
これにマーガレットは少しお茶を濁す。
「えーっと、それは……そのー……」
「……んだよ。アレか?」
英治朗は察した。
「……ああ、アレだ」
マーガレットは少し気不味そうに言う。
英治朗は、
「セックスか……」
と、呟くとマーガレットは恥ずかしそうにそっぽを向く。
すると、ライジンは立ち上がり、少し顔を赤くして、
「絶対にさせないよ!そんなエッチな事なんか‼︎」
そう叫びながら、立ち上がり、マーガレットに詰める。
マーガレットも顔を赤くして、
「バカ!大声で言うなよ。わざわざお茶を濁したのに!」
そう叫ぶ。
英治朗は、
「お、ツルツルなのか」
と、パンティを穿いていないライジンのソコを見る。
「ーーーーーー⁉︎⁉︎⁉︎」
ライジンは両手でそこを隠し、その場でへたり込む。
「エージは渡さないから!」
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