第12話 何だかんだと仲が良い? その2

 勇者見習いや量産型勇者の失踪事件が発生している件について。



 勇者希望なのに、希望が通らない、幾度試験を受けても合格が出来ない、勇気になったのに待遇が悪く、時には虐められたり等、不平不満を持つ人物がある日突然、居なくなったり、忽然と消える。



 それがまたある日、魔族側の勇者となって帰って来たと思ったら、寝返った魔王討伐をすると言う構図に、どの国も対応に困っている。



 公安は連れ去りの真犯人の足止めが掴めず、困っているらしい。



 そんな中、『藤堂家』はライジンが真犯人と把握はしているが、捕まえもしなければ、公安にも言っていない。





 理由は簡単。





 公安から一切依頼を受けていないからである。



 なので一切、無駄な干渉や、手出しも口出しもはしない


 もしそれの開示を求められたら法外な値段で売るらしい……。



 基本的に、藤堂家は『把握はするが、内に秘める』と言うスタンスである。


 他の情報もそうだが、膨大且つ新鮮で直ぐに出て来る情報はピカイチ。


 先述もしたが、それをかなりの高値で売る。


 それだけ価値がある。



 そうして富を築いている忍者一族である。



 ちなみに、英治朗が先日会った人物は、英治朗と共に修行をした仲間であり、話しをしやすい相手なので、公衆電話からの呼び出しでも、直ぐに応じてくれた。



藤堂志和しより



 くノ一には少し不便なかなりの高身長だが、実力は折り紙付き。


 英治朗は仲は良い方だとは思っている。


 何度か身体を重ねて一つになった経験があるので……。


 しかし、男女交際をしていた訳ではない、


 常に何となく一緒に居ただけ……。



 そんな少し薄い関係性のせいか、英治朗が抜け忍となったと同時に音信不通に。


 今回の志和との密会は、英治朗を石田家へ引き戻る事を打診されたが、英治朗は何とか断った。


 ---ホント、そう言う自分本意で勝手なところ、ホント大っ嫌い!


 これが例の喧嘩である。


 英治朗は仲直りは無理だろうと思っているが……。









 ---ライジンが放った量産型勇者についての報道はその後、特に無い。


 あれから2週間程経ったが、警戒令が相変わらず解除されず……。





 英治朗は相変わらずその日暮らしをしている。


 街では軽い何でも屋になったので、日雇いで宿賃と飯代を稼ぐ感じになる。



 特にコレと言ってやりたい事が無い。



「と、色々考えたが、俺は魔族領へ行ってみたい」


「そっかー。……それはボクへのプロポーズ?」


「どうしてそうなる……?」


「ん?この戦いが終わったら、ボクは魔族領へ戻るから?」


 ニヤっと笑うライジン。


「……純粋に、世界的な魔素不足の原因をしりたいんだ」


「そっか……」


 少し理由に残念がるライジン。


「でも、まぁ、お前とパーティーは組みたい。先代魔王がパーティーとか虎の威を借る狐みたいで良いし」


「う、うーん。それは理由が間抜けだけど、頼りにされてるなら答えなきゃだねー?」


「んじゃ、ま、仮契約ってところで良いか?」


「もー!そんな事務的に言わないでよー?」


「へいへい。---んじゃ、ライジン。魔族領での魔素不足原因探索に付き合ってくれますか?」


「えへへ〜。うん、一緒に行こう?」



 ライジンが今ではスッカリ彼女面であるが、これには少しだけ訳がある。





 数日前。



「いやぁ、それがよぉ……。---普段からお前に“吸精”され過ぎて、EDなんですわ」



 英治朗が常に賢者モードなのを、ライジンが英治朗に尋ねたら、彼はそう答えた。


 ライジンは一瞬、失敗したと思ったが、英治朗が、


「あー、気にすんな。俺も、『それ位なら良いか』って、徐々にまんざらでもなくなって、拒否しなかったのもあるし」


 そう言ったので、ライジンは引き続き、英治朗を“吸精”している内に『彼女面』になったのである。


 そして、英治朗もライジンの『彼女面』には気付いていないのでもある……。







 英治朗はライジンへ、最近買ったスマートフォンの番号を教える。


「何かあったらコレに電話してくれ」


「うん」


「ちなみに名義は志和だ。変なイタズラすんなよ?」


「……」


「おい、黙るなよ……」


「ふん、いつ仲直りしたのだか。---ま、どうせそんな事だと思ったよ、紐男!」



 ライジンはそう言いつつ、残りのスープを一気に飲み干す。


 英治朗も飲み干し、会計に行く。


 ライジンが全て出すが、



 「んふふ、紐男の特権だから良いんだよ〜?」



(ヤバいなぁ、外堀埋められてる気がする……)



 店から出た英治朗は求人情報誌を見ながらアルバイトを探す。


 最低限、宿賃代を稼ぎながらの生活。



 ライジンは不思議がる。


「頑なにボクを頼らない不思議もさながらだけど、冒険者はしないの?」


「せん」


「へぇ。---何か理由が?」


「まーな……。」



 英治朗はその理由を言う。



「---冒険者登録してても、戦果が今まで無いから、冒険者ランク1のまんまなんだ」


 英治朗は溜め息混じりに言う。


 ライジンは少し哀れみつつ、


「あ、ああ……」


 と、何とも言えない反応をする。


「ま、いざとなったら癪だけどお前を頼る」


 これに今度はライジンは笑顔で答える。


「うん!」


(はあ……。最近、コイツが可愛く見えて仕方無いなぁ……)

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