第2話 突然の出会いとお誘い その2

「けっ、ちょろい人生だったな」



 どこからか発射された、ミサイル攻撃。


 リーダー格の男は「何故だ……」と唖然としている。


 迎撃して、叩き切っても大怪我で済めばマシな方……。



 どの道、この部隊も巻き込まれる。


 恐らく助からない。



 それでも、英治朗はどうにかならないかと、覚悟を決める。


(一か八か、やってみるか?)









 ---へのお誘い。


 どう---?





『それには答えてはいけない。決して』



 大人なら誰もが知り、そして子供へ伝わる伝承。





 英治朗は急に思い出す。




 目の前に何の前触れも無く、現れた少女と向かい合う。





「んだよ、走馬灯か?こんなちんちくりんな女の知り合い、……居たっけなぁ?」



 そう悪態を吐いた直後。



「パールダークソウルへのお誘い、しましょうか?」



「誘いだぁ?けっ、あのミサイルを全部交わし切ったらな!」



 英治朗は銃剣を構える。



「こんなちゃんちゃら面白おかしい格好をした、痴女からのお誘いなんざ、美人局にしか見えんが、あとでひん剥いてみよーっと」



 しかし、英治朗は動けなかった。



 結界がいきなり広範囲で張られたのである。


 ミサイルはそれに当たって爆発。



 よく見ると、少女は天へ向かって片手を上げている。


 恐らく、結界を張ったのは彼女。


 そうとしか考えられない。



 ドヤ顔で英治朗を見て来る……。





 ミサイル攻撃が止み、落ち着いた所で英治朗は少女に近付く。



「こんにちは、セクシーなお嬢さん。こんなお肌の露出はこの場に相応しく無いですよ?」


「うわ、好きでこんな格好してる訳じゃないのに、いきなり失礼だなー⁉︎」



 英治朗その少女へ声を掛けるも、そんな台詞と小さな声に拍子抜けする。



 英治朗の胸元位の身長をした少女。


 銀髪セミロングで黄金の瞳。


 服装は慎ましやかな胸が判る、少しピッチしたタンクトップに下はホットパンツ。


 お尻と太ももはムチっとしており、触ったら柔らかそうである。


 穿き物は安全靴の様見た目で、ちなみにニーソックスを履いている。



 おおよそ、こんな場所へは似つかない。


 しかも季節はそろそろ冬へ入る。



 英治朗は尋ねる。


「酷い言われようだけどよ……。---俺に何か用事か?」


 銃剣は銃口を下へ向け、腹部で抱えたままの構えで。



「うん、君を是非とも選んだ明かしをこれから見て欲しいんだ」


「選んだ?」


「そう。---あ、あとボクの事覚えてる?」


「ん……。どうだろうな?---確か、パールなんとか言ってたな?」


「え、覚えていないの⁉︎」


「あ、ああ……スマン」


「そっか……。そうだ、よね?」


 落ち込む少女。


「……とりあえず、そこの説明はあとだ。Pearl Black Soulって言うんだ。ボク達の拠点」


「へぇ。---今更だけど、お断りは?」


「君は応えたから手遅れだよ」


 ニコっと笑う少女。


 英治朗は落胆する。


「……ったく、伝承はそのままか」


「伝承?---何それ?」


「いいや、こっちの話しだ」


「そう。---じゃあ案内するわね」


「おい待て!話は未だ---」



 そう英治朗が言った瞬間、視界が暗転。



(なぬ⁉︎何も予兆が……!)





 気が付いたらどこかの病院の様な、研究所の様な建屋の中だった。


(こいつは驚いた。ここはどこだ?……人間族領地か?)



 英治朗の内心に少女が答える。



「ここは天上国」


「……はい?」


「人間族が天空へ作った拠点。投棄されて、海へ沈んでいたのを再利用した」


「んなもん……どうやって---あ!」



 英治朗は思い出した。



 魔王が人間族へ寝返る前。


 勇者を魔族領へ送り度届けたあと、現代機械に疎いイタコ婆さんがうっかり、触ってはいけないボタン押して、墜落した事件。




 少女曰く、


「緊急降下しただけで、別に損傷は無かった。だから再起動は余裕」


 右手をVサインしてアピールする。



(あざと可愛い)



 そう思いながら英治朗は少女がスタスタ急に歩き始めるので、


「おい、どこへ行かすつもりだ?」


「付いて来て」


「……強制イベントかよ」


 納得出来ない部分だらけで、疑問しかないが、少女の案内で英治朗は歩む。



 すると途中、ICUみたいな部屋で人が寝転んでいた。


(……こりゃひでぇ。もう無理か)



 周りに立つ男女の大人が諦めモードである。



 致命傷なのは一目瞭然。



 しばらくすると、向かいから慌てているのか、ハゲのオッサンが箱を抱えて走る。





「どけ、邪魔だ!何をボサっと突き立っている!」


 

 いきなり英治朗へ怒鳴るオッサン。



「ああ、すいません。その頭の光りが眩しくて」


 イラっとした英治朗は平謝り。



「って言うか誰だ!」



 未だ怒鳴るオッサン。



 英治朗は答える。


「ワタクシ、こう言うモノでして……」


 ポケットから名刺を渡す。


 風俗の案内名刺だが。



「な、何だ貴様は!」



 箱を一旦地面に置くオッサン。


 マジマジと英治朗を見る。



「人間ですが?」


「そうじゃない!---あ!……いや。……まさかな?」



 オッサンの表情が豊かで、頭のシワでも感情が読み取れる英治朗。



「ああ、済まない。ボクが連れ込んだ」



 先程の少女が来る。



「君、勝手にどこかへ行かないでおくれ」


「はあ、立ち止まってただけなんだけどね〜」


「うん。良いよ、許す」


「あ、はい」


 少女はニコっと笑う。


(可愛い)



 ハゲのオッサンがまた怒鳴る。


「上様!あれ程、もうヘッドハンティングをしないで下さいと何度も---」


 しかし、そのセリフは『上様』と呼ばれた少女に遮られる。


「良いでないか。今度こそ、良い逸材だ。---しかもカッコ良い」


「いや、ドヤ顔で言われても、説得力、皆無ですぞ⁉︎」


「良いじゃ無いか、面食いでも」


 不服そうにする少女は頬を膨らます。


「---兎も角!今度は育成の必要は殆ど無い!最初からレベル100を連れて来た!」



 エッヘンってモーションをしているが、英治朗は思う。



(俺は別にレベル100じゃ無いんだけどなぁ〜)



 少女とオッサンのやり取りを微笑ましく見る英治朗であった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る