第7話 兄に飯を奢らせる。

今日は始業式ということもあり、半日で放課後となった。



「直人ー!飯行くぞー!」

朝に昼ご飯を誘われたが、もう一度誘われた。

そして、周りに他の生徒は誰もいない、まぁ、示しがつかないしな。



「朝、誘われた時も思ったけど仕事は良いの?」

「あぁ、それなら、もうほとんど終わってるから大丈夫だぞ!」

「そうか、なら大丈夫だね。」


教師は残業が多すぎるとよく聞くが、兄さんが残業で夜遅くなることがほとんどなかった。

‥‥昔からどの人よりも圧倒的に要領が良かったからな。特に不思議なことはなかった。



「じゃあ、ラーメンでも行くか!」

「‥‥うん、そうだね。」

「なんだ?ラーメン嫌なのか?」

「そうじゃなくて!こういう時、絶対ラーメンにするだろ。」

「そ、そうか?まぁ、美味しいしラーメンで良いだろ。」

自分勝手な兄さんだが、それでも何故か嫌味に感じない。



ラーメン屋に着いた。人気店だが、平日の早い時間帯ということもあり、そこそこ空いていた。

ビックリしたが、扉に大行列が出来るとお帰りを促すことがあるという貼り紙があった。


「最近、どうだ?」

「え、会話に困る関係だっけ?」

「そうじゃなくて、単純に気になるんだよ。」

「うーん、最近ね‥‥別に普通だろ。」


特に何もない。ずっと大切な2人がずっと居て、ずっと片想いをしている。



「ふーん、何もないのか?例えば‥‥恋愛面とか。」

「ブーー!」

危うくラーメンが出そうになった!

あんたがそんなこと言うのかよ!


「‥‥何もないよ、相手もいないし。」

「いや、いるだろ?神楽ちゃんが。」

「ブーーー!!!」

ホントにふざけんな!それは兄さんだろ!?これ以上何があるってんだよ。



「神楽のこと、どう思ってる?」

シンプルに思ったことを聞いてみた。あんなに可愛い神楽に好かれるているんだから、何も思ってないなんてことはあり得ない‥‥。


「良い子だと思うよ。弟を任せられると思うくらいに。」

バン!!机を強く叩いて立ち上がった。

「なんで‥‥!神楽の気持ちに気付かないんだよ!?」

怒りが止まらなかった。兄さんにこんなに怒りの感情を持ったことが初めてだった。



だが、そんな怒り狂う俺に、兄さんはおかしな言葉で俺の心臓を刺す。

「直人、お前が気付けよ。神楽ちゃんの気持ちに。」


まるで、時が止まって、体が止まって、心臓が止まって、思考が止まったような不思議が俺を包んだ。

そして、もしかしたらという、ありもしない欲望が俺の頭の中を埋め尽くした。



「そ、それは‥‥どういう?もしかして、もしかし———

———スイマセン、お客様が多くなってきたので、そろそろ席を空けてもらってもいいですか?スイマセン。」


そう言われて、店の外を見ると行列の先が見えなくなるまで伸びていた。


「「分かりました、すぐ食べます。」」

仕方なく、急いでラーメンを食べた。だからなのかラーメンに味がしなかった。















店を出ることをお願いされるラーメン屋ってあるんですが?

‥‥まぁ、いっかと思って書きましたが。

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