第8話 兄からのメッセージ。

ラーメンを食べた俺と兄さんは駅に向かっていた。‥‥俺が兄さんと話したいと言ったら、兄さんが駅まで送ってくれることになった。



「そ、それでアレどういうこと?」

「アレか、うーん‥‥まぁ一つ言えることがあるとすれば、俺から聞いて”楽”しようとするなよ。」

「‥‥!?俺は、そうゆうつまりで言った訳じゃ‥‥。」


‥いや、そうなのか?

聞きずらい神楽じゃなくて、聞きやすい兄さんに尋ねて‥‥楽をしようとしたのか?

‥‥仮に神楽が‥‥‥”そういうこと”だとして、こんな俺が神楽に相応しいのか‥‥?

というか、神楽は俺のことをどう思ってるんだ‥‥?

俺の理想の形に俺が神楽の形を変えて当てはめていないか‥‥?



嫌な思考ばかりで俺の頭はパンクしそうになる。そんな俺を助けてくれるのはいつも、人の気持ちが『よく分かる』兄さんだった。



「大丈夫だよ、直人が人の気持ちを考えれる子だってことは、俺が‥‥いや、俺も知ってるから。大丈夫だよ。」

「‥‥‥。」

兄さんはそう言って、俺の頭に手を置く。

これだけで何故か安心した。


でも、何だかその優しさが胸の中でモヤモヤした。

(なんで、俺はいつも兄さんに甘えて、動けないでいるんだろ‥‥。)

「そんな訳‥‥ないだろ!」

「おい!止まれ!直人!!」


俺は走った‥‥走ってしまった。

もしかしたら、兄さんの優しさを振り払いたかったのかもしれない。

もしかしたら、動けない自分に腹が立って、無理矢理動かしたのかもしれない。

‥‥あるいはその両方か。俺にも良く分からない、考えられなかった。


そして、そのまま横断歩道を走った。

“赤信号”のまま。



一瞬のことだった。

何でこんなことにと思った。

まだやりたいことがあると思った。

伝えたい気持ちがあると思った。


そして、車が目の前まで来て、瞼を閉じる。

すると、何故か体が逆再生するかのように戻って、後ろに尻餅をついた。


『バン!!!』

だが、俺を助けた”兄さん”が車に轢かれた。



衝撃的な光景だった。

慌てて、救急車を呼ぼうとしたら、車の運転手が俺に話しかけてきた。

「君はあの人を救助して!救急に電話をするから!」

「わ、分かりました!」



(俺のせいで‥‥俺のせいで!)

俺は兄さんに駆け寄って、安全なところに移動させた。



「兄さん‥‥兄さん‥兄さん!」

「大丈夫だよ‥聞こえてる‥‥。意識があるから大丈夫。」


「よ、良かった‥‥。」

「‥‥‥うん、そうだな。さっきの話の続きだけど——

——無理しないでくれ!喋らなくて良い!これ以上、俺のために人生を無駄にしないでくれ!」


力いっぱい叫んだ。兄さんに大好きだから生きて欲しいそんな単純かもしれないけど、心の底から思った感情で叫んだ。



「喋らせろ。人生を無駄‥してるわけじゃない‥‥‥ほら‥‥言ったろ?直人が‥人の気持ちを考えれる子って。現に‥‥俺のことを心配して‥‥こうやって行動をしてる。」

「お、俺は‥‥”兄さん”だから心配してるたけだ‥‥。だから、凄いのは兄さんの方だ。」


「わはは‥‥どんだけ卑屈なんだ。‥‥確かにそうかもしれない‥‥でも、俺は直人が俺のことを‥‥心配してくることが‥‥‥たまらなく嬉しいよ。」

真っ直ぐな気持ちを伝えられて、つい目を逸らしてしまう。


「そ、それは、それでも———

———本当の俺の気持ちを否定‥しないでくれ。」

逸らした目を強制的に戻される。そんな強い言葉だ。


「もう一つ俺からのアドバイス。神楽ちゃんと話しなさい。お互いに素直に話しなさい。」

「分かった、約束する。」

「良かった、”幸せにな”」




気丈に話していた兄さんだったが、その後、病院に連れて行かれたが、医者の手術も虚しく助かることはなかった。

兄さんが車に轢かれた瞬間に打ちどころがかなり悪く、轢かれてすぐに手術をしても間に合わなかった可能性が高かったらしい。



「兄さん‥‥。」

俺は大切な人を1人なくした。
















この話を書いてる時にずっと脳内でひまわりの約束が流れてました。


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