第5話 長い長い”大切なお話”
始まった、始まってしまった。
長い”大切なお話”が。
(これを楽しく聞く方法とかないのかな?)
そう考えるも、多分ないことは俺も分かっている。
「えー、君達、2・3年生にも新しい後輩という仲間が出来ます——」
後輩か‥‥。
上手いやつ入ってくるのかな?
俺はバスケ部に入っていて、3年生が10人、2年生が14人だ。
俺はレギュラーとして、大会の試合には出れていないが、14人の2年生の中だと、だいたい5番目くらいの実力だと思う。
(運が良ければ、3年生が抜けたあとは試合に出れるかな?)
『運が良ければ』それは、大悟がいい例だ。
大悟もバスケ部に所属しているが、一年生の頃から普通に大会でも、今の3年生を抑えてレギュラーとして出場している。
(ホントにカッコいいやつだよ。)
「はぁ‥‥」
「なんだよため息なんか吐いて」(小声)
俺のため息に気付いて隣に座る大悟が声をかけてくる。‥‥何かと縁のあるやつだよな。
「いや、3年生が引退したあと、俺がレギュラーになれるかなって。」
「あぁ‥‥、まぁ運が良ければ?」
「大悟に言われるのは腹立つな。」
「何でだよ!?」
女子が太ってても人から『太った?』って言われるのが嫌みたいな?
自分で自覚するのは良いけど、他の人に言われるのは‥‥みたいな?
「はあ‥‥、それより今年入るかもしれないマネージャーについて話そうぜ!」
「嫌だよ。」
「なんで——」
「——お前にしかマネージャーの視線がいかないからだよ!」
大悟はモテる。
例えば、今いる2・3年生にはバスケ部のマネージャーは1人ずついるが、大悟がバスケ部に入ったその日に告白されるくらいにモテる。
‥‥本当に世の中は不公平だ。
「‥‥なんだそんなことか。」
「なんだって何だよ!」
モテ男には非モテの気持ちが分からないらしい。
「だって俺、直人のこと好きなやつ知ってるもん。」
「‥‥!、それってもしかして!」
可能性に縋ってしまった。本当にこんな自分が嫌になる。
『———2年1組、竹中直人さん少し騒がしいです。後で残りなさい。』
「え‥‥?」
皆んなの視線が一斉に俺へと切り替わるとともに俺への長い長い”大切なお話”が確定した。
「はぁ‥‥。」
ため息しか出ない。
どうやら、可能性に縋っても、結局その人物の名前は分からず、その上、教頭先生に呼ばれるという最悪の展開で終わったようだ。
「くくくっ!」
兄だけはずっと笑っていた。後で蹴り飛ばしに行こう。
‥‥まぁ、それでも憎めないのが兄の凄い所なんだろうけど。
つい、大きな声が出るほど縋ってしまったんですね。
他の作品もそろそろ投稿していきたいですね。
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