第25話 突発配信!コジローを討て!

「はーいこんにちは! 『ダンジョンフレンズ』の獅子崎マロンと!」

「黒羽ハルトです!」

「今日はメンテ明けってことで師匠とヘルモード地下二階にいるんだけどね、なんとここにはM.O.E.マップオンエネミーがいるみたい! それを師匠と倒しに行こうかと思います!」



【コメント欄】

>おおおいきなり始まったかとおもったら師匠と一緒!

>マロンうおおおおおおおあああああああ!

>もう二人揃ってるのがデフォになったなw

>アンチさん追放されてて草

>師匠うぅおおおあああああああ

>師匠きゃわわ

>シシマロがなんかちょっと色っぽく見える

>マロンちゃんは最初から色っぺーだろいい加減にしろ

>師匠が来てから引き立つよな

>最強の夫婦配信ktkr

>師匠が怖がってるカワイイ

>チェストすればええやろがい!

>あのバグみてーなコジローの間合いにどうやって入るんだろうな

>あいつ煙幕効くのかな?

>【キャッツ】のマタタビグレネードでも混乱しないしな

>てか『ベルセルク』は状態異常耐性も環境異常耐性にも強いからな

>地下二階でコジローがウロウロしてるとかヤバすぎだろ

>ヘルモードがヤバすぎてみんな武器防具を強化しまくってるらしいな

>楽しみが増えていいことだ。正直マンネリ化もあったし、40からのレベル上げも苦痛でしかなかったからな

>早く行きたいけど90階から鬼みたいに難易度が上がる



 おお、なんか突発なのに同接めっちゃ増える。


 てかみんなもゲーム盛り上がってるようで何よりだ。やっぱマンネリ化してたんだろうな。


 だからシシマロと出会った時の同接が凄かったんだ。新しい場所が見れるって。そこで俺がいた。予想を超えるバズりにも、ちゃんとした下地があったってことだ。


「今日は師匠の新しいスキルのお披露目も兼ねてるよ!」

「試すことになったのはこの【肝練りルーレット】です。【ラビット】を使ったことある人は似たようなスキルがあると思うんだけど、説明文がね……」



>何だこのスキル

>説明が女々しいから語らないって舐めてんのかw

>【ラビット】系統は謎スキルが多すぎて面白い

>自分で使おうとは思わないけどなw

>師匠がカメラに近づいてきてハァハァ

>益々可愛く見えるのナンデ

>シシマロが興味津々でみてるのきゃわわ

>この二人もう完全に付き合ってるだろw

>やめろ戦争が起きるぞ

>え、えらいことや……せ、戦争じゃ……

>微笑ましい師弟関係に見えるけどな

>師匠がまんま先生でシシマロが生徒みたいな関係にも見える

>百合だっつってんだろいい加減にしろ

>もう何でもいいや師匠は可愛いシシマロも可愛い

>これはジェイソンさんもニッコリ

>ジェイソンさん仮面に師匠のイラスト貼り付けてたぞ

>革ジャンの背中にハルト命って書いてあって恐怖マシマシになってたな

>あの人も人気出てて草


 

 なんかあのジェイソンさんの話も出ているけれどもコレは突っ込むべきなのか。まあいいや、とりあえず配信を続けよう。お祭り騒ぎになっているのはそれだけでいい。


「使ってても【サツマラビット】は謎が多くて。せっかくだからみんなと一緒に効果を見てみようってことで突発です。ホントはコジローとは会いたく無いんだけどなぁ……」

「私も苦手。師匠は何回斬られたの?」

「数え切れないくらい。遠距離攻撃も特殊攻撃もしてこないけど、純粋に力が強い。攻撃は避けまくるし、何より即死攻撃が怖い」

「今度は【チェスト】もあるから大丈夫だって!」

「当てられたらね……」


 そうしてオープニングトークは切り上げて、地下二階を進んでいく。本来『コジロー』が出てくる地下80階は特別ステージになっていて、『コジロー』がただ一体デーンと陣幕に座っているだけだ。地下なのに何故か快晴の空に海辺とムッチャクチャな空間なのが印象的だった。


「まさかとは思うけど戦ってるうちに『ムサシ』の増援はないだろうね?」

「そしたら逃げよう!」


 出会ったことはないけれども、ノーマルモードの『コジロー』戦ではちんたら戦っていると海から船で到着した同型『ベルセルク』の『ムサシ』が到着してしまう。雑魚モンスターが現れないからこその特殊演出なのだろう。


 そして『ムサシ』は名前から分かるようにエゲツなく強い。二体が揃うと獄絵図のような状態になるので、普通はソッコーで『コジロー』を倒すのがセオリーとされていた。


 まさかねー来ないよねー来たらヤバイよねーとわざとフラグを立てながら地下2階の最奥に到着。地図を表示させて二つ先の部屋にいることがわかった。


「この先かぁ」

「師匠ファイト!」

「君、思いっきり戦わせるつもりだよね?」

「コジローを倒す師匠見てみたいなぁ」

「何そのちょっといいとこ見てみたい、みたいな」

「ちなみに私一回ソロで倒したことあるよ」

「ぐぬぬ。そう言われたら師匠として引けないじゃんか」


 シシマロがニヨニヨしてる。イジワルな事言うなぁ。でもこれも可愛い。うん、俺の推し可愛い。許す!


 ということで抜き足差し足で近づいて、『コジロー』のいる部屋の入り口から顔半分を覗かせて、すぐに引っ込めた。


「いたいた。正座してた。めっちゃ怖い」

「こっち見てたよね」


 もう一度チラッと見てみると、今度は立って剣の鍔に手をかけていた。バレてるみたいだ。


「参ったな。サムライ系は目の前で煙幕撒いても正面から切り込んでくるし」

「じゃあ師匠、すぐに【肝練りルーレット】いってみる?」

「いってみるか。念のためにココに地雷置いとこ」


 入り口に【地雷火】を置いて、ちょっと離れたところに【捨てがまり兎】を何匹か配備。どうしようもなかったら逃げてしまえばいいからネ。


 スキルポーションでスキルエネルギーを全回復させておいて、スモークを外してスキルスロットに【肝練りルーレット】をセット。準備万端。よっしゃと気合を入れてシシマロと一緒に部屋の中へ入った。


 堂々としていたからだろうか、『コジロー』は仰々しく礼をしてから、ゆっくりと刀を抜いた。あら、こんな反応するのか。知らなかった。


「い、意外と礼儀正しかった」

「いつも先手必勝って殴りかかってたからこんな動作するなんて知らなかったよ」

「鉢合わせしたときもよくよく考えたらこっちがぶつかったり足踏んじゃったりしてたから、もしかして失礼を働くと怒るのかな?」

 

 ゆっくりと近づいてくる『コジロー』は面頬の奥でニヤッと笑っているような、そんな気がする。あ、マジか。もしかしてサムライ系ってそういう感じ?


 とすると、今からやる事は礼を失するような。


 ええい構うか。相手はモンスターだっての!


「よ、よし! 【肝練りルーレット】!」


 と、叫んだ瞬間。いきなり俺と『コジロー』の間に光が差し込んだ。光もただの光ではなくてスポットライトのような、そんな感じ。


 そしてドスン! と落ちてきたのは鉄のポールだった。


「え、何これ?」

「師匠あれ!」


 スルスルスル、と降りてきたのはケモナー大歓喜のウサギっ娘だった。甲冑みたいなのを着込んでいるけど何か艶かしいというか、コミカルというか。コメント欄も「どうなってるんだってばよ」「いきなりポールダンスが始まっているんだが」と大困惑。いや俺が聞きたいわ。何が起こっているんだってばよ。


「お、おおお?」

「あれえ?」


 グググ、と体が勝手に動く。シシマロもだった。なぜかその場にあぐらをかいて座ってしまった。


 こんなの無防備になって斬られるじゃんと思いきや、なんと『コジロー』も座っている。正座でピシーッと背筋を伸ばしていた。


「何が起こってるんだ」

「師匠、ウサギちゃんめっちゃ踊ってるけど」


 シシマロの言うとおり、ポールダンスを踊りまくるウサギちゃんがむちゅーっと投げキッスまでしてクルクルと回っている。だんだんスピードが速くなったかと思いきや、次第にピッと俺たちに指をさし始めた。


「もしかしてこれがルーレット?」

「師匠、あのウサちゃん腰に小太刀みたいなの持ってない?」


 クネクネする動きから全くわからなかったが、確かに小太刀のようなものを装備している。


 やがてポールダンスなのかルーレットなのかわからない踊りが終わると、ウサギちゃんがビシーっと指をさしたのは――


「「ええー! コジローの方!」」


 ガックリと肩を落とす。ここで外すのか。せめてシシマロの方が当たると思ったのに。


 これであっちにクリティカル率のバフが乗るとなるといよいよ勝率が低くなる。こりゃ逃げるしかないかとシシマロと目を合わせようとした刹那、目の前でとんでもないことが起きる。



「チェストオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」



 ウサギちゃんがポールからピョーンと飛んで跳躍。


 腰の小太刀を抜刀のち、『コジロー』の脳天にそれを突き刺した。




―――――――――兎―――――――――

お読みいただきありがとうございます!

面白かったらコメントや♥

★★★やレビューにて応援して頂けると

今後の執筆の励みになります。

よろしくお願いします!

―――――――――兎―――――――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る