知らずに超高難易度ダンジョンに潜っていたソロ専の俺、うっかり美少女ダンジョン配信者を助けてしまい師匠と呼ばれ大バズり。そして何故か俺まで配信者になってしまった~薩摩ラビットはもう逃げない〜
第15話 バトルスタジアム!相手の性癖にシュゥゥゥゥト!!
第15話 バトルスタジアム!相手の性癖にシュゥゥゥゥト!!
どうして、こうなった。
街に出たら事務所の先輩方に「ちょっとツラ貸しなよ?」と言われて連れ込まれたバトルスタジアムで戦うことになった。
[ハルトくんもってるね。レモンと街で合うなんて]
くそう茜さんめ。チャットの奥で笑ってるのがわかるぞ。さてはレモンさんの事隠してたな?
[まあ身内で戦うなら盛り上がるし? レモンも勝っても負けても盛り上がる方だから遠慮はないわよ]
わー、レモンさんって野蛮なフレンズなんだね!
半ば強制的にバトルスタジアムに連れて行かれると、俺とレモンさんをみるなり公式のスタッフさん達が大慌てになっていた。
「そういうのもうちょっと早く言ってくださいよ! 飛び入りにはビッグゲームすぎるでしょ!」
しばらく待っていると、スーツ姿でドレッドヘアにサングラスとなかなか濃ゆい人が走ってやってきた。あ、この人知ってる。PVPでMCやる人だ。
「ごめんごめん。で、いい?」
「もちろん! 今すぐ特別マッチを組みましょう」
「やった! 支配人好き!」
「レモンちゃんには勝てないなぁ」
レモンさんから聞いたことのない猫撫で声が聞こえてきた。それを聞いた途端に、レゲエ支配人はデロンと表情がだらしなくなる。
まあ確かに彼女、黙っていたり可愛く振る舞えば単なる美少女だからな。しかしこれがプロの猫撫で声というものか。勉強になる……やらないけどさ!
「ようし盛り上げるぞおおお! 広告料金ガッポガッポだああああ!!」
オー、とスタッフさん達が動き始める。この商魂たくましい『インビシブルフロンティア』の公式スタッフの姿勢は嫌いじゃない。
で、そのままバトルスタジアム専用のロビーに転送されるのだけど……
「ひぃぃぃ何だここぉぉぉぉ」
悲鳴をあげた。配信は続いているので、コメントには「頑張れ」「こわい」「俺もここ苦手」というのがダーッと流れている。
バトルスタジアムは言わば、現代に許された闘技場だ。テレビで映す格闘技とは一線を画すのは、武器が使うのを許されていると言うこと。
なのでダンジョンに潜らずにここで戦いに明け暮れる人も多い。
そうなると集まってくるのはまあゴッツイ人たちばかり。ツーブロックで顔にガッツリトライバルのタトゥーを入れた兄ちゃんや、顔が傷だらけの人、タオルを被ってじっとしているが覗く眼光がおっかない人、などなど。
「おう、アンタがあの師匠か」
ズッと目の前に立ったのは一際大柄の兄さんだった。ウルフヘアで目が吊り上がり、今にも飛びかかってきそうな顔。多分
「は、ひゃい、黒羽ハルトです……」
「こんなに小せえのか」
「地獄にずっといたんだってな、ええ?」
「レベルも最強の60なんだってなぁ」
「配信、見てたぜ」
続々と集まってくるイカつい兄さん達。
命の危機を感じる。
割とガチな感じのヤツが。
なんだここは。
ここだけスラム街みたいなんだけど?
【コメント欄】
>ひえええ
>師匠wwww
>こっわ
>バトルスタジアムのロビーほんと独特だよな
>こんなんチビる
>師匠が襲われちゃう!
ダメだ怖いもうだめ流石にログアウトすっぞコノヤロー!
半泣きになってログアウト画面を出した、その時だった。
「すいません。あ、握手してください……」
「へぇっ!?」
上擦った声が出た。いつの間にか目の前のイカつい兄さん達はコロッとした笑顔を浮かべている。
「配信見てました。すげえっスね。ヘルモードにたった一人なんて」
「アンタの戦い方最高だ。堂々と卑怯なことをする。いいねえ」
「俺は自衛隊員なんだが……君の躊躇の無さ、堂々と背中を狙うやり方。戦闘の理に叶っている」
「見えないところから一撃必殺。アンタ、わかってんなぁ」
「あのチェスト、薬丸自顕流だな? それをモデルにしてるんだろ。いい猿叫だった」
なんか、妙に褒められている。そして褒められ方がタコさんのソレに似ている。
「俺らは勝つ為なら何でもありなんだがよ、今いちウケが悪くてなぁ」
そう言うモリモリマッチョなツーブロックがはぁ、と肩を落としていた。
「見ての通りここにゃバトル好きが集まってる。みんなガチンコ過ぎてよ、客が引いてるんだよな」
「そこへ来て師匠だ。アンタの戦い方、俺らと同じだ!」
「アンタが希望なんだよ師匠!」
>ま さ か の 同 族 扱 い
>師匠どんだけ好かれるんだよw
>実際戦う時のギャップが凄すぎんだよ
>何の躊躇もなく背中から刺すしな
>卑怯が可愛いを着て歩いてるのが師匠だから
「アンタがああいうのやってくれると俺らが助かるんだよ」
「俺らのやり方が正しいってとこ見せてくれ」
「頼むぜハルトくん。きったねえ戦いにも華があるって見せてくれ!」
「あの、レモンさんもいますよね?」
というと、あははと乾いた笑いが上がる。え、何この空気。タブーに触れたような感じナンデ。ねえツーブロックさん何で視線合わせないの?
おいコメント欄。何で黙る。何が待ってるんだ。レモンさんに何があるんだよ!
[ハルトくん、レモンのことは置いといて。ここでめいいっぱい笑顔を振り撒いてやって! コアファンを獲得するのよ!]
こんな時にまで商魂たくましいな茜さんは。
ええいもうわかったよ何でもやってやる!
「わかりました。俺、兄さん達の期待に応えますから。見ててください」
指を絡めて手を引き、ニッと微笑む。
まだ戦いも始まっていないのに、控え室が歓喜で震えていた。
……なんだこれ。
§
『最強が見たいかあああああ!?』
ドウっと会場が沸いた。まるで地下闘技場でグラップラー達がトーナメントに参加するような、そんな感じ。
バトルスタジアムは満員御礼。「大入」と勘亭流の文字で書かれたの赤いホログラフ垂幕が空中にデーンと表示されていた。大相撲か歌舞伎みたいだ。わかりやすいけどなんでココだけ和風なの?
『いつでも戦えるバトルスタジアム! 著名なランカーが参加することもあるが今日は特別だ! 彗星の如く現れた最強のウサギがチャンピオンに挑戦するぞ!』
待って。
聞いてない。
チャンピオン聞いてない。
[言い忘れてたわ。レモンは対戦だけならマロンと同格よ。頑張ってね♡]
説明がゲロ遅い。
ゲーム中盤のロード画面で出てくる基本操作TIPSくらい遅い。
もう泣きそう。足ガックガク。怖いとかじゃない。衆目に晒されるのがとにかく怖い。
配信業しているのに今更かよと言われるかもだけど、画面に向かって喋るのとこうやって人に見られるのでは全然違う。
こういうのを『ダンジョンフレンズ』の皆は仕事としてやってるのか。シシマロはこれもしながらダンジョン攻略をしてるし。他の人も自分の持ち味を生かしながら仕事してる。
「俺の持ち味って何だろう」
ただバズって、なし崩しで『ダンジョンフレンズ』に入って。がむしゃらにやっただけ。ヘルモードに居続けたのも半分は意地と諦めの悪さだけだし。本当の俺なんかただの痛いメカクレ陰キャなのに。
『それでは玄武の方角! ただのダンジョンじゃ物足りない! ヘルモードこそが俺の居場所だ! 可愛さに騙されるな、隠れた目はドラゴンすら射殺すぞ!』
うっわあのレゲエ支配人めっちゃノリノリでアナウンスしてる。
やめて。盛り上げないで。いやそれが仕事なんだろうけど!
『地獄ウサギ! 性癖ブレイカー! チェストダンジョン! 伝説の男……男だよね? まあこの際気にすんな! それともまだ二つ名のおかわりが必要か!? 『ダンジョンフレンズ』所属、黒羽ェェェェ! 【ザ・マスター】! ハルトォォォォォ!』
どわーッと会場が盛り上がった。
もうどうにでもなーれ。
俺は今黒羽ハルトだふうははは。
花道を走りながら愛嬌を振り撒く。
見下ろしている観客達にニコニコしながら手を振って、はい俺が黒羽ハルトです覚えてねと、そりゃもう考えられる限りの愛想を振りまいた。
>師匠ヤケクソになってるwww
>最初期から見てる俺らだからわかる師匠もうヤケクソだw
>黒うさパイセンwww
>投げキッスまでしとる
>ぐぅ可愛い
>性癖ブレイカーはうまいこと言ったな
>チェストダンジョン!!
>なんかシシマロっぽい
>そりゃまあ推しを自称してるしな
>師弟関係なのに推しってもうわっかんねえなコレ
そうだよヤケクソだよ。わかってんなお前ら。
ということで花道を通ってたどり着いたのはかなり広いバトルステージだった。足元は砂地で、ところどころに遺跡めいた朽ちた建物の残骸がある。
俺が初期指定位置の光のリングの場所に立つと、今度は急に会場が暗くなった。
『朱雀の方角! 今日もあのお方がやってきたぞ。彼女こそ最恐のバトルフリークス。こちらも可愛いなりをして、その性格は嵐のように苛烈! 先輩風を吹かせての堂々の登場だ!』
ブシャーっと花道の脇から花火のエフェクトが発生。その間をゆっくり歩いてくるのは、あの笑顔のレモンさんだった。
しかも怖いことにレモンの印象が強いヒラヒラのロリィタドレスから、真っ黒で禍々しいゴスロリに変化している。まってマジで怖いんだけど。
『シシマロがダンジョン探究者ならば彼女は戦いの探究者だ! 後輩潰し? だからどうしたお前強ええんだろ!? なら一発
遠くでもわかる、ニチャァという粘着質な笑顔。あまりの恐怖におしっこちびりかけた。
―――――――――兎―――――――――
お読みいただきありがとうございます!
面白かったらコメントや♥
★★★やレビューにて応援して頂けると
今後の執筆の励みになります。
よろしくお願いします!
―――――――――兎―――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます