第03話 知らんところでバズるとヒエッてなる
お前をこれから師匠と呼ぶ事にする!
シシマロからそう言われた後はよく覚えていない。推しから師匠と呼ばれ、おそらくはプレミア価格が付くだろうフレンドコードをゲットできただけでキャパオーバーだった。
その後は
「私、今日はもう帰るから! こんどまた会いましょう師匠!」
とブンブン手を振られてログアウトされた。そこからポツーンと一人で十字路に立ってしばらく。何匹かモンスターがやってきたのでケムに巻いてログアウトした。
ヘッドギアを脱ぐ。見慣れた景色、見慣れた机。自分の部屋だ。西日が差し込んでいてそろそろ夜になりそうだ。
しばらく椅子にもたれかかってぼーっとしていた。夢みたいな体験だった。獅子崎マロンに出会えるだなんて。
その後はぽけーっとし過ぎて妹のナナに心配された。中学二年生の彼女は俺の事を嫌いにならずによく構ってくれる。ナナは俺が心非ずなのが怖くなって医者に連れて行こうかと騒いでいた。
俺は大丈夫だからと言って、風呂に入った後はすぐに寝た。攻略wikiを見たり、シシマロのチャンネルを見たり、自分の眺めるだけのツイッターアカウントも開かなかった。
これ以上何か頭に入れたら、シシマロとの出会いが消えてしまうような、そんな気がしたからだ。
――今から考えると、これが俺の最後の安眠だったような気がする。
§
【インビシブルF】初ヘルモード誰もついてこないからソロで潜るよ!【獅子崎マロン/ダンジョンフレンズ】
「ひぃぃぃやぁぁぁぁ! 助けてぇぇぇ!」
【コメント欄】
>シシマロ頑張れwww
>がんばれwww
>いやお前ら笑い事じゃねーぞこれ
>このゲームのトッププレイヤーだぞ
>オークの群れに追いかけられるって怖いな
>くっ殺五秒前www
>シシマロのレベルでもダメなのかよ
>敵固すぎィ!
>シシマロの
>とっくにやってるよ
>レイドで一番ダメージソースになるシシマロがこれでどうしろと
>えー【ブレイブレオ】産廃なのかよ
>ちげえよカスすぐに使えねえとか言うな
>パーティーは必須として【エレファント】か【タートル】で壁作るしかないな
>てか地下100階でまた最初からは無慈悲すぎる
「へぇ!? なんでこんな所にプレイヤーが!? ここ超高難易度なのに!?」
>え?
>えっ
>は?
>嘘だろ
>はあ?
>え
>おいおい
>シシマロより先に到達してた奴がいたの?
>いやいや人型モンスターじゃね
>プレイヤーなのか?
>スキンが黒ジャージだ
>黒ジャージwwwwww
>見たこと無いボディーアーマーつけてんな
>バックパックもなんだアレ?
>剣も見たことねえぞ
>装備品がほとんど未知www
>NPCだろ
>メカクレだしいかにもNPC
>NPCか
>理解したわ。超高難易度だからお助けキャラがバディになるんだろうな。多分新しい要素でヘルモードならではのNPCバディだわ
>それマジなら神ゲーなんだが
>絶対好きな子に作り替えられるんですよね???
>俺シシマロみたいなの作る!
>シシマロクローンが量産されるwww
「助けてェ! 助けてヨォ! 何でもするからさァ!」
>ん?
>ん?
>ん?
>ん?
>今何でもするって言った?
>このノリかなり古いのにシシマロ信者は使うよな
>きめえオッサンだらけかよ
>アイドルも美少女配信者も推してるのは半分くらいオッサンだぞ
>NPC動いたな
「ちょ! 何で一緒に逃げてんの!?」
>並走www
>並走wwww
>並走w
>このNPC欲しいwwww
>かわいいww
「すいません獅子崎マロンさんですか?」
「そうだよシシマロだよ!」
「うわ本物だ! いつも見てます! 雑談配信だけですけど!」
>え
>えええ
>はあああ
>NPCじゃないの!?
>はあああああ???
>おい誰だコイツ見たことねえぞ
>ランキングにもいない
>誰だコイツ!?
>まさかの人間
>冗談抜きに誰だよヘルモードに平然といるとかおかしいだろ
「君
「【ラビット】です」
「ギャー! 産廃だー!! 終わったぁぁぁ!」
>くそ
>カス
>ゴミ
>終わったwwwwwwww
>ラwwwwwwwビッwwwwwwトwwwwww
>やっぱりNPCだろw
>攻撃にも役に立たない、煙幕ほか並ぶスキルはことごとくパーティーに迷惑、一人だけ脱兎のごとく逃げる産廃オブ産廃
>ソロ専でありかと思えばボスで詰む
>一応一緒に逃げるスキルもあるけどな
>攻略見たらほとんど初期のまま更新されてねえw
>誰も使わないからな
「うわ! こんなスキルがあるの!?」
「シシマロさん隠れてて」
>え
>は?
>???
>煙幕範囲広くない?
>完全に視界遮断されてるじゃねーか
>かろうじてシルエットで見えるのな
>パーティーでやられたらキレる
>オーク完全に見失ってるだろこれ
>いやいやこんなに効果長くねーよ
>こいつ【ラビット】極めてんな
「とりあえず倒してきます」
「ちょっ!」
>オイオイオイ死んだわアイツ
>オワタ
>流石に死んだわ
>シシマロでも太刀打ちできなかったんだぞ
>いくら隠密働いてても無理
>オークがテキトーに振り回した剣で死ぬ
>?
>??
>なんだあのスキル
>剣が光ってる
>フォースと共にある
>ライトセーバーみたいになってんな
>なにそれ?
>宇宙戦争でググれ
>おいおいバフやばくねえか
>黒うさパイセンのバフwwww
「……うそ。即死8割? 何それ。い、いみわかんない」
>クリティカルも100%wwwww
>バケモンか
>シシマロ震えてるw
>小声初めて聞いた
>小声もカワイイ
>どうでもいいけど黒うさパイセンチーターだろ
>黒うさ無双www
>チーターだなこりゃ
>チーターならもっとバフ乗せるだろ
>完全即死とかやりそうだもんな
>素人だらけかチーターいねえよフルダイブ型ゲームだぞ
>ハッカーでも国際手配レベルのヤツじゃねえとヘッドギアをハックできねーよ
>妄想で語るなガキ共これでチートなんか無理だ
>ガキはすぐチートチート言うからな
>隠密状態のバフ率はそのままだぞ
>え、マジで【ラビット】ってレベル上げるとここまでくんの?
>
>攻撃しても気づかれないんだろ
>え、チートじゃないの?
>マジでかwwwwww【ラビット】の時代が来たwwwwww
>環境がひっくり返るぞ何だこの神回
「す、すごい……【ラビット】系統ってこんな戦い方があるんだ。君、何者? ランカーの誰よりも強い。もしかして私よりも……」
「い、いや。そんなこと無いです。俺なんかここの3階までしか行けない素人だし」
「3階は3階だけど……ここは地下100階層に来てようやく解放されたヘルモードなんだよ?」
「さっきから言ってるヘルモードって、ノーマルモードの次なんです?」
>???
>????
>黒うさパイセンまさかの無自覚wwwww
>これ運営のエラーじゃないか?
>たった一人で誰もいないヘルモードにいたのかよwww
>どうやって生き残ってんだよ
>初期装備なら即死だろ
「君の剣。星は中が白い。それはレジェンドスター。星5のさらに上」
「星5より上!? 拾っただけですよコレ!?」
>うwwwwそwwwwだwwwwろwwww
>レジェンド武器拾うwwwwww
>こんなのゴロゴロ落ちてんのかよヘルモードwwww
>拾ったのが最強武器防具ならそりゃ生き残るわ
>攻撃力えっぐ100Kって書いてあるぞ
>100は初期武器と同じじゃね
>KだK。キロ。掛ける1000だよ
>攻撃力10万!?
>パイセンwww
>そういうもんだと思ってたんじゃないか?
「……君、名前は!?」
「え、稲葉ハルt【規制音】」
>ピーおっそw
>本名っぽい名前言うとは思わんだろ
>スタッフさんやらかす
>ぐぅ無能
>衝撃的すぎて遅れたなw
>シシマロの聞き方も悪いぞこれは
>なんかコメント減ってない?
>みんな調べてるんだろ
>多分このアカウントだ。ハルトってヤツ
>【ラビット】で頑張るって書いてある
>特定した。ウチのクラスのヤツだ
「案外いいじゃん」
「なっなななにぎゃっ」
>ああああああああ死ね死ね死ね死ね!!!
>しねし
>死ねクソウサギ
>しねえええええええ
>ああああああ!
>やべえ発狂してるやつらがいる
>シシマロに触れられるとか羨ましい
>てか割とイケメン?
>メカクレ陰キャかと思ったのにまさかの
>パイセンのアカウントwwww
>一気にフォロワーが増えてるwwwww
>黒うさたんしゅき
>メカクレ少年だぁ
>癖ッ!
>同人描く(^q^)
>言い値で買う
>買う
>描けはやくしろ金は出す
>額なめたい
>ひぇっ
>ショタ界隈のガチ勢混ざってんぞ
>ショタちがう少年
>ショタではない少年だ
>素人は何でもショタって言う
>150cm下回るのがショタで黒うさは160cmちょいだから少年
>細かいwwwww
>知らねえよwww
>どちらにせよガチ勢じゃねえかwww
>女性プレイヤーたちの性癖におもっくそ刺さってるw
>男ですが刺さりました好きです
>えっ
>えっ
>わかる
>え゛っ゛
>シシマロの配信だぞ手加減しろ!
>ああもう滅茶苦茶だよ
>これダンジョンフレンズにスカウトされるな
>流石はシシマロ伝説を作る女w
「ハr【規制音】君! 君は私の師匠にする! 今決めた!」
――この日、この瞬間。
同時接続数が60万人という驚異的な数字をたたき出し、伝説の配信となった。
―――――――――兎―――――――――
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―――――――――兎―――――――――
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