第7話飲みに誘ってみた
吉田は帰宅して、シャワーを浴び缶ビールを1本取り出しピスタチオで飲んだ。吉田は考えた。
明日の朝8時に神宮寺さんは業務終了。24時間寿司屋の丸八寿司に誘ってみようと。
もう、おっぱいは強調しない。素の自分でぶつかろう。神宮寺さんは頭が良い。自分みたいな馬鹿に興味を持つはずがない。なんか、知識をつけなくては。あっ、そうだ!瓶ビール大瓶が何故、633mlなのか神宮寺さん知ってるかな?多分、知らないハズ。そう吉田は思い込み、明日の朝会社に行く事にした。
翌朝。
「神宮寺君」
「あっ、課長。おはようございます。昨夜は電話ゼロでした」
川口課長は、缶コーヒー片手に、
「下で、お前の彼女が待ってるぞ。お疲れさん。また、明後日な」
「はい。お先に失礼します」
神宮寺は誰が待っているのか?気になった。
エレベーターで降りた。そこには、吉田が立っていた。
「神宮寺先輩、夜勤お疲れ様でした」
「また、お前か!なんで、君はここにいるんだ?休みだろ?」
「寂しい神宮寺の為に来たんですよ。丸八寿司行きましょうよ」
「……丸八寿司かぁ~。いいけど」
「後輩の石井ちゃんが、丸八寿司まで送ってくれますから」
石井は更衣室で着替えている最中だった。彼女は、これから、彼氏とデート。だから邪魔者はいない。
「お、おはよう」
と、有山係長が言う。もう、辞令のウワサを知っているようだった。
神宮寺は、
「おい、係長。また、便所汚れてたぞ!トイレ掃除責任者に言っとけ!もう一度、チェックしろって!」
「は、はい」
有山は、この1年間、会社でネット将棋をして、下の者には威張り散らし、運転手を苔にした代償は大きい。来月の辞令で有山係長は清掃課のトイレ掃除責任者になる。その代わり、神宮寺が新係長として現場の指揮をとる事が内定している。
吉田と神宮寺は石井の運転で丸八寿司に向かった。
到着時、神宮寺は石井に一万円札を渡した。
「一美君、これガソリン代とデート資金」
「あっありがとうございます。神宮寺さん」
「じぁな」
「一美ちゃん、ありがとうね」
2人は丸八寿司に向かった。
先ずは、刺し身5種盛りで生ビールを2人は頼んだ。
間もなくビールが届き、乾杯した。
「しかし、お前もモノ好きだな?夜勤中に差し入れしたり、夜勤明けに丸八寿司を誘ったり、オレはそんなに面白い男じゃないぞ!」
吉田の魂胆はバレていた。しかし、彼女は、
「神宮寺さんみたいな、人間になりたいんです。優しくて、後輩思いで、運転手からは人気者で」
神宮寺は生ビールを飲み干し、
「そりゃ、元々運転手だったから仲が良いだけで、後輩は可愛がらないといけないしな」
神宮寺は瓶ビールを店員に注文した。
来た!やっと、自分の知識を披露する時だ!
いくら、神宮寺がいい大卒でも、ビールまで詳しく無いだろう。
「先輩、何故、瓶ビール大瓶が633mlなのか、知ってますか?」
「……」
「どうやら、ご存知ないようですね。小学生が6年、中学生が3年、高校生が3年です。それを過ぎたら、飲めると言う事で633mlなんです」
吉田は、満足した。好きな酒の知識で神宮寺の上に立ったと。
「アハハハ」
神宮寺は笑っている。何がおかしいのか?
「神宮寺さん、どうしました?」
「どうしました?じゃないよ。今の話し」
「何か間違っていましたか?」
神宮寺はおしぼりで、口元を拭き、
「あのね。633mlの理由は、昭和15年の酒税法の導入で決まったんだ。容量を統一させようって。当時は最大が643ml、最小が633ml。それで、大きい瓶の破棄がない様に最小の633mlに決まったんだ。君の話は根拠のない迷信だよ」
吉田は顔を紅くして、
「ご、ご指摘ありがとうございます」
「君は僕が、思うより面白い子だね」
「それは、わたしに対する愛情表現ですか?」
「バーカ、保育園児と保母さんの間柄と同じだよ」
「じゃ、わたしが保母さんね」
「逆だよ!逆」
吉田は意味もなく、コハダを2貫口に入れて咀嚼した。
神宮寺自身も、この飲みを楽しいと考えていた。運転手仲間と飲んでた時のように。
失敗を悟った吉田は、ガバガバビールを飲んだ。
「吉田、そんなにガブガブ飲むなよ!次まで持たんぞ!」
吉田は我に返った。
え?次?
「吉田、この後、角打ちいくぞ!」
「角打ち?何ですか?それ。将棋?」
「お前は、馬鹿だなぁ。立ち飲み屋だよ」
吉田は喜んだ。2人は電車に乗り佐野屋に向かった。
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