第3話布川純子のアドバイス

吉田は、酒に酔った勢いで恋人探しのヒントを貰おうと布川に電話した。

布川は28歳で看護師だ。カッコイイ入院患者とたまにエッチするらしい。この女なら何かヒントをくれるだろう。

「もしもし、わたしだけど」 

と、吉田は語り始めたら。

「あっ、景子ちゃん。どうしたの?」

「し、師匠、わたしの恋人を探して下さい」

「今、夜勤明けで帰る途中だから、会って話そうよ!」

吉田は回らない頭で考えて、

「居酒屋千代はどう?」  

「おっ、いいねぇ。じゃ、千代に夕方5時集合。私が君を助けてやろう」 

「お願いします」

吉田は時計を見ると、まだ昼の1時だったので、シャワーを浴び、少し寝た。

アラームで起きると16時半だった。着替えて千代に向かった。

千代の前には、喫煙所でタバコを吸いながら人を待っている、キレイなお姉さんが立っていた。身長は170cmある。昔、バレーボールをしていたらしい。

「おいっすー!」

「おっ、吉田ちゃん。飲もう飲もう。って、あんた少し酒臭いわよ!」

「夜勤明け、会社の人と丸八寿司で日本酒飲んじゃった」

「まぁ、いいや。中入ろっ」

「うん」

2人は居酒屋千代の暖簾をくぐる。

「いらっしゃい!何名様で?」

「2人です」

と、布川が言うと店員はカウンター席を案内した。

2人はまずは、生ビールで乾杯した。

「いや〜、昨日の夜勤は最高だったわ」

「何が?わたしは散々な目に遭ったのに。何が最高だったの?」

布川はお通しの小鉢をつつきながら、

「エッチしちゃった。バイクでコケて右腕骨折した、イケメン大学生と」

「……」

「私、3回もイッちゃった」

「あ、あのう。おたく、そんなにセックス狂いなの?」

「まぁね。1人の男より、たくさんのセックスフレンドよ」

吉田はビールをがぶ飲みして、人選を誤った事を反省した。

「え〜っ、景子ちゃん。恋人が欲しいの?」

「うん」

「会社に気になる人いないの?」

「ちょっと待って、『すいませーん、ハイボール』。いるっちゃいるけど、わたしの様な男勝りの女の相手してくれないと、思うの」 

「その男性、狙ってみれば?」

「えぇ〜、ちょっと恥ずかしいなあ。高身長でイケメンで仕事が出来るスーパーマンだからなぁ」

吉田は運ばれたハイボールを飲みながら色んな事を考えた。

自然と笑みが溢れる。

布川は久保田の万寿を飲みながら鯛の刺し身をつついた。


「景子。エッチしたことあったっけ?」

「誰と?」  

「いや、今までに」

「あるよ」

「なら、簡単。その男性を酔い潰してエッチしちゃいなよ!肉体関係を持てばこっちの思うツボ。今、その男性仕事中?」

「いや、夜勤明け」

「それなら、ここに呼び出しなよ。私がキューピットになってあげる」 

吉田は酔いもあってか、神宮寺にLINEを送る。ドキドキしながら。

すぐ返事が返ってきた。

『今から、そっちに向う』 

「純子ちゃん、来るって!」

「よしっ!作戦を立てよう。遠回しにセックスしたいアピールをするのよ!」

「で、出来るかなぁ。わたしは純子ちゃんみたいに淫乱じゃないし」

「あなたが、ダメだったら今夜はその神宮寺さんとやらと、一発するからね」 

2人は酒を飲みながら、神宮寺の登場を待った。

吉田はハイボールの3杯目を注文して、布川は更に2合久保田を注文した。

30分待っただろうか?

店の扉が開いた。2人は振り向いた。

神宮寺が立っていた。吉田と布川の間に神宮寺を座らせた。

「すいません。神宮寺さん。昨夜のお礼がしたくて。こちらは、わたしの親友の、布川純子ちゃん」

「初めまして、布川です」

と、言うと布川は全身を舐め回すかの様に神宮寺を観察した。

「初めまして、吉田ちゃんと同じ会社で働く、神宮寺貴司です」 

神宮寺は芋焼酎のロックを注文した。

3人で乾杯し、吉田は計画通りの作戦に打って出だ!

遠回しにセックスアピールをするのだ。

「じ、神宮寺さんは、アワビは好きですか?」

「ん、アワビ?好きだよ……注文する?」

「……はい」

一発目の言葉は外れた!

「神宮寺さん、彼女はいますか?」

「いないよ!どうして?」 

「い、いえ。私生活が謎ですから。布川さんなんか、昨夜の夜勤中に入院患者とエッチしたのです。セックスどう、お考えですか?」

「エッチねぇ……。好きだよ。でも、相手がいないよ」

神宮寺はロックグラスの中の氷を指でかき混ぜている。

「神宮寺さん、わたしとセックス出来ますか?」

「はい?吉田ちゃんと?ないない」

「な、なぜ?」

「かわいい後輩だからだ。そんな子をイヤらしい目で見ていたら失礼だよ、ね?布川さん」

布川は顔を紅くして、

「景子ちゃんのテクニックはプロ級ですよ」

「僕はいいや。だいたい、僕はそんなに性欲無いんだ」

その言葉を耳にした、バカ女2人は今回の作戦の失敗を悟った。

飲み会は夜まで続いた。布川が病院でしてきた淫乱エピソードをツマミに。

この日から、吉田の恋の成就まで長い闘いが始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る