第12話 迷宮トイレ 俺のトイレ扉前

ドタドタドタ、っと廊下を駆ける

実際はとても短い廊下なのだが、ノルンの震えながら吐いた


「ト、トイレがダンジョンになってるわ…」


その一言に、俺は自分が布団にやっと辿り着く程しか体力が無いのも忘れ走り出した

人間、更にヤバい状況に追い込まれると限界を超えて動けるもので、この時、火事場の馬鹿力が出たのである。火事じゃないけど


そしてトイレに着いた俺は、トイレのあるはずだった部屋を見てみると、

そこには、見た感じ遺跡などで造られたり火山や毒沼があるようなダンジョンではなく、日本によくある洞窟が誕生していたのである。


「あ~あ、やっぱり世界の認識変える程のスキルを発動すると代償も強いわね。」

「お、俺のト、トイレが洞窟を産んでしまった…俺がうんこを産む場所だったのに…。」

「うんこを、産む言うなーー‼…にしても、アンタ平然としているわね。もっと大声上げると思っていたわ。」


そう、ノルンが感心した顔をトイレの中に入っていこうとする俺に向けてくる


「これだけスキルの影響を見ていると嫌でも理解するよ。にしても、これからトイレどうする?」

「ダンジョンの事よりトイレの心配とか、アタシ以上に切り替え早すぎて怖いわ。」

「とりあえず、周りはただの土そうだから、しょんべんはそのままで、うんこは土に埋めるでいいか?」

「嫌よ‼なんでそんな野糞みたいな事しなきゃいけないのよ‼‼」

「トイレ無くなったんだから仕方無いだろ‼‼それに、誰も見てないんだから良いだろ‼」

「不潔よ‼‼」


こうして、トイレの事でギャーギャーと揉めていたその時、―――


ゴツン、ゴツン、


バッと俺たちは洞窟の奥を見る。この場には二人だけしかいないのに奥の方から何かが落ちたのか音が聞こえてきたのである


「なんの音だ…?」

「さぁ…?けど、何かがあったのか、または何かが居るのは間違いなさそうね…」


二人の間に緊張が走る


「緊張すると、トイレ行きたくなるぜ。」

「ここ、トイレのあった部屋なんだけどね。」

「ノルンさん。しょんべんするから、少し奥の方に行って周りを見張って下さい。」

「アンタ、臆病なのか大胆なのかよくわからないわね…」

「出すもんは出さんとな。」




そして、気分がスッキリした所で作戦会議が始まる


「今回のトイレのダンジョン化については、私がスキルの代償を少し甘く見ていたせいもあるわ。だから、今回は全面的に協力してあげるわ。」

「おう。しっかり、反省しとけ。」

「その言い方。アンタ、本当に女性にモテなさそうね。」

「やかましい‼それより具体的にどうする気だ?」

「ダンジョン自体は戻せないから、扉を私のスキルで封印するわ。」


ノルンいわく、スキルで軽く調べた結果これはトイレが洞窟になったのではなくトイレの扉と洞窟が繋がっているようで、しかもただの洞窟だと思っていたが、この洞窟からは特別の力を感じるらしく、何処かの異世界のダンジョンかもしれないらしい。

だから、唯一の繋がりの扉をスキルで封印してしまえば向こうから巨大な力を与えられない限り、とりあえずこちら側にまで何らかの影響はしないようである。


「封印。つまり、トイレは犠牲になるのか。犠牲の犠牲に…」

「はいはい。トイレの部屋は新しく創るわよ。」

「それは、当然だ。だが、封印はまだしなくていい。」

「え?」


スキルの代償とはいえ、トイレがダンジョンになった事にノルンが、責任を感じて扉をスキルで封印しようとしているが、俺が止める。

何故かって?異世界のダンジョンだぞ?金目のものとか、便利なアイテム、もしかしたらスキルに対抗できる力が手に入るかもしれないじゃないか!


「全面協力してくれるんだろ?なら、探索しに行こうぜ!」

「えぇぇぇぇぇぇ!?」

「ボディーガードは頼むぞ!早速、装備の準備だ‼‼ホームセンターに行ってくる!」

「…マジ?」


明日、遠足に行く子供のようにはしゃぐ俺と、はしゃぎすぎな子供に不安と大変さを想像する親のようなノルンがいた


「もう、世界規模の範囲でスキル使わない…」

そう一人、誓うノルンであった





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