第10話 異世界ワイド スキルのチカラ

ガクッ


俺はその場で膝から崩れ落ちてしまった。信じられない光景がそこにあったのである


―――時は、少し前に遡る



「あれ?道を一本間違えたか?」


もう住んでいるアパートに着く頃なのだが、アパートが見当たらない

恐らく、似たような建物が並ぶ通りなので迷いやすい上に疲れていたりすると道を間違えてしまうのはここらへんだとよくある話だ


「すまん、ノルン。道を間違えた様だから戻ろうか。」

「そうなの??」

「似た様な建物が多いだろ?だから疲れてると間違う事があるんだ。それにこんな、中世風なRPGにでてくるような建物は知らないしな。」


そう、今目の前にあるのは明らかに周りの建物と比べ外観が浮いているのである

そういうデザイン風とかではなく、使われてる素材も本物の石とかで造ってあり本格的な建物である。


「さっきの建物に住む人は中世の世界に憧れてる物好きが住みそうだな。」

「そう?外観は私は悪くないと思うけど?」

「周りと浮きすぎて可笑しいぜ。まぁ、目立つからいいかもな。」


そんな、感想を話し合いながら来た道を戻り、よく見たT路地に戻る。

だがその時、俺は頭が??に埋め尽くされる。何故なら、戻ってきた道は間違ってなかったからである。


「あれ?道が間違ってなかった!う~ん?おかしいぞ?なら、アパートはどこに??」

「やっぱり、そうでしょうね。間違ってないと思ったもん。」

「いや、けどアパートは無くなってただろ??」

「あの外観のアパートはね。けど、同じ場所に建物はあったでしょうが。」


俺はノルンの言葉で、一気に青ざめる。そして来た道をすぐに戻り、アパートがあったところまで戻る


「う、嘘だろ。おい…」


そして冒頭に戻る

そこには、ついさっきまでバカにしていた中世風の建物があったからである


「ここにあった、マイ〇ラで初心者がまず作る豆腐建築の集合体みたいなアパートはどこに?そして目の前にあるマ〇クラの中級者が作りそうなこの建物は?」

「私が、転がりこんだアパートよ。そしてアンタが住んでるアパートよ。」

「エヴァのミ〇トさん風に言うなや!まだ、部屋の変化だけだと思って安心していたのに二日で建物かよ!」

「やはり、少しとはいえ世界の認知を変えた影響は大きくでたわね。スキルの勉強になるわ~」

「勉強になるわ~じゃないわ!ノルン‼スキルで外観を元に戻してくれ‼」


俺は、立ち上がり抗議する。このままこのアパートに住めるか!


「別に戻さなくても良いじゃない?私たち意外は変化してる事に気が付いてないわよ。」

「恥ずかしいやん?さっきまで物好きしかいないとか言ってバカにしてた所が自分が住んでる所だったなんて。」

「誰も気にしないわよ。」


その時、―――


「おい、あそこだ。中世に出てきそうな建物のアパートは。」

「わぁ、本当にあるんだ~。中とかも、ハ〇ルの城にでできそうな部屋なのかな?憧れる~。」

「住むのは止めとけ。日本の気候とかに造りが合ってないし、電気が通ってるのかも怪しい。周りと浮きすぎてるし、住むのは物好きだけだろ。」

「う~ん。そうかも。笑われちゃうかも~。」


そうして、俺の目の前をカップルらしき男女が去っていく


「ノルンさん。言い忘れてたけど、中の方も頼む。特に電気周り。」

「スキル<ご都合主義>の影響で変化したものを戻すのは無理ね。」

「なんでだよ!?」

「スキルにもランクってのがあるのよ。高いランクのスキルの効果に対して低いランクのスキルを当てても変化しづらいのよ。」

「なんだと!?スキルにも会社の社員みたいな上下関係があるのか!?」

「…アンタの例え方、分かりづらいわね…」


俺に呆れながらノルンは、話を続ける。


「それに、スキル発動の代償による影響には余計に変化しづらいのよ。変化しやすかったら、代償にならないし。」

「それでも、スキル<ご都合主義>より遥かに高いランクのスキルを当てればその代償も踏み倒せるのでは?」

「無理ね。スキル<ご都合主義>は、最高ランクに近いですもん。それに、私が使える最高ランクのスキルだし。」


ガクッ


また、俺はその場で膝から崩れ落ちた。


薄々感じていたことだが、仮にこの世界にスキルが百個以上あろうがこのスキル<ご都合主義>は最強に近いのでは?って思ってたとこだしな


「よく見抜いたわね!最強に近いのは正解ね。なんたってアタシのスキルだもん♪ただスキルの数は違うわね。」

「偉そうにするな。たくっ。また、声に出てたか…。ちなみにスキルの数は何個あるんだ?千か?万か?」

「正確の総数は知らないし似た様なスキルが多いけど、間違いなく億は超えるわね!」

「まぁ、素敵。人の数だけ、夢があるというしね。そりゃ、スキルも億いきますわ。」


これ以上ノルンと話していても仕方ないので中世風の建物に入る事にする


「うぉ!本当にこの建物に住んでる物好きがいるんだな!」


そう、後ろから驚かれる通行人の声を聴きながら。





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