第4話:H
九月の中旬。
昼休みの展示ホールはテスト結果の張り出しよりも賑わっていた。
今日は学内コンクールの作品展示で、部員の作品が数十点展示される。
イーゼルが立ち並び作品の下には番号が付いている。期日までに投票箱に紙に書いて入れるというシンプルな方法で優秀作品を決める仕組みだ。
モデルは私と真宮さんをはじめ各学年から何人かずつだった。
作品には作者とモデル名も描いてあって、パッと見は数人のモデルの選ばれ具合もあまり偏りがなかった。
まあこの辺りは後で揉めないように「私は◯◯さんを描くつもり」みたいな事前報告があったりする。
後から「モデルに選ばれたの結局この人ばっかじゃん!」とならないようにするための小さい政治だ。
まあそんなウチの独自システムはいいとして、問題はこの人混みだ。
作品展示の初日は確かに混み合う。だけど去年よりはるかに多い人数だ。
やはり真宮さんの影響かな? と思い近くにいくと、
「あ! 久保さん!」
と、いつぞや声をかけてくれたクラスメートがなんとも言えない表示で近づいてくる。
「どうしたの?」
「あ、あれなんだけど」
彼女の指を指す方向は特に生徒たちの人だかりで作品が見えなかった。
人混みのほうに視線を向けると少しだけざわついている。耳をすましてよくよく聞いてみると「どうしたんだろう」「間違いかな?」「確認してみたほうがいいんじゃない?」とが聞こえてくる。
「部員です! 通してください!」
と、半ば強引に人混みを掻き分けて展示された作品の前に到達すると、その異様な光景に目が点になったのだった。
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