第3・魔のアクツ

次の日、西条誠と藍原翔はある学校の門の前に立っていた

その学校は西皇子学園と同じN市にある、都内全域から学生を集めた私立学校だ。ただそれだけなら普通の私立学校だが、問題は学生にある。

およそ高校という高校にはとても入学できないレベルの学生、そして暴力だけは得意という者だけが集まっているのだ。いわば落ちこぼれの巣窟だった。授業料さえ払えば極端な話オール0点でもかまわない。嘘みたいだが、本当にそういう学校だった。


その名も阿久津館高校。別名魔のアクツ、つまり西皇子学園とは真逆の学校だ。


校門から眺める運動場は荒れ果てていた。かつては掃除をするものもいたのかいなかったのかは分からないが、まあ掃除しても、すぐにまた汚す生徒ばかりだから、掃除しがいがない。結果。机や椅子が散乱し雑草が生えたまま、それに放課後というのに部活をやっているふうには見えない。また校舎のところどころの窓が割れている。まあヤンキー映画のような学校ではある。

「お前こんなところに来たら犯されるぞ」と誠は翔にからかうように言った。

「ふっ」翔は笑った。なんという美しい笑みだ。それに惑わされて翔に手を出そうとした者は多分一生後悔することになるが。


「どこに行くんだ」と誠が聞くと、

「二年二組」と短く答え、翔は歩き始めた。

「マジかよ」誠は困惑しながら 翔についてゆく。


二年生のクラスは学生棟二階にあった。放課後とあって学生の姿は少なかった。だが、すれ違った学生たちは、やはりそれなりの格好をしている。黒の特攻服、やたらに長いスカート、金色の虎を刺繍したスタジャン、本当にモヒカン刈りがいるのには誠は驚いた。まあ、ヤンキー映画に影響されているのか、もしくは映画が現実に影響しているなのかは分からないが。

しかし彼らは誠以上に驚いたようだ。もちろん翔の美貌にである。すれ違った全員、男も女も、翔の美貌に唖然とした顔になった。まあ、その気持ちは分かる。そんな視線の中、翔は悠然と歩いてゆく。

赤い文字で二―二と書きなぐられたドアの前に二人は立った。そして翔は躊躇せずにドアを開け放った。 


その中には五人の人間がいた。


五人とも深紅のジャケットを着ていた。これが噂のレッドア―ミ―かと誠は思った。いわく魔のアクツにレッドア―ミ―あり。東京都の高校最強のグループと言われている。ここまでは噂だが、翔はより以上の情報を持っていた。

その総長赤井譲二は一年にしてリ―ダ―に君臨した。それまでそれぞれが覇を争う学校の暴力をまとめ上げて、ひとつの軍団レッドア―ミ―にしたのが赤井譲二だという話、らしい。こういう話はだいたいが盛って言われる話だ。

また譲二の下には四天王がいるという話だ。これも話を面白くしてるかと思いきや、いたよ四天王、深紅のジャケットを着るのは譲二と四天王だけらしい。話からすると四天王の役割は簡単に言うと暴力ピラミッドの上から二番目らしい。四天王それぞれに下部のチームが存在する。だいたい一人の四天王には三から五グループがついている。らしい

阿久津館高校の学生達は基本的に暴力集団だから、しょっちゅうぶつかる。その采配を四天王が握っている。だいたいの事は四天王で決着がつくが、稀に四天王で決着がつかない猛者もいる。その時に赤井譲二の出番だ。譲二はそのことごとくに勝っている。らしい。

また四天王も固定ではない。譲二とタイマンを張った者の中に見込みがある者がその地位につくこともある。ハハ、四天王も競争させられるわけだ。


誠はそのことを聞いて赤井譲二という男に興味は持った。持ったが、それだけである。

「何だてめえら!」と吼えたのは。長髪を後ろに束ねた細見の体の男だ。その男が二人に近づいてきた。そして翔を見ると、お、と云う顔をしたが、さすが四天王,すかさず態勢を整えると、

「なんだ、おかまが来るとこじゃあないぞ!」と威勢を放った。

「俺は西皇子学園の者だ」と翔がボソっと言った。

「何だ!西皇子が何の用だ」

「ふっ」と翔が笑い、信二の眼を見た。その時キラリと翔の瞳が光を放つのを確かに誠は見た。


次の瞬間、ゆっくりと信二が床に伏した。催眠か。まあ優しいわな、まだ早いがゆっくり明日迄寝たらいい。

 信二が倒れると同時に三人が机をひっくり返し椅子から立った。一人、角刈りで鋭い眼光を放っている男だけが座っていた。

 あれが赤井譲二か、誠はそう思った。翔も分かったらしい。

「俺が用があるのは、そこに座っている赤井さんだけだ」


「なに! こら」一番背が高そうな男だ。「ふざけんじゃないぞ!」は一番太ってそう男、ちいさな目が、翔を睨みつけている。無言で睨んでいるのは見事に頭をそり上げた、いかにも体の頑丈そうな男。

三人は机、椅子をひっくり返しながら翔の前に立った。

「明!」と譲二が鋭い声を発した。次の瞬間、太った男、明が翔に飛び掛かった。が、翔はすでにそこにいなかった。いきなり明の背後に回ったのだ。

瞬間異動(しゅんかんいどう)かと誠は思った。まず翔にケンカで勝てる奴はいない。

「こっちだ」と翔が声を掛けると、明が振り向いた。と同時に翔の眼が光った。明の体はゆっくりと仰向けに倒れた。

あとの二人は唖然として立ち尽くしていた。

 

譲二は座ったまま、翔を見据えて云った。

「お前、妙な力持ってるな」

「ああ、そうだ」と翔が答えた。

「お前とケンカしても意味がない」と譲二は淡々と言った。こいつは翔を恐れてばいないと誠は思った。大した胆力だ。まさに翔とケンカしても意味が無い。

「そうかな」と翔が微笑む。が、目は笑っていない。

「お前が俺に勝ったとしても、そりゃケンカじゃねえ」

「そう云うと思った。俺が勝ったとしてもあなたは納得しない」

「ああ、ケンカはこれでやるもんだ」と譲二は拳(こぶし)を突き出した。

「フフ」と翔が再び笑った。

「おかしいか」

「ああ、やっぱりあなたはそういう人だ、俺の超能力じゃ屈服しない。その根性があなたをトップにしている」

「分かったら、帰ってくれねえか」

譲二の言葉に翔は答えた。

「いや、あなたとやるのは、あいつだ」と翔は誠を指した。

何! 誠は仰天した。

「何で! 俺なんだ」

「あいつは西条誠という、赤井さん、あなたと勝負するのはあいつだ」

 この言葉には誠はあわてた。

「おい、聞いてないぞ」

「ああ、言ってないからな」

 誠はがくっとした、なんだその返しは。漫才か。

 譲二は苦笑いをした。

「なぜ、あいつとやる?」

「赤井さん、あなたは強いやつがいるとじっとはしてられないだろ。西条は強いぜ。それに何としてもあなたの助けが欲しい」

「おれの助け?」

「そうだ、あることで是非あなたに動いてもらいたい。だが言葉で云う事を聞くあなたじゃない、一番の早道はあなたよりケンカの強いやつを持ってくることだ。西条があなたに勝ったら、俺の頼みを聞いてくれ」

 すると、誠はこのやろう、いい加減我慢できずに怒鳴った。

「冗談じゃないぞ! なんで俺がこいつとやらなきゃならないんだ」

翔は笑みを浮かべた。

「落ち着け西条、戸田さんのためだ。赤井さんを味方にするのは大きな意味がある。俺を信じろ」

「おい、そんなこと言っても、あんまりな話だ」

「まったく理不尽だ、だが西条、素直になれ。お前、体がやりたがってる。格闘家の性(さが)だな」

「なっ!」誠はギクッとした、確かに俺は赤井譲二に興味がある。

その時だった。いきなり譲二が立ち上がり「シュッ」と声を発した。ローキックが誠の右膝に飛んできた。とっさに誠は足を上げて蹴りを受けた。

「なるほど、蹴りの受けが出来ている。お前は空手屋か?」

「さあな、でも、あんたが空手屋なのは分かっていた」

「なぜだ?」

「さっき拳をみせたろ、拳だこができていたからな」

 譲二は凄い笑みを浮かべた。

「フフ、面白いなあ、ケンカはこうでなくちゃな」

 誠も負けずに鋭い笑みを浮かべた。

「まあ、そうだな」

誠は体の中の温度があがってくるのを感じていた。

「シュッ」と再び声を発すると譲二は右拳を放ってきた。誠はそれを左にかわしつつ、譲二の右手首を握り、両の手で捻るようにした。脇固めを狙ったのだ。譲二はくるり前方回転して逃げた。

「なるほど柔道屋か。面白いな、確かにお前は俺と同じだ。強いやつとやりたがってる。俺と同じ匂いがする」

誠はフフッと笑った。

「ろくでもない匂いだけどな」

「ここじゃ狭い。運動場へ行こう」

「床が怖いか?」

 譲二が再び凄い笑みを浮かべた。まるで美女を見つけ、歓喜する雄(おす)のようだ。

「ああ、そうだ、土の上は嫌か?」

「そうでもない、床も土もあんまり関係ない」

「それなら行こうぜ」

二人は教室を出た。翔も少し後に続いた。そして荒れ果てた運動場のど真ん中で二人は相対した。頭一つ誠の方が大きい。

いつのまにかギャラリーが二、三十人遠巻きで眺めている。翔もその中に居た。

 譲二は特攻服と上着、シャツを脱いで上半身裸になった。赤銅色の引き締まった体がさらされた。体脂肪率が低く、無駄な筋肉が無い。そして十分な柔軟性も持った肉体だ。こいつ相当鍛えているなと誠は思った。譲二はにやりと笑った。ふん、まあ頭は回るようだ。

「柔道屋に服を掴まれると危ないからな」

「ふん、用意のいいことだ」と言ったが誠は上着を脱がなかった。

今チャンスを逃したからだ。譲二が服を脱いでいるときに攻撃すれば良かったのだ。それを逃した。そして、そのことは譲二も考えているはずだ。誠が上着に手をかけた瞬間、こいつは襲ってくる。そういう奴だ。

「あんたケンカどれくらいやってる」譲二がそう聞くと、

「あんたに比べれば多分少ないな」と誠は答えた。

「だろうな。場数が少ない。惜しいな」

「そうやって俺を牽制しているのか」

 これは言葉のジャブだ。お互いに心理戦を行っている。

 誠は笑みを浮かべた。

「経験の差を埋めるのは頭だ」

「頭?」

「ああ、偏差値65だからな」

譲二は頭をかいた。

「そいつはすごいな」

 

次の瞬間、譲二は右回し蹴りを放った。だが蹴りは空を切った。間一髪、誠が後方に飛んで避けたのだ。

「いきなりかよ、ゴング無しか」今度は誠が凄い笑みを浮かべている。

「ケンカだぜ、試合じゃない!」譲二は言い放つと今度は譲二の右拳が誠に飛んできた。と思われたが右の手は誠の左肘をつかんでいた。そしてそれを強引に引っ張ると左肘を誠の顔面に叩き込んできた。

が、誠は瞬時に右腕で顔をガードした。そして、右前蹴りを放った。どんっと蹴りが譲二の胴にあたる。譲二が後方へ飛んだ。が、蹴りには十分の距離がなかったため、致命傷にならなかった。

「お前、前蹴りができるのか?」と譲二が問うと、

「まあな。あんたこそ、つかむとは思わなかったよ」と誠が答えた。

「面白いな、蹴りの柔道かよ」

「ふん、つかむ空手かよ」

 これで、お互いの手の内が分かった。従来の空手と柔道の型にはまっていない。つまりなんでもありだ。恐怖はあった。しかしこんなぞくぞくしたのは初めてだった。自分が鍛えた技がこいつには使える。

「シュッ」と誠はスラィデイングをした。蟹ばさみを狙っていったのだ。譲二はそれを避けて後方に飛ぶ。しかし誠は上半身を跳ね上げると、譲二の右足をつかみにかかった。誠の手が譲二の右足をからめ捕った。そのまま譲二を仰向けにひっくり返そうとした時、譲二は左足を大きく振り上げ、誠の右肩に落とした。踵(かかと)おとしだ。

「グッ」と唸ると、地面を転がり誠は譲二の体から離れた。誠は立ち上がりながら。右肩を回した。不十分な態勢から放たれた踵落としだったため脱臼はしてない。大丈夫だ。

 誠は、前屈姿勢を取った。譲二の下半身を再び狙っている。譲二もそれを分かっているから、前屈姿勢を取る。両者はしばらく睨み合った。

 と、突然、前屈姿勢から誠は上体をおこし、左拳を前に右拳を頬に当てた。

「何の真似だ?」譲二が問うた。が、誠は無視して、時計周りに回り始めた、足をリズミックに動かす。

「今度はボクシングかよ」譲二があきれたように言った。まったくその通りの格闘技馬鹿だ俺は。

「俺は格闘技おたくだからな」と誠が答えた。と、同時に「シッ」とジャブを打った。ジャブを打ちながら右回りに回る。譲二は誠にあわせて回るが空手はべた足だから僅かに遅れる。

 誠はジャブを打ちづける。すると譲二はジャブの引き際に合わせて誠の懐に飛び込もうとした。だがやはりスピードが足らなかった、譲二が懐に入るより早く誠は右のストレートを放った。譲二の顔面にストレートが飛んでゆく、が、間一髪、譲二は両の手で誠の右手首をつかんだ。と同時に両足を跳ね上げた。そして誠の右手首を思いっきり引っ張り、両足を誠の右腕に絡める。そのまま誠が仰向けに倒れれば、腕ひしぎ十字固めになる。が、誠は譲二の右足を左手で掴んでいた。そしてふたりはそのままの姿勢で倒れた。腕ひしぎ十字固めは完成できなかった。


 すばやく両者は立ち上がった。


「十字固めねえ、あんたも色々あるねえ」誠が笑いながら言った。

「お前こそ、今度は何だ?」

 誠は右手を頭より挙げ、左手を腰の高さに置いた。これを天地上下の構えという空手の型だ。

「お前正気か? 空手かよ」

「さあな、でもかっこいいだろ」

「フフ」譲二が笑った瞬間、前に出した誠の右足めがけタックルした。初めからこれを狙っていたのか「ちいいいいい」と誠が吼えて右ひじを譲二の背中に落とした。だが一瞬速く、譲二は右足を取り、一気に誠の身体を押し倒した。だが仰向けになった誠は両足で譲二の胴を挟んだ。ガードポジションだ。この体形は上にいる者が有利とは限らない。下の者が両足で上の者をコントロールできるからだ。


譲二は誠の足をはずそうとする。だががっちりと誠は足を絡めて離さない。すると譲二は拳を固めて、誠の顔面に打ち下ろす。一撃、二撃と拳が誠の顔面に打ち下ろされる。だが、譲二の右拳が打ち下ろされた瞬間、誠は両手で譲二の右手首を握った。そして、胴に絡んだ両足を外して譲二の右腕に絡ませた。「ぐっ」と唸り譲二は右手首を左手で握ろうとしたが、一瞬届かなかった。そのまま右手は引き伸ばされ譲二は仰向けに倒れた。誠の腕ひしぎ十字固めが極まったのだ。譲二が足を振り上げて誠の肩を狙うが、僅かに届かない。身長差がここで出た。

「おい、まいったしろ、骨が折れるぞ」と誠が云うと、

「折れるもんなら折れ!」譲二が吼える。

「くそ、ばかやろう!」誠が思いっきり右腕を引っ張った。すると、譲二の腕が嫌な音をたてた。譲二の腕の靭帯が切れたのだ。思わず誠は手を緩めた。その瞬間、譲二が凄まじい力で上体を上げ、左正拳を誠の右肩に叩き込んだ。先ほど踵おとしがヒットした場所だった。「ぐっ」と唸ると、誠は両手を譲二の右腕から放し、地に転がった。今度こそ右肩は完全に脱臼しているだろう。


両者は同じく利き腕を痛めた。だが、両者は立ち上がった。まだ眼がぎらぎらしている。お互い負けを認めない眼だ。


その瞬間だ。翔が突然、両者の間に出現した。何こいつ?

「これまでだ」

 これには両者が吼えた。

「邪魔だ、どけ!」

「そうはいかない。これ以上やったら潰しあいだ。二人とも潰したくない」と翔は目を光らせた。だが譲二はそれ以上滾(たぎ)った目で翔を睨んだ。

「てめえがけしかけたんだろうが、引っ込んでろ!」

 譲二の言葉に、

「藍原、もうお前の問題じゃない。こいつは赤井と俺の問題だ」と誠が応じた瞬間、翔が誠を指差した。すると誠が「ぐっ」と唸って硬直した。指先ひとつ動かない。

「お前何をやった、動かないぞ!」と誠が怒鳴った。

「念動力だ、西条、もうお前は動けない。赤井さん、西条を攻撃す

るか?」譲二はかなり戸惑った顔をした。

「ばかやろう、そんなんでやれる訳ないだろ。お前何考えてんだ?」

「赤井さん、西条は強かったろ」

「まあな。右腕一本やられたんだ。弱くは無い」

「赤井さんの右腕やることが出来た奴は今までいるか?」

赤井はかなり複雑な顔をした。

「いないな」

「だったら、西条の強さに免じて、俺の話をきいてくれないか」

「話だと?」

「俺はなにも阿久津館高校を乗っ取ろうという訳じゃない」

 譲二はますます怪訝な顔をした。

「なんなんだ、一体お前何が言いたい」と云った譲二の闘気が徐々に薄らいでゆくようだ。

「あなたの作った組織を借りたい」

「はあ、何だ?」と赤井の目が点になる。

「言ったろあんたの助けが必要だと、だが、こんな事を言葉で言ったって、赤井さんは納得しないだろ」

 譲二は釈然としない風に頭をかいた。

「まあ、そうだな」

「だから、こっちの本気を西条に託した」

 「フー」とため息を吐くと、譲二は肩を落とした。

「なあ、お前やる気なら、俺も念動力とかでやることが可能なんだな」と譲二が聞くと。

「できる」と翔は答えた。

 譲二は何か考えている風だが、やがて「やめた。考えるのは得意じゃあない。話を聞こう」と言った。

「ありがたい。では、明日また来る」

「今日じゃ駄目なのか」

「怪我の手当が必要だしな。明日だ。明日また来る」

「ふーん。そうか、いいだろう、だが」

「だが?」

「あいつは、固まったままだぜ」と譲二が誠を指した。

「そうか、忘れてた」と翔はピンと指を鳴らした。

 誠は思わずよろけた。

 譲二は呟いた。

「まるでマジックだな」

 今度は誠が吼えた。このやろう。

「ばかやろう、藍原、人を何だと思っているんだ」

「西条すまん、お前が怒るのは分かるが、ここは我慢してくれ」

 誠は苛立った声で言った。

「まったく一体何だ?」

 すると翔が凛! として答えた。

「一つだけ云う。いじめは暴力だ。暴力には暴力だ!」

 翔の言葉の勢いに誠は気圧された。何だ!

「どういう意味だ?」

「だから、明日説明する。西条も来てくれ」

 そう云うとくるり体を翻し翔は阿久津の校門に向かった。

「もう、何だってんだ」と誠はぶつぶつ云いながら翔に続いた。

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