第13話 感知
三日後に地獄冥界に行くことが決まったが、その間ただ日が経つのを待つわけにもいかない。
流転と椎葉は高校生であるため、当然平日には学校へ足を運ぶ。
流転はバスから降り、校舎へ向かっている最中に椎葉のことを思い出した。
(アイツ…大丈夫だよな)
流転が心配していたのは椎葉の圧倒的な無知から引き起こされる前代未聞のアクシデントだ。
もちろん悪魔化は絶対にしないように口うるさく釘を刺しておいたし、問題はないと思うが。
なにぶん椎葉の性格は掴めないところがある。
急にわがままになったり急に大人しくなったり。
あの感情の起伏の激しさは少々危険だ。
悪魔と契約したことに関係しているのか。
流転は悪魔についてお師匠様から聞いたことを思い出す。
悪魔との契約は契約者との間で感情の共有が起こる。
契約してから多くの時間が経過すれば同調されるその感情の起伏も短い期間では同調が難しい。
椎葉がミカエルと契約したのが二年と言っていた。
となればまだ契約してからの期間が浅い。
それに加え、結局椎葉はミカエルとの契約の際に何を差し出したのか聞くことができなかった。
もしも人体を構成する大事な器官を捧げていた場合、同調に必要な期間は短縮される。
だが、椎葉はそこまで自分の身を懸けるだろうか。
「……」
流転は考えたが、椎葉ならやり得るというのが正直な意見だった。
(心臓を捧げていなければいいが)
そこまで考えた流転は周囲に目を向けた。
昨日居たはずの帝釈党の党員たちが居なくなっていた。
この学校には阿修羅がいないと考えたのか。
だとすればありがたい。
≪――それはない――≫
阿修羅が突然思考に干渉してくる。
「俺も思ってた」
流転は続ける。
「昨日俺が校舎裏で副神足を使って逃げた痕跡が残っているはずだ。あと悪魔のもな。それを知った上で手を引くはずがない」
≪――正解だ。褒美にもう一つ情報を与える。俺の痕跡も察知された――≫
「は?!」
流転は驚きを隠せなかった。
「お前のチカラは一切使ってねーだろ?!」
阿修羅は少し考えた後、考えを述べた。
≪――捜索に携わっている奴らの中に厄介な奴がいる。俺の僅かな気配を感知できるのは富楼那だけだ――≫
「ふるな?」
流転は聞いたことが無かった。
≪――この国を治める名高き高僧の名よ。奴の感知能力は異常だ――≫
「感知能力ってことは六神通
≪――そうだ。「
阿修羅はそう言った後、なにかに気付いた。
そして校舎の屋上を見るように流転に指示する。
そこには袈裟に身を包んだ僧侶が立っていた。
そして下を歩く学生を見下ろしていた。
「帝釈党が引いたのは諦めたからじゃねぇ…あいつ一人で十分だと判断したからか」
流転は思わず笑顔を零した。
おもしれえ。
ここにきて遂にやって来た。
強い奴と戦う瞬間が。
屋上にいる富楼那と目が合った。
富楼那は右手でこっちに来い、と手招きをした。
「ちなみに逃げても無駄だよな?」
圧倒的な威圧を放っている富楼那を見て流転は珍しく弱音を吐く…。
否、それは弱音ではない。
絶対に戦わなければならない状態にあるかどうかを確認するためだ。
その証拠に戦いたくて身体がウズウズしている。
≪――無駄だ。奴は「
「そうこなくっちゃなァ!!」
流転は屋上目掛けて走り出した。
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