歌日記

空耳

人生狂歌

母おらず父消えいりてひとり

夜のふち立ちいづちゆくらむ


縁側で煙たしなむ父偲ぶ

寒雲にとく煙突の湯気


クロス箸のがる骨にて恥ぢかはす

とらふに叶わぬ波の花なり


水滴が皿を打つおと子守唄

羽音つらなり管弦楽団


枕元ならぶ靴下待ちのぞむ夜

夢みた幸福こぼれおちる穴


停電の夜空見上げてこそばゆく

母てらす道オリオンのすみより


愛をかふ夜に佇み愛ひさく

諭吉のぬくもり泡となり


線刻むただむきのあけてらてらと

散らすもみじの夢のあとかな


対岸に懐かしき人もとめいづ

カナヅチれば行こか戻ろか


越後の地うまれかわりの蝉時雨せみしぐれ

愛でる朝露いのち輝く


月のぞく夜清水の舞台おる

われ告げるすき破顔はがんせしかれ


命綱とく私のひら握り

きつく結ばせ坂道あがる


枯れた色、月日ながれしまだ今も

渇れぬ涙に添えるそうなり


添えたおもい「久しぶりだね、アルタイル」

きみの声が喧騒に


愛むげん時はゆうげん朽ちてなお

きみを縛りて丑刻うしこくに立つ


待ち受けのなか、産みの苦しみしらず

いつも笑顔のアイツが憎い


仕返しに墓石にピーマンあげたった

悲願成就の盆の夕暮れ


久方の月わらふ空かげりて

うちふりたる慈雨じうこころをます


逃げ惑うひとひらの雪つかまえて

ひよこの隊列そこなう我が子


笑顔はぬ虹風船にのりて

吾子あこのさまずさ天までおよぶ


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歌日記 空耳 @Ren_Anno

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